外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
2.蕎麦と訪問者
「よお、一体何なんだ?いきなり用があるとか言いやがって」
やってきた俺たちをグランが興味津々で迎えてきた。
季節は初冬、山にあるグランの村は既に冷たい風が吹いている。
「この前収穫した蕎麦の粥をご馳走になっただろ?そのお返しに今度はこっちが蕎麦料理を作ろうと思ってさ。ここに石臼がなかったっけ?」
「石臼ならあるけどよ、何をしようってんだ?」
「それは後のお楽しみさ」
俺はそう言ってグランの村で収穫された蕎麦を石臼で粉にした。
オニ族が使うやたらとでかい石臼だけど俺の土属性の力があれば難なく扱える。
それから石で作ったボウルに蕎麦粉を入れて水を少しずつかけながら練っていった。
俺が作ろうとしているのは日本で食べてきた蕎麦だ。
師匠に蕎麦打ちが趣味の人がいてやり方を教えてもらったからこれには少し自信があるのだ。
蕎麦粉全体に水が行き渡るように練った後で打ち粉を振った台の上で平らに四角く伸ばしていき、折り重ねて蕎麦切り包丁で細く切っていく。
「ほほ~、なかなか面白えもんだな。蕎麦のそんな食い方は初めて見たぜ」
「これは見た目も楽し気でいいですね~」
グランやミンレ、村のみんなが興味津々で見ている。
汁は村で使っている肉醤、酒、砂糖、干しキノコを使って作った。
更に獲れたての鴨の肉と骨も加えてみたり。
蕎麦を茹でて木の椀に汁と一緒に入れて出来上がりだ。
「よしできたぞ!」
「早く食わせやがれ!」
出来上がるなりグランがお椀をひったくってフォークで啜り始めた。
「う、美味え!!」
そして一口食べるなり吠えた。
「こんな美味えもんは初めてだ!蕎麦粥なんて目じゃねえ!蕎麦ってこんなに美味いものだったのかよ!」
「本当に美味しいですね。蕎麦を粉にして練ってから細くするからこんなに食べやすくなるんですね。それにこのお汁も美味しい。これは是非作り方を教えてもらわないと」
ミンレも感心している。
「なんだなんだ?なんかやたらいい匂いがするじゃないかよ」
「お、テツヤさんたちじゃねえですか?何をしてるんで?」
「ちょっとちょっと~、グランばっかりずるいよ。あたしたちにも食べさせてよ!」
匂いにつられて村中の人たちが集まってきた。
いかん、これはいつもと同じパターンになりそうだ。
結局俺とキリはミンレの助けも借りてひたすら蕎麦を作り続けることになってしまった。
「いや~、これは本当に美味いっすね。しかもあったまるからこれからの季節にもぴったりだ」
「本当になあ、蕎麦はトロブの名産品だからこいつも名物になるかもなあ」
いつの間にか来ていたカエルとイノシロウまでちゃっかり蕎麦を食べている。
「いや、これは真面目にトロブの名物料理として売り出せるんじゃないか?この辺りは山の幸は採れるが名物と呼べるものはなかったから新たな観光資源にできると思うぞ」
「確かにそうですね。この辺は蕎麦は育つけど小麦は育たないから蕎麦料理があると温泉客も喜ぶかもしれませんね」
アマーリアとソラノが蕎麦を啜りながら話題に乗っかってきた。
なるほど、蕎麦料理は山間のこの地方にぴったりかもしれない。
なにせこの辺は小麦粉が高級品でゴルドの一・五倍位するのだ。
その代わり蕎麦の実は安くてどこでも育つから蕎麦粥や雑穀粥が主食となっている。
蕎麦が加われば観光客のみならず住民も喜ぶかもしれない。
「それだったらこういうのもあるぞ。フラム、ちょっと火をつけてくれないか?」
フラムに頼んで竈に火をつけてもらい、その上にフライパンを乗せた。
蕎麦粉と塩少々を軟らかめに水で溶いてからフライパンに薄く延ばして焼く。
その上に肉やキノコ、卵を乗せてから縁を四角く折り畳んだ。
ガレットの出来上がりだ。
「美味え!さっきの奴も美味かったがこいつも美味えな!!」
「グランばっかりずるい!あたしらにも食わせろ!……うまっ!何これ!メチャ美味しいんだけど!」
「私はさっきのよりこっちのが好きかも!」
「俺はさっきの奴の方が好きだな。あっちの方が腹があったまるからよ」
蕎麦と同じくガレットも好評みたいだ。
「これは良いですね~。私も是非ともレシピを教えてもらいたいですね~。新たな魔法料理のヒントになるかもですよ」
いつの間にかカーリンさんまで参加していた。
結局全員が満足したのは日が暮れようとした頃だった。
やはり一日がかりになってしまった。
それでもみんなが喜んでくれるのは嬉しいものだな。
疲れて眠り込んでしまったキリを背負うと俺たちは屋敷へと戻っていった。
「今日はお疲れさまだったな」
道中でアマーリアが話しかけてきた。
「まあね。特にキリには助けられたよ。キリにはお世話になりっぱなしだからいつか恩返しをしないと」
「ようやくオニ族の隠れ湯にも入れたしな。何故テツヤは来なかったのだ。せっかく待っていたのに」
「いや行けるわけないだろ!」
そんなことを話しながら屋敷に戻るとドアの前に立つ人影があった。
「誰だ?」
見知らぬ影に警戒心を強めながら近寄っていくとその人物が振り返った。
褐色の肌に編み込んだ長い黒髪、切れ長の目をした女性だ。
そして俺はその容姿に見覚えがあった。
「ヘルマ?なんでここに?」
それはシエイ鉱山で共に戦ったベルトラン帝国最強の戦士、ヘルマ・バハルだった。
やってきた俺たちをグランが興味津々で迎えてきた。
季節は初冬、山にあるグランの村は既に冷たい風が吹いている。
「この前収穫した蕎麦の粥をご馳走になっただろ?そのお返しに今度はこっちが蕎麦料理を作ろうと思ってさ。ここに石臼がなかったっけ?」
「石臼ならあるけどよ、何をしようってんだ?」
「それは後のお楽しみさ」
俺はそう言ってグランの村で収穫された蕎麦を石臼で粉にした。
オニ族が使うやたらとでかい石臼だけど俺の土属性の力があれば難なく扱える。
それから石で作ったボウルに蕎麦粉を入れて水を少しずつかけながら練っていった。
俺が作ろうとしているのは日本で食べてきた蕎麦だ。
師匠に蕎麦打ちが趣味の人がいてやり方を教えてもらったからこれには少し自信があるのだ。
蕎麦粉全体に水が行き渡るように練った後で打ち粉を振った台の上で平らに四角く伸ばしていき、折り重ねて蕎麦切り包丁で細く切っていく。
「ほほ~、なかなか面白えもんだな。蕎麦のそんな食い方は初めて見たぜ」
「これは見た目も楽し気でいいですね~」
グランやミンレ、村のみんなが興味津々で見ている。
汁は村で使っている肉醤、酒、砂糖、干しキノコを使って作った。
更に獲れたての鴨の肉と骨も加えてみたり。
蕎麦を茹でて木の椀に汁と一緒に入れて出来上がりだ。
「よしできたぞ!」
「早く食わせやがれ!」
出来上がるなりグランがお椀をひったくってフォークで啜り始めた。
「う、美味え!!」
そして一口食べるなり吠えた。
「こんな美味えもんは初めてだ!蕎麦粥なんて目じゃねえ!蕎麦ってこんなに美味いものだったのかよ!」
「本当に美味しいですね。蕎麦を粉にして練ってから細くするからこんなに食べやすくなるんですね。それにこのお汁も美味しい。これは是非作り方を教えてもらわないと」
ミンレも感心している。
「なんだなんだ?なんかやたらいい匂いがするじゃないかよ」
「お、テツヤさんたちじゃねえですか?何をしてるんで?」
「ちょっとちょっと~、グランばっかりずるいよ。あたしたちにも食べさせてよ!」
匂いにつられて村中の人たちが集まってきた。
いかん、これはいつもと同じパターンになりそうだ。
結局俺とキリはミンレの助けも借りてひたすら蕎麦を作り続けることになってしまった。
「いや~、これは本当に美味いっすね。しかもあったまるからこれからの季節にもぴったりだ」
「本当になあ、蕎麦はトロブの名産品だからこいつも名物になるかもなあ」
いつの間にか来ていたカエルとイノシロウまでちゃっかり蕎麦を食べている。
「いや、これは真面目にトロブの名物料理として売り出せるんじゃないか?この辺りは山の幸は採れるが名物と呼べるものはなかったから新たな観光資源にできると思うぞ」
「確かにそうですね。この辺は蕎麦は育つけど小麦は育たないから蕎麦料理があると温泉客も喜ぶかもしれませんね」
アマーリアとソラノが蕎麦を啜りながら話題に乗っかってきた。
なるほど、蕎麦料理は山間のこの地方にぴったりかもしれない。
なにせこの辺は小麦粉が高級品でゴルドの一・五倍位するのだ。
その代わり蕎麦の実は安くてどこでも育つから蕎麦粥や雑穀粥が主食となっている。
蕎麦が加われば観光客のみならず住民も喜ぶかもしれない。
「それだったらこういうのもあるぞ。フラム、ちょっと火をつけてくれないか?」
フラムに頼んで竈に火をつけてもらい、その上にフライパンを乗せた。
蕎麦粉と塩少々を軟らかめに水で溶いてからフライパンに薄く延ばして焼く。
その上に肉やキノコ、卵を乗せてから縁を四角く折り畳んだ。
ガレットの出来上がりだ。
「美味え!さっきの奴も美味かったがこいつも美味えな!!」
「グランばっかりずるい!あたしらにも食わせろ!……うまっ!何これ!メチャ美味しいんだけど!」
「私はさっきのよりこっちのが好きかも!」
「俺はさっきの奴の方が好きだな。あっちの方が腹があったまるからよ」
蕎麦と同じくガレットも好評みたいだ。
「これは良いですね~。私も是非ともレシピを教えてもらいたいですね~。新たな魔法料理のヒントになるかもですよ」
いつの間にかカーリンさんまで参加していた。
結局全員が満足したのは日が暮れようとした頃だった。
やはり一日がかりになってしまった。
それでもみんなが喜んでくれるのは嬉しいものだな。
疲れて眠り込んでしまったキリを背負うと俺たちは屋敷へと戻っていった。
「今日はお疲れさまだったな」
道中でアマーリアが話しかけてきた。
「まあね。特にキリには助けられたよ。キリにはお世話になりっぱなしだからいつか恩返しをしないと」
「ようやくオニ族の隠れ湯にも入れたしな。何故テツヤは来なかったのだ。せっかく待っていたのに」
「いや行けるわけないだろ!」
そんなことを話しながら屋敷に戻るとドアの前に立つ人影があった。
「誰だ?」
見知らぬ影に警戒心を強めながら近寄っていくとその人物が振り返った。
褐色の肌に編み込んだ長い黒髪、切れ長の目をした女性だ。
そして俺はその容姿に見覚えがあった。
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