外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
27.ボーハルトを狙う悪意
パーティーが終わりトロブに戻る途中で俺はみんなに調査の結果を説明した。
「リンネ姫様、どうしますか?ベンズは指名手配がかけられている身ですから正式に逮捕に乗り出すことも可能ですが」
「いや、諸侯の屋敷を家宅捜査する場合は事前に書面で通達を行うのが決まりだ。手続きを踏んでいる間に逃げられるのが落ちだろう」
ソラノの提案にリンネ姫は首を横に振った。
「ベンズがいた部屋から証拠を持ってきてそれを突き付けるんじゃ駄目か?」
「正式な手続きを踏まずに手に入れた証拠では裁判の時に不利になってしまうだろう。そこをつかれて減刑や無罪を勝ち取られてしまう可能性もある」
俺の提案も却下された。
「ベンズが実際に犯行現場にいるところを押さえる必要があるってことか…」
「奴はアナグマのように用心深いからな。よほどのことがないと顔を出さないだろう」
うーん、と全員が唸った。
「まあ今悩んでも仕方あるまい。とりあえずいる場所はわかったのだ。しばらくはアクダルモ候の監視を続けることにしよう」
リンネ姫の言葉でその件はお開きとなった。
実際俺たちには他にもやる事が山積みなのだ。
◆
「クソ、あのテツヤとかいうクソガキが!調子に乗りおって!リンネもリンネだ!あんな男に色目を使うなど王家にあるまじき態度だ!」
馬車の中でアクダルモはひっきりなしに罵り続けていた。
向かっているのはアクダルモの別邸だ。
聞いている者が従者しかいないとあって王家の者であろうと見下げた物言いをしている。
己の権力を誇示するために開いたパーティーだったが結果は散々だった。
途中で腹を壊してトイレにこもりきりになり、やっと出てきた時にはリンネ姫は帰った後だったのだ。
クソ、どいつもこいつも舐めやがって。
この私が権力を掴んだ暁には私を舐めた報いをきっちり受けさせてやる。
到着すると従者を待たずに荒々しく別邸の扉を開ける。
「ベンズ殿、終わりましたぞ」
そこにいたのは口ひげを生やしてでっぷりと太った男、ヨコシン・ベンズその人だった。
「リンネ姫が来るというから万が一に備えてこちらに避難していただきましたが、どうやら気付かれてはいないようですぞ」
「それは良かった。リンネ姫が来ると聞いた時は肝を冷やしましたからな」
ベンズはソファから身を起こすと難儀そうに立ち上がった。
「は、あんな小娘如き。本人は頭が回るつもりでいるだろうか所詮はまだまだ子供。はぐらかすことなどお手の物よ」
「流石は聡明なるアクダルモ様。この国が栄えているのはアクダルモ様の手腕あってのことですぞ」
「であろう?それをあの小娘とテツヤとかいうガキが舐めおって。いずれ然る報いを受けさせてやる!」
「テツヤ?」
「ああ、ベンズ殿はご存じなかったか。どこからやってきたのかは知らぬが王家に取り入ってちゃっかり領主の座に収まっている道化よ。私がこの国を掌握した暁には着の身着のままで路上に放り出してやる」
テツヤがランメルスとカドモインを倒したことは国王とテツヤたちの間の秘密となっていてそれぞれの事件においてただの功労者であると告知されているため、二人がそれを知る由はなかった。
「ふむ、少々気にはなりますが、今はそれどころではありませんな。まずは身を潜め、力を蓄えねばなりますまい」
「然り、何をするにも必要なのは先立つものだ。そのために遠縁であるベンズ殿を匿っているのであるしな」
「全く、アクダルモ殿にはなんとお礼を申して良いのやら。この御厚意には不肖ベンズ必ずや報いますぞ」
「そのためにはまず金策だ。早く次の手を考えねばなるまい」
「然り然り、香木取引とシエイ鉱山乗っ取りが失敗に終わってしまったのは不運でした。あれが成功していれば我々の資産は更に増えていたのですが」
「私の、だ」
「もちろんアクダルモ殿のですとも」
愛想笑いをしながらベンズは内心歯噛みをしていた。
誰のおかげで今の暮らしができていると思っているんだ。
協定破りをし、時には犯罪組織と折衝してアクダルモに富をもたらしたのは誰だ。
放蕩して財産を食いつぶすことしか能がなかったアクダルモの資産を倍増させたのは他でもないこのヨコシン・ベンズ様だ。
だがこの屈辱もしばらくの辛抱だ。
アクダルモが裏で王国を支配し、そのアクダルモを操るのはこの私だ。
ベンズはそう思うことで留飲を下げるのだった。
「してベンズ殿、例の鉄鉱山の件はどうなっている?」
「それはもう滞りなく。我々が売り浴びせているために鉄の価格はこれ以上ないくらい下がっています。ほどなくあの鉄鉱山は経営が立ちいかなくなるでしょう」
「そこに私が救いの手を差し伸べるという訳か」
「これでこの国の鉄鋼は全てアクダルモ様のものです」
「くくく、これで少しはあの小娘の鼻を明かせるというものよ。そうだ、ついでにテツヤが治める領地への鉄の販売を禁止してやろう。私を侮辱した罰を受けさせてやる」
「アクダルモ殿、あまり目立った真似をされては余計な詮索を呼ぶかもしれませぬぞ」
「うるさい!貴様は私の言うことを聞いていればいいのだ!私は侮辱するものを決して許さぬ!」
ベンズはため息をついた。
こうなったアクダルモは誰にも止められない。
だがいいだろう、動き出した車輪はすぐには止まれない。
近いうちにこの国の経済は私が握ることになるだろう。
その時のことを想像すると自然とベンズの顔もほころぶのだった。
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