外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
36.ベンズを追え!
あまりのことに呆気に取られて見上げていると鉄でできたドラゴンはゆっくりと羽ばたきながら更に浮かび上がっていった。
その背中にベンズが乗っているのが見えた。
「ベンズ!!!!」
俺の叫び声に気が付いたベンズがこちらを見下ろす。
「これはこれは皆さんお揃いで。ひょっとしてあなたがテツヤさんですかな?」
その顔に先ほどの焦りは消えうせ余裕に満ちた笑顔が浮かんでいる。
「なんだそれは!!!」
「これのことですか?どうです、見事でしょう!これはワンド様からいただいた魔導鉄騎竜ですよ。と言っても偉大なるあのお方のことはご存じないでしょうがね」
すっかり余裕を見せたベンズが得意げに語り始めた。
やっぱりこいつはワンドとも通じてやがったのか。
「あのゴーレムみたいなのもワンドからもらったのか!?」
「その通り、そちらもワンド様の賜物である魔導鉄甲騎士です。はて、その魔導鉄甲騎士が見当たらないようですが……」
そう言ってベンズが不思議そうに辺りを見渡した。
「そいつらならそこで寝てるよ」
俺は木の下で動かなくなった魔導鉄甲騎士を指差した。
その指の先を追ったベンズの顔に驚愕の表情が浮かぶ。
「ば、馬鹿な…あれほどの戦闘力を持った魔導鉄甲騎士が…」
「戦闘力はあっても耐荷重は無限とはいかなかったみたいだな。さっさと観念して降りてきやがれ」
「……ふ、ふふふ、ふわあはははははははっ!!!!」
ベンズが突然笑い出した。
「誰が観念するか、ばぁーーーか!私にはまだこの魔導鉄騎竜があるんだぞ!貴様らなんぞこの魔導鉄騎竜があれば一捻りだっつーの!」
叫ぶなり魔導鉄騎竜が空高く舞い上がった。
「逃がすか!」
ソラノが雷撃の魔法を放った。
しかし雷撃は魔導鉄騎竜に到達する前に不可視の壁によって弾かれてしまった。
「くっ、何故届かない!?」
「あいつには耐魔防壁が施されてるみたいだ。俺もさっきからあいつを止めようとしてるけど効かないんだ」
流石にワンドが作っただけあって魔法への対策はばっちりということか。
「貴様らはそこで焼け死んでいけ!」
ベンズの号令と共に魔導鉄騎竜が炎のブレスを吐いた。
辺りが炎に包まれ、木々に燃え移っていった。
「ははははははは、森と共に燃え尽きろ!ばぁーーか!ばぁーーか!」
子供みたいな捨て台詞と共にベンズが飛び去ろうとしている。
クソ、あいつは何としても止めないと!
でもその前にこの火事をなんとかしないと山火事になっちまう!
「みんな伏せるんだ!」
その時森の向こうから声が聞こえてきた。
「アマーリア!?」
それは馬に乗ってこちらに向かってくるアマーリアだった。
「龍水操流!」
アマーリアの詠唱で納屋の隣にあった井戸から水が噴き出し、まるで龍が蛇行するように森の中をうねりながら火を消し止めていった。
「助かったぜ!」
「アクダルモの屋敷に向かっている途中だったのだが一体何があったのだ?」
「ベンズが逃げ出したんだ。あの野郎、ワンドが作った魔導鉄騎竜とかで飛び去っていきやがった!」
ベンズは既に空の彼方だった。
鈍重そうな身なりの割にかなりの速度だ。
「どうする?私の飛行でも追いつけそうにないぞ」
ソラノが不安げな声をあげた。
このままだとベンズに逃げられてしまう。
だがそれだけは阻止しないとあいつは今後もこの国に混乱をもたらすだろう。
待てよ、ここにいるメンバーだったら何とかなるかもしれない。
「俺に考えがある。それにはみんなの力が必要だ!」
◆
「ふう、ここまで来ればもう追ってこられまい」
ベンズは魔導鉄騎竜の上で安堵の息を漏らした。
逃げ出した納屋は既に視界の端に消えようとしている。
全てを失ってしまった。
金も、コネも、商売道具も、この数十年の間必死になって積み上げてきたものが全て無に帰してしまった。
それもこれもあのテツヤという男のせいだ。
ベンズはギリギリと歯ぎしりをした。
あの男さえいなければこんなことにはならなかったはず、いやそもそもあいつがいなければランメルスの反乱だって成功していたかもしれないのだ。
全部あの男が原因だ。
…だがまあいい。
ベンズは怒声を張り上げるのを無理やり我慢して息を整えた。
全てを失ってしまったがまだ命は残っている。
裸一貫でベンズ商会を作ったこの私だ、次もまたのし上がってやる。
そして再び勢力を取り戻したら真っ先に私の全てを奪っていったテツヤに復讐だ。
とりあえずフィルド王国に留まるわけにはいかないからひとまずベルトラン帝国に行こう。
ベンズは既に次の計画へと頭を巡らせていた。
アンシャラザードには知り合いもいる。
この魔導鉄騎竜を担保にすれば現金も手に入るだろう。
まずはそこからだ、稀代の大商人ヨコシン・ベンズはこの位では終わらない。
「……ち…が…れ」
その時何か声が聞こえた気がした。
ぎょっとして振り返ったが何も見えない。
「ま、まさか…な…」
ベンズは頭の中に湧き上がる不安をかき消すように頭を振った。
この速度を追ってこられるわけがない。
「待ち…が…れぇぇぇ」
いや、今度は聞き間違いなんかじゃない!
ベンズは不安に顔を引きつらせて振り返った。
「ひいいいいぃぃぃ!!!!!」
ベンズの不安は今や恐怖へと形を変えていた。
「待ちやがれええええええ!!!」
テツヤが迫っていた。
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