外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道 一人

35.用心棒グズリク

「貴様のその力、なかなかに厄介だな。ここで殺しておいた方が良だろう」


 グズリクは息一つ乱していない。




「そ、そいつはお断りだ」


 俺は岩を背にしてなんとか立ち上がった。


 正直もう立っているのがやっとだ。




「無駄なあがきはやめておけ。貴様の攻撃は俺には届かん」


 もはや逃げられないと高を括ったのかグズリクがゆっくりと近寄ってきた。




「さ、最後に教えてくれよ。あんたのその力は魔力で肉体強化しているんだろ?」


「察しの通りだ。俺の使う魔力強化武術にあらゆる攻撃は無意味だ」


「どおりで拳で岩をぶん殴っても傷一つつかないわけだ。なあ、なんでこれほどの使い手のあんたがベンズの用心棒みたいな真似をしてるんだ?あんたほどの腕なら他に幾らでも食っていく方法があるんじゃないのか?」




 グズリクが鼻で笑った。


「俺は俺の力を正当に評価する相手についているに過ぎん。地位や名誉などが強さに対する正しい評価になるものか。全ては金だ。そしてベンズは俺に対して正当な報酬を払っている。それだけだ」


「だったら俺が今ここでベンズ以上の金を払ったら見逃してくれるかい?」


 俺の言葉に一瞬動きを止めたグズリクだったが、すぐに首を横に振った。




「駄目だな。俺は依頼された仕事は全うする性質でな。それに貴様はここで殺しておいた方が後々面倒ごとがなさそうだ」


「やっぱりか」


 俺はため息をついた。


 なんでこういう無法者は変なところで律儀なんだ。




「無駄話は終わりだ。抵抗しなければせめて苦しまずに逝かせてやる」


 グズリクが拳を構えた。


 魔力を帯びた拳が青白く光っている。






「確かにあんたは強いよ。俺の攻撃じゃあんたには届かないだろうな」




「む?」


 グズリクが怪訝な顔をした。




「でも、それでもあんたに届く方法はあるんだよ」


「む、むむぅ…」


 グズリクの顔に脂汗が浮かんでいく。


 苦しそうに顔を歪めている。




「ぐ、ぐぐぅぅ……き、貴様、何を…した……」


 やがてグズリクは苦悶の表情を浮かべながら腰に手を当てて膝をつくと信じられないというように俺を睨み上げた。




「言った通りあんたに俺の攻撃は届かない」


 俺はゆっくりと息を整えてグズリクに向き直ると親指と人差し指の間に小さな隙間を作った。


「だから内側から攻撃させてもらったんだ。この位の石でね」




 そう、俺が作ったのはほんの数ミリ程度の石だ。


 しかしその石が人体で最も耐え難いという苦しみを生み出す。




 それが尿管結石だ。




 どんな屈強な人間でもこの痛みには抗えない。


 攻撃を受けながらグズリクの体内のシュウ酸カルシウムを集めて石を作ったのだ。


 体内の鉱物を操るには対象に接触する必要があったけど攻撃を食らった隙になんとかやることができた。






「ひ…卑怯な真似を…」


「いや、悪いけど今はそれどころじゃないから」


 俺は脂汗を流して苦しんでいるグズリクの全身を岩で包んだ。




「今のあんたならその岩を砕く事もできないはずだ。悪いけどベンズを捕まえるまでそうしててくれ」


 俺はそう言い残すとベンズが逃げていった方へ足を進めた。








    ◆








「不味いな、早いとこ追いつかないと」


 俺はベンズが去っていった方へ飛んでいった。


 グズリクとの戦いに時間をかけ過ぎてしまった。


 やがて森の外れに納屋のようなものが見えてきた。


 どうやらベンズはあそこへ逃げ込んだらしい。


 そして納屋の前にソラノとフラムがいる。


 というか何かと戦っている?




「な、なんだ?こいつらは?」




 二人が戦っていたのは全身が鉄でできた巨大な兵士だった。


 体のサイズはエルニックやテーナたち小巨人族位ある。


 中に小巨人族が入っている気配がしないところを見ると魔法で動くゴーレムか!




 数は五体、既に二体は倒されているけど二人はかなり苦戦している。


 何らかの耐魔法処置がされているらしく二人の魔法もあまり効果がないらしい。




「「うわっ」」


 二人がゴーレムに吹き飛ばされた。


 倒れたところに別のゴーレムがとどめを刺そうと剣を振り上げた。




「どけええっ!!!」




 そこに俺が操作した大木が激突した。


 三体のゴーレムがまとめて大木の下敷きになる。


 続けざまにその上に何本も大木を降らせた。


 木の種類やサイズにもよるけど樹高十メートルクラスの木だとその重量は数トンに達する。


 ゴーレムだか何だか知らないがそれだけの重量を持ち上げることはできないだろう。


 現にゴーレムたちは木に潰されて完全にひしゃげ、機能停止していた。






「二人とも無事か!」


「「テツヤ!!!」」


 俺が駆け寄ると二人は嬉しそうな声をあげた。


 二人とも傷つき、防具もボロボロになっている。




「大丈夫か?」


「私たちなら平気だ、それよりもベンズが…!」


 そう言ってソラノが納屋を振り返る。


 その納屋の天井が突然吹き飛んだ。




「な、なんだぁ!?」




 仰天して見上げると納屋から巨大な影が浮かび上がってきた。


 それは鉄でできた巨大なドラゴンだった。



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