外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
第三部最終話.秋の訪れ
俺は正式に領主として任命され、治める土地は俺の名字を取ってアラカワ領と改名された。
領地に自分の名前が付けられるのはなんだかこそばゆい気持ちもするけどいずれ慣れるのだろう。
「テツヤ殿!テツヤ殿に教えていただいたバット・グアノは凄い効果でしたぞ!」
新しくトロブの屋敷に作った執務室にルボン大臣が喜色満面といった顔でやってきた。
「追肥としてあれを撒いてから作物がみるみる元気になりましてな、予定の倍の収量が見込めそうですぞ!来年元肥として撒いたらどれほどの効果があることか!」
「そうですか、それは良かった!調べてみたらあの洞窟全体にバット・グアノが堆積してるみたいだからしばらくは使えそうですよ」
「あのバット・グアノがあれば我が国の農業は安泰ですな!他国への輸出量だって増やせそうです!」
ルボン大臣は嬉しくて仕方がないというように小躍りしながら去っていった。
少なくともこれで旧カドモイン領の住民がひもじい思いをして冬を迎えることはなさそうだ。
「嬉しそうだな、テツヤ」
アマーリアがお茶の入ったカップを机の上に置きながら微笑んだ。
「ああ、なんだかようやく平和が戻ってきたような気がしてさ」
「確かにここしばらくのテツヤは馬車馬のように働いていたものな」
「ようやく落ち着いてきてほっとしてるよ」
俺は背中を大きく伸ばした。
「ボーハルトの工業生産も始まったし、これで安定してくれることを願っているよ」
結局あれからリンネ姫の依頼でマットレスを作ったらそれが評判になり、俺は百件を超える前注文と共に帰ってきたのだった。
フェバク鉱山から無事に鉄も届くようになり、今頃ボーハルトではフル稼働でマットレスを作っていることだろう。
「とにかく落ち着いたらしばらくのんびりしたいね」
大きなため息をつくと不意に頭の後ろが柔らかなもので包まれた。
アマーリアが後ろから俺の頭を抱きしめていた。
「本当にテツヤはよくやってくれた。どれだけ感謝してもしきれないくらいだ」
「そんなことはないさ。俺だってみんながいなかったらここまでやってこれなかった。俺の方こそみんなにどう恩を返していいかわからないくらいだ」
そんなことはない、とアマーリアが頭を振った。
「私たち、いや私はテツヤに色んなことを頼り過ぎていた。甘えていたと言ってもいいくらいだ。その恩を返させてほしい」
俺を抱きしめるアマーリアの手が熱を帯びてきた。
「テツヤ、言ってくれ。私はテツヤが望むことをなんでもしよう。テツヤのためならどんなことでも喜んでやろう」
「アマーリア…」
見上げるアマーリアは顔がほんのりと朱に染まり、目が潤んでいる。
艶やかな藍色の髪が俺の顔を包み込むように広がる。
「テツヤ…」
アマーリアの顔がゆっくりと俺の顔に近づいてきた。
「テツヤ!!!」
「うわぁっ!!」
その時いきなりドアが開いたせいで椅子ごと背中から床に落ちた。
「あ、悪い、取り込み中だったか?」
ドアの向こうにいたのはドワーフのゲーレンだった。
「ゲ、ゲーレンさん、なんでここに?」
「なんでここに?じゃねえよ!」
背中をさすりながら立ち上がるとゲーレンさんが怒鳴りながら近づいてきて俺の背中を乱暴にどやしつけた。
「お前さん、ボーハルトでなんだか面白そうなことを始めたみてえじゃねえか!そういうことは俺にも教えろってんだよ!」
「ああ、ボーハルトを工業都市にするって話ですか」
「そう、それよ!それを聞いたら居ても立っても居られなくなっちまってな!こうして来たって訳よ!」
「来たって…ひょっとしてゲーレンさんこっちに引っ越してきたんですか?工房の方は?」
「あっちの工房は若い奴らに任せてきたよ!お前さんの話を聞いて俺もこの年で一から始めたくなってな!どうだい?俺を雇ってはくれねえか?」
「そ、それはもちろん大歓迎だよ!ボーハルトはまだまだ人が足りないんだ。ゲーレンさんみたいに技術力があって大局を見られる人はいつだって大歓迎だ!」
「決まりだな!じゃあこれからよろしく頼むぜ!」
そう言ってゲーレンは去っていった。
「やれやれ、嵐のような人だったな」
そう呟きながら椅子に座り直した俺の頭が再び柔らかいものに包まれた。
アマーリアか?それにしては感触が先ほどよりも浅いような……
「ってソラノ?いつの間に?」
そこにいたのはソラノだった。
「いつの間にって、ゲーレンさんを連れてきたのは私だぞ」
そ、そうだったのか、しかし何故俺の後ろに?
「何故って、先ほどアマーリア様に同じ事をさせていたであろう。ならば私でも問題ないはずだ」
いや、させていたわけでは…
再びドアが開いた。
「お、悪い、邪魔だったか?」
そこにいたのはグランだった。
「いや、邪魔ってことはないけど。何か用か?」
「これから村の男総出で鹿狩りをするんだけどよ、お前もどうだ?」
「鹿狩りか、面白そうだな…」
「テツヤも来て」
再び俺の頭が抱きしめられた。
今度はフラムだった。
何故みんなして俺の頭を?
「ソラノがしてたから」
「どうやらまだまだのんびりとはいかないみたいだな」
アマーリアが困ったように微笑んだ。
「ああ、でもその方が俺には向いてるみたいだ」
俺はそう言って立ち上がった。
「これがここでの俺の生き方なんだろうな」
見上げた窓の外には見事な秋空が広がっていた。
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