外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道 一人

11.山賊討伐

「話はわかった。じゃあ早速行ってみるか」


「え、い、良いのかい?」


 立ち上がった俺にルビキュラが驚いたような顔をした。


「良いも何もそれが願いなんだろ?だったら早い方が良いんじゃないのか?」


 それに今回の一件は俺と無関係な訳じゃない。


 このあたり一帯を預かる領主になったということもあるし、カドモインとワンドの件のケリをつけておきたいというのもある。


 ともかく俺はルビキュラの誘いに乗ることにした。




「話が早くて助かる…にも程があるというか、あんたは疑うってことを知らないのかい?」


「疑ってないわけじゃないさ。だからあんたにも同行してもらうぞ。こっちの実力をわかってるなら下手なことは考えない方が良いと忠告しておくよ」


「わかってるって。オーガウルフを一人で倒すような連中にケンカを売る気はないよ」


 ルビキュラはそう言って肩をすくめ、俺たちは連れ立って家の外に出た。




「得物はどうする?見たところあんたは丸腰みたいだけど」


「そうだな…この剣を少し借りてもいいか?」


 俺はそう言って近くに立てかけてあった古びた剣を二本取り上げた。


 その剣をトンファーの形に変えて腰のベルトに差す。


「これでいいや。剣はあまり得意じゃないんでね」


「道を作ってる時も驚いたけど大した能力だね。土属性って言うのかい?驚いたよ」


 俺の力を見てルビキュラは目を見開いて驚いている。




「まあね、そっちの武器は弓なのかい?」


「ああ、こいつにはちょいと自信があってね」


 そう言うとルビキュラは無造作に弓を引き絞ると空に向けて矢を放った。


 はるか上空を飛んでいた鳥が射られて落ちてくる。


「あんたたちの歓迎会はこいつの丸焼きで決まりだね」




「ほほ~、なかなかやるようじゃないか。私も弓にはいささか腕に覚えがあってな」


 それを見て闘志に炎がついたらしいソラノが同じように矢を放った。


 遥か先にいたウサギが木の幹に射止められる。


「料理は多い方がいいだろう?」


「なかなかやるじゃないか」


「そちらもな」


 ソラノとルビキュラがバチバチと火花を散らしている。




「そろそろ行かないか?」


 俺はため息をついた。








    ◆








「ここが奴らのアジトだよ」


 ルビキュラに案内されたのは森の遥か奥にある小さな集落だった。


 今は小高い丘に生えている大きな木の上に登って遠くからその集落を確認している。


 そこはルビキュラたちの村からかなり離れた場所にあったけど流石は森の民だけあってルビキュラ一行はまるで木の上を滑るように移動していたから思ったよりも早く到着した。


 フラムは悠々と追いかけていたけど俺たち三人はとてもついて行けないから空を飛んでいった。


 アマーリアは俺に抱えられてだけど。




「あれは何をしているんだ?」


 見た感じその集落では男たちが木を切り倒しているみたいだ。


 一見するとただの木こりと何も変わらない。


「あいつらは香木を切ってるのさ!」


 ルビキュラが吐き捨てるように言った。


「この辺は質のいい香木がたくさん生えていてね。貴族や坊さん連中に高く売れるってんで最近じゃ山賊よりも香木の乱伐に精を出してんのさ。おかげで森が丸裸だよ!」


 なるほど、確かにあたりの森は一切合切乱伐されている。


 香木といえば地球でもお香の材料として古くから珍重されていて伽羅きゃらなんかは金と同じ価値があると言われている。


 香木が貴重なのはこの世界でも変わらないみたいだ。






「あいつら最近妙に武装が強力になってさ、こっちもうかうか手を出せないんだ」


 言われてみれば確かに見回りの兵士はフルプレートの鎧で完全武装している。


 それに警備の厚さが尋常じゃない。


 集落を守っている警備だけで二十人はいるだろう。


 ただの山賊というよりも軍隊と言った方が近いくらいだ。




「アマーリアはどう思う?実はあの連中はちゃんとした仕事として伐採してるってことはないか?」


 俺は小声でアマーリアに尋ねた。


「うーむ、それはないだろうな。香木はほとんどの領地で管理が徹底されているからあそこまで無計画な伐採はしないはずだ」


「アマーリアもそう思うか。結局直接訪尋ねるのが一番手っ取り早いんだろうな」




「テツヤ、どうやって攻めるつもりなんだい?」


 そこへルビキュラが割って入ってきた。


「とりあえず暗くなるまで待つことにしよう」










 俺たちは夜になるのを待ち、集落へと近づいていった。


 当然だけど警備は夜でも厳重だった。






「どうする?これでは中に入るのは無理だよ?」


「まあまあ、ちょっと待っていてくれって」


 尋ねるルビキュラを制しつつ俺は持っていたトンファーを取り出した。


 鉄製のトンファーを細い鉄のリボンへと変える。




 そして地面に手を当てて周囲をスキャンした。


 集落にある家の中には三十人ほどいるけどほとんどが眠っているようだ。


 これなら大丈夫だろう。


 俺は鉄のリボンを操作して集落の中に送り込んだ。


 地面を通してスキャンしつつ寝ている人間を片っ端から鉄のリボンで拘束していく。


 それが終わってから警備兵にもリボンを差し向けた。




「うわっ!な、なんだ、これ…」


 警備兵は驚く間もなくリボンに拘束されていった。


「ざっとこんなもんだな」


 時間にして三十分ほどだろうか、集落は完全に無力化された。


「す、凄いね…やってくれるだろうと思ってはいたけどこれ程とは…」


 ルビキュラも驚いている。






「とりあえず明るくなってから詳しい話を聞くことにするか…」


 その時、暗がりに動く気配がした。


 どうやってか拘束を外した警備兵の一人が闇の中を走ってくのがかすかに見える。


 逃げられるのは不味い!


 と思う間もなくルビキュラとソラノが矢をつがえて放った。




「ぎゃあっ!」


 二本の矢はほぼ同時に男の足に突き刺さった。


「やるじゃないか」


「そちらこそ、なかなかの腕前だ」


 二人は不敵な笑顔を交わし合った。



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