外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
21.鉱殻竜
坂を上った先が採掘地になっていて巨大なクレーターのようなすり鉢状の地形になっている。
そしてそのすり鉢の底にある小高い丘の上に鉱殻竜がいた。
でかい。
体長は以前戦ったレッサーベヒモスの倍くらいある。
全身が石灰岩、つまり大理石でできた真っ白な鱗に覆われていて神々しいくらいだ。
鱗とは言うけど遥かに巨大でもはや外殻と言った方が良いかもしれない。
例えるなら大理石で作った巨大なポリゴンの竜とでも言おうか、大理石の鎧で覆われた竜とでも言おうか。
ともかくそんな想像を超えた生物が俺たちの討伐対象だった。
鉱殻竜は巨大な口であたりの石灰岩をゴリゴリと貪っている。
俺たちの存在に気付いているらしく時折こちらを見ているけど全く気にする様子がない。
「初めて見るけど、こいつはとんでもないな」
「同意だぜ」
俺の言葉にキツネが生唾を呑み込んだ。
あたりの冒険者も鉱殻竜の迫力にあてられているのかみな押し黙って見ているだけだ。
その中でまったく態度を変えていない集団がいる。
ヘルマの一団だ。
「恐れる必要はない!」
ヘルマが叫んだ。
「幾ら巨大とはいえ相手は知性を持たぬ獣だ!まずは集団でかく乱して足を狙え!奴が倒れたら装甲の薄い腹部と首を攻撃するのだ!行くぞ!!私に続け!!!!」
ヘルマは叫ぶなりすり鉢の側面を駆け降りていった。
既にこの場を制御しているのはヘルマだった。
一緒にいたヘルマの部下たちもその後に続く。
「クソ!俺たちも行くぞ!」
「軍人に手柄を横取りされちゃ冒険者の名折れだ!」
「みんな続け!続けえええ!!!」
冒険者たちもヘルマの吶喊を合図に次々と急な坂を下って鉱殻竜に向かっていく。
俺たちもその後に続いた。
「おい、あんたは行かないのか?」
気付けばキツネは坂の上に残っていた。
「ああ、俺は良いんだ。もう少ししてから加わらせてもらうからよ」
そういう魂胆か、意外と抜け目がないというかちゃっかりしてるんだな。
ウインクしてくるキツネをよそに俺たちが底へ降りると既に他の冒険者たちが攻撃を開始していた。
弓を持っている者は丘の下から矢を射かけ、他の者は足下にまとわりついて攻撃を仕掛けている。
が、いかんせん相手がでかすぎる。
しかも全身が大理石の鱗で覆われているから攻撃が全く通らない。
うるさそうに尻尾を振るうたびに数人の冒険者が吹き飛ばされていく。
「怯むな!攻撃を続けろ!」
そんな中でヘルマとその一団は果敢な攻撃を仕掛けていた。
ヘルマが両手に持った二本の曲刀を振るうたびに鉱殻竜の鱗が切り裂かれていく。
鉱殻竜が苛立ちの吠え声をあげ、その足元がぐらついた。
「おい、これはいけるんじゃねえか?」
「よしヘルマに続くんだ!」
冒険者たちの士気も高まっている。
「俺たちもいくぞ」
攻撃に参加しようと身構えた時、鉱殻竜の魔力が急に増大した。
何かがやばい!
俺は即座に足下の石灰岩で大理石の壁を作ってフラムとキリを囲った。
「いかん!みんな下がれ!防御態勢を取れ!」
ヘルマが叫んだ瞬間、鉱殻竜の全身を覆っていた鱗が爆発した。
いや、鉱殻竜が全身の鱗を凄まじい速度で全方向に射出したのだ。
「ぐあ!」
「ぎゃあ!」
全身が投石機となった鉱殻竜の攻撃に辺りにいた冒険者たちが軒並み打ち倒された。
土煙がはれた時、立っているのはわずか十数名になっていた。
鉱殻竜の鱗は既に元通りになっている。
とんでもない修復速度だ。
これが鉱殻竜の攻撃方法なのだろう。
俺が即席で作り上げた壁も鱗の衝突で半ば崩れかけていた。
この攻撃を躱して懐に飛び込むのはなかなか骨が折れそうだぞ。
「だ、駄目だ…こいつは強すぎる…強いなんてもんじゃねえ、レベルが違いすぎる!」
「もう報酬なんかいらねえ。俺は辞退するぞ!」
「俺もだ!クソ、こんなところ来るんじゃなかったぜ!」
残っていた冒険者たちも口々に呪詛の言葉を吐きながら逃げ出していった。
ギオオオオオオオオオオオッ!!!!!
鉱殻竜が天をつんざくように吠えた。
まるで勝利の雄たけびだ。
「貴様は逃げないのか」
いつの間にか横に来ていたヘルマが話しかけてきた。
「言っただろ、俺は請け負ってここに来てるんだ。逃げるわけにはいかないんでね」
「ふん、物好きな奴だ」
そうは言ったものの、こんな怪物どうやって攻略したらいいんだ?
「む、ヘルマ様、これは不味いですよ!」
側にいたヘルマの部下のマッチョがこめかみに指をあてて焦ったような声を上げた。
「あの鉱殻竜は複核種です。頭と心臓の二か所にある魔晶を同時に破壊しないと片方が爆砕して一帯が壊滅的な被害を受けてしまいます!」
この人そんななりで遠隔視の能力持ちだったのね。
「クソ、あの鱗だけでも厄介なのに二か所同時破壊とはな」
ヘルマが忌々しそうに呻いた。
「だったら俺に考えがあるぞ」
「ふん、話だけは聞いてやろう」
俺の言葉に気乗りしなさそうにヘルマが答えた。
「俺があいつの動きを止めて鱗も何とかする。俺が合図を送るからあんたは頭の魔晶を破壊してくれ。心臓の方は俺が受け持つ」
「貴様にそんな事が可能なのか?」
「まあこの位のことは出来るよ」
俺はそう言って近くの岩を連続して鉱殻竜に向かって投擲した。
今回はただの威嚇だから足下近くを狙っただけだけど突然の攻撃に鉱殻竜が戸惑いの叫び声をあげた。
それを見て無表情だったヘルマの顔が驚きに変わった。
「貴様、一体何者だ?それだけの土属性の力を操れる者がフィルド王国にいるなど聞いたことがないぞ!」
「今はそんな話をしてる場合じゃないだろ。どうだ?乗るか?乗らないか?」
「…良いだろう、お前の話に乗ってやる」
しばしの逡巡の後にヘルマが口を開いた。
「そうこなくっちゃ。じゃあ俺が合図するまでここで待機しててくれ」
「待て」
立ち上がる俺をヘルマが急に呼び止めた。
「まだ名前を聞いていなかったな。私の名はヘルマ・バハルだ。貴様の名は何という」
「俺の名前はテツ…じゃなくてリュエシェ・タウソン。みんなは鉄使いのリューと呼んでる。だから俺のことはリューと呼んでくれ」
やべえ、うっかりテツヤという所だった。
「リューか、それでは貴様に任せたぞ」
「ああ、任せなって」
そう言って俺は飛び出した。
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