外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
19.いざシエイ鉱山へ
見晴らした先には広大な大地が広がっていた。
吹く風はフィルド王国よりも乾燥していて風景も荒涼としている。
俺たちは今フィルド王国とベルトラン帝国の国境沿いにいた。
今回の魔獣討伐にはフラムとキリが同行している。
アマーリアとソラノも行くと言って聞かなかったのだけど外交問題になりかねないとリンネ姫に脅されては従うしかないみたいだ。
フィルド王国とベルトラン帝国を遮る山を越えればそこはもうベルトラン帝国の領土だ。
国境ではリンネ姫が用意してくれた身分証を見せたらあっさり通ることができた。
ちなみにその身分証では本名であるリュエシェ・タウソンを名乗っている。
今となっては本名の方が違和感があるな。
俺たちが目指すべきシエイ鉱山は国境のすぐ近くにある。
「なるべくさっさと片付けて帰ろうな」
まずは情報収集のためにシエイ鉱山の麓にある鉱夫街へと向かうことにした。
「な、なんだ?これは?」
街について俺は目を疑った。
鉱山街であるはずなのにそこは武器を携え防具を身にまとった冒険者で溢れかえっていたからだ。
「凄い人出だけど何があったんだ?」
「何って、あんた何も知らないでここに来たって訳じゃないだろ?魔獣討伐が始まるんだよ!」
通りに店を出していた茶屋に入り込んで尋ねると女将さんが呆れたように目をむいた。
なるほど、そういうわけか、というかそれもそうだよな。
しかしここまで大がかりだとは思わなかったぞ。
「なんでも全国から数百人の冒険者が集まってるらしいよ。あんたも登録するんなら鉱山事務所に行くんだね」
水出しのお茶とシロップのかかったパンケーキを持ってきながら女将さんが説明してくれた。
「ありがとう、そうするよ」
礼を言ってお茶をすすり、パンケーキを食べる。
美味い。
乾燥している風土のせいなのかお茶もパンケーキも凄く甘いけどそれがこの気候に合っているみたいだ。
軽い食事を済ませてから鉱山事務所に向かうと、そこは更に冒険者でごった返していた。
「魔獣討伐は明日の朝からだ!登録はもうそろそろ締め切るぞ!まだの人は早くこっちで登録してくれ!」
鉱山の職員が大声を張り上げている。
やばいやばい、さっさと登録しないと。
俺が受付に向かうと突然辺りが静まり返った。
ただならぬ気配を感じて後ろを振り向くと雑踏が割れるように開いていくところだった。
その空隙を当然であるかのように進む影があった。
人数は五人、四人は鎧兜に身を包んだ屈強な戦士で、もう一人は女性だった。
闇夜のように艶やかな黒髪と褐色の肌、切れ長の瞳を持ったすらりとした美人だ。
背中に二本の曲刀を携え、四人の男を従えるように歩いている。
「おい、あれを見ろよ、あれはヘルマじゃないのか?」
「帝国軍最強の戦士、”越えざる壁”のヘルマか!」
「ヘルマが魔獣討伐に参加するのか。これはもう成功したも同然じゃないか!」
畏怖と尊敬の声がさざ波のように冒険者たちの間に広がっていく。
なるほど、あの人はどうやら帝国でも名を鳴らした戦士らしい。
通りで凄い迫力な訳だ。
思わず見とれそうになったところで本来の目的を思い出した。
まずは登録を済ませるのが先だ。
「すいません、登録をしたいのですが…」
「おい」
その時背後で声がした。
振り返るとそこにはヘルマが立っていた。
「その訛り、フィルド王国のものだな。何故フィルドの者がベルトランにいる」
氷のナイフのような視線が俺に突き刺さる。
「あ、ああ、確かに俺たちはフィルド王国から来た冒険者だ」
たじろぎそうになるのを必死にこらえながら俺は答えた。
「質問に答えていないぞ。何故フィルドの者がここにいる」
ヘルマの声はあくまで冷たい。
「俺はベンズ商会の依頼できたんだ。ベンズ商会はここと取引をしていて石灰が届かなくて困っているらしいからな。この二人は俺の仲間だ」
俺は正直に答えた。
リンネ姫にも調べられそうになったら下手にごまかすよりも正直に話した方が良いと言われている。
少なくとも嘘は言ってないわけだし。
「ベンズ商会?確かフィルド王国最大の商会だったか…」
ヘルマは値踏みするように俺を見つめ、やがて興味を失ったかのように視線を移した。
「貴様がフィルド王国でどの位やってきたのかは知らぬが今回の魔獣は手ごわいぞ、気を付けることだ」
忠告のように言い残すとヘルマは鉱山の職員に案内されて事務所の中へと入っていった。
どうやら彼女たちはここでの扱いも特別らしい。
「ふい~~~」
ヘルマの姿が見えなくなってから俺は盛大にため息をついた。
なんだかえらく緊張したぞ。
「なに、あの人。なんか偉そう!」
「あの女、かなり強い」
キリとフラムも緊張していたらしい。
ともかく俺たちは冒険者として今回の魔獣討伐への登録を済ませた。
「魔獣討伐は明日の朝六時から出発だから今日は町の外にあるテントに泊まってもらうよ。この登録証を見せたら案内してくれるからね。食事も出るよ」
受付のおばちゃんから羊皮紙に書かれた登録証を受け取り、俺たちは町の外にあるテント場へと向かった。
「どうしてこうなった」
俺は食事を終え、今はテントの中にいる。
そして両隣にはフラムとキリが寝ている。
「お前ら自分たちのテントを用意されてるだろ。なんでそっちに行かないんだ」
「砂漠の夜は寒い。だから温め合う必要がある」
「キリこんな所で一人で寝たくない!」
俺はため息をついた。
こうなってしまったら二人はてこでも動かないだろう。
「わかったから、せめてもう少し離れてくれないか」
「無理、このテントは狭いからこれが限界」
「いや、明らかにそこ壁沿いが空いてますよね?」
「気のせい」
眠れない俺をよそに夜は静かに更けていくのだった。
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