外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
3.新たな入居者
「ふう、えらい目に遭ったぞ。いや、良い目と言うべきなのか…?」
俺が屋敷に戻るとロビーにフラムがいた。
「ええ?な、なんでフラムがここに?…さっきまで…」
露天風呂にいたんじゃ、という言葉を慌てて飲み込む。
フラムと一緒にアマーリアとソラノもいたからだ。
これ以上話をこじらすわけにはいかない。
しかし俺より後に出たはずなのになんで俺より前に着いているんだ?
忍者か?忍者なのか?
「今日から私もここに住む」
唐突にフラムがそう宣言してきた。
「す、住むって…急に言われても…みんなはそれでいいのか?」
「私は別に構わないぞ。部屋も一部屋余ってるしな」
「私も異論はない。フラムには世話になったし」
「私も!賑やかな方が楽しい!」
アマーリアとソラノ、キリも特に問題ないみたいだ。
「それなら俺も問題なしだ。むしろ歓迎するよ。これからよろしくな」
こうしてフラムは屋敷の一員となった。
自分で言うのもなんだけどあっさり決まったな。
「じゃあフラムにはキリの左隣の部屋に住んでもらおうかな」
ちなみにキリの部屋の右隣はリンネ姫が来た時に泊まるのに使うと言って聞かなかったので予約済みになっているからこれで二階の部屋は全て埋まったことになる。
「じゃあそういうことなんで後はゆっくりしてくれよな」
そう言って部屋に入ろうとしたがフラムが後について入ろうとしてきた。
「あの…」
あなたの部屋はそちらですよ、と言おうとする前にアマーリアがフラムの肩を掴んだ。
「それは駄目だ」
流石はアマーリア、年長者としてフラムにこの家のしきたりを教えてやるつもりみたいだ。
「今はテツヤに断られているがいずれ篭絡…じゃなくて説得するから、それまでは我慢してくれ」
なんか物騒なこと言ってるんですけど。
ま、まあ、とりあえず分かってもらえたみたいだし、良いってことにしておこうかな…
「テツヤ、まだ話は終わってないぞ」
今度は俺の肩を掴んできた。
心なしかその手に力がこもっているような。
そして俺を抱き寄せると髪の匂いを嗅ぎだした。
「ふう~ん、なんでテツヤとフラムから同じ温泉の匂いがするんだろうなあ?」
こ、こいつ犬か?つーか温泉の匂いなんてあるのかよ?
「私を舐めてもらっては困る。さあ白状するのだ!いつ、どこの温泉に行ったのだ!」
やべえ、目がマジだ。
「オニ族の隠れ湯だと!なんで私を誘ってくれなかったんだ!!」
やめてください、そんなに肩をゆすられては頭が首から外れてしまいます。
「オニ族の隠れ湯と言えば龍人族の中でも名湯と評判なのだぞ!コネがなくては入れない秘湯中の秘湯と呼ばれているのだ!」
そ、そんなに。
「今からでも遅くない!テツヤ、一緒に入りに行くぞ!」
いやいや、流石にそれはまずいだろ!
て言うかなぜ一緒に?
「ほほう、フラムとは一緒に入れて私とは入れないと?」
「だからあれはアクシデントなんだって!」
「テツヤと私は家族みたいなもの、だから一緒に入るのは当然のこと」
「フラムが家族なら私も家族だ、いや、この屋敷の皆が家族のようなもののはずだ!」
「そうだよ!キリとテツヤは家族だよ!」
「わ、私もそれはやぶさかではないぞ、うん」
やめてくれ、話をややこしくしないでくれ。
◆
「魔獣討伐?」
「ああ、先ほどリンネ姫に要請されてな。さっそく明日にでも取り掛かってもらいたいらしい」
すったもんだの挙句ようやくロビーで落ち着くことができた俺にアマーリアがそう告げてきた。
「ワンドがカドモイン領に放った魔獣がまだ残っているのでその討伐に軍を派遣するらしい。我々にも協力するように要請が来たのだ」
俺の脳裏に森の中でリュースと一緒に出くわしたオーガウルフの姿が蘇った。
あんなのが自由に歩き回っていたらどんな被害が出るか分かったものじゃない。
「どうする?」
「決まってる。さっそく明日から出かけよう!」
「テツヤならそう言うと思っていたよ」
満足そうにアマーリアが頷いた。
◆
「うーん、ちょっと食べ過ぎたか…」
その夜はフラムの歓迎会ということでかなりのご馳走を食べたせいか夜中に喉が渇いて目を覚ました。
台所に降りていくと庭に人影が見えた。
不思議に思って外に出るとそれはフラムだった。
「どうした?眠れないのか?」
俺が近づくとフラムは振り返り、首を横に振った。
「夜哨をしてるだけ」
そんなことしなくていいのに、と言おうとして口をつぐんだ。
おそらくフラムはそういう世界で生きてきたのだろう。
それに住まわせてもらう以上何かをしたいという気持ちがあるのかもしれない。
だったらその気持ちは尊重しなくては。
「それなら俺も付き合うよ」
「いい、これは私の仕事」
「まあまあ、今日は月がきれいだしさ。なんか見ていたい気分なんだよ。ほら、フラムも座んなって」
俺は庭のベンチに腰掛け、座面をポンポンと叩いた。
「…じゃあちょっとだけ」
フラムが不承不承と言った感じで座ってきた。
「良い月だよな」
「うん」
俺たちは並んで月を見ていた。
月明かりが庭に青い光を落としている。
「…こんな風に月を見たのは初めてかもしれない」
フラムがポツリとこぼした。
「フラムはこれからもっともっと色んなものを見られるさ」
俺はフラムの肩を抱いた。
「この世界には素晴らしいもの、美しいものがたくさんある。これからそれをみんなで見ていきたいんだ。もちろんフラムも一緒だ」
「うん」
フラムが俺の肩に頭を預けてきた。
「不思議なんだよな。月や太陽は俺が飛ばされた地球とあまり変わらないんだ。星の並びは全然違う…」
気付けばフラムは静かな寝息を立てていた。
「おやすみ、フラム。ここが今日からフラムの家になるんだ」
俺はフラムを抱きあげ、屋敷の中へと戻っていった。
俺が屋敷に戻るとロビーにフラムがいた。
「ええ?な、なんでフラムがここに?…さっきまで…」
露天風呂にいたんじゃ、という言葉を慌てて飲み込む。
フラムと一緒にアマーリアとソラノもいたからだ。
これ以上話をこじらすわけにはいかない。
しかし俺より後に出たはずなのになんで俺より前に着いているんだ?
忍者か?忍者なのか?
「今日から私もここに住む」
唐突にフラムがそう宣言してきた。
「す、住むって…急に言われても…みんなはそれでいいのか?」
「私は別に構わないぞ。部屋も一部屋余ってるしな」
「私も異論はない。フラムには世話になったし」
「私も!賑やかな方が楽しい!」
アマーリアとソラノ、キリも特に問題ないみたいだ。
「それなら俺も問題なしだ。むしろ歓迎するよ。これからよろしくな」
こうしてフラムは屋敷の一員となった。
自分で言うのもなんだけどあっさり決まったな。
「じゃあフラムにはキリの左隣の部屋に住んでもらおうかな」
ちなみにキリの部屋の右隣はリンネ姫が来た時に泊まるのに使うと言って聞かなかったので予約済みになっているからこれで二階の部屋は全て埋まったことになる。
「じゃあそういうことなんで後はゆっくりしてくれよな」
そう言って部屋に入ろうとしたがフラムが後について入ろうとしてきた。
「あの…」
あなたの部屋はそちらですよ、と言おうとする前にアマーリアがフラムの肩を掴んだ。
「それは駄目だ」
流石はアマーリア、年長者としてフラムにこの家のしきたりを教えてやるつもりみたいだ。
「今はテツヤに断られているがいずれ篭絡…じゃなくて説得するから、それまでは我慢してくれ」
なんか物騒なこと言ってるんですけど。
ま、まあ、とりあえず分かってもらえたみたいだし、良いってことにしておこうかな…
「テツヤ、まだ話は終わってないぞ」
今度は俺の肩を掴んできた。
心なしかその手に力がこもっているような。
そして俺を抱き寄せると髪の匂いを嗅ぎだした。
「ふう~ん、なんでテツヤとフラムから同じ温泉の匂いがするんだろうなあ?」
こ、こいつ犬か?つーか温泉の匂いなんてあるのかよ?
「私を舐めてもらっては困る。さあ白状するのだ!いつ、どこの温泉に行ったのだ!」
やべえ、目がマジだ。
「オニ族の隠れ湯だと!なんで私を誘ってくれなかったんだ!!」
やめてください、そんなに肩をゆすられては頭が首から外れてしまいます。
「オニ族の隠れ湯と言えば龍人族の中でも名湯と評判なのだぞ!コネがなくては入れない秘湯中の秘湯と呼ばれているのだ!」
そ、そんなに。
「今からでも遅くない!テツヤ、一緒に入りに行くぞ!」
いやいや、流石にそれはまずいだろ!
て言うかなぜ一緒に?
「ほほう、フラムとは一緒に入れて私とは入れないと?」
「だからあれはアクシデントなんだって!」
「テツヤと私は家族みたいなもの、だから一緒に入るのは当然のこと」
「フラムが家族なら私も家族だ、いや、この屋敷の皆が家族のようなもののはずだ!」
「そうだよ!キリとテツヤは家族だよ!」
「わ、私もそれはやぶさかではないぞ、うん」
やめてくれ、話をややこしくしないでくれ。
◆
「魔獣討伐?」
「ああ、先ほどリンネ姫に要請されてな。さっそく明日にでも取り掛かってもらいたいらしい」
すったもんだの挙句ようやくロビーで落ち着くことができた俺にアマーリアがそう告げてきた。
「ワンドがカドモイン領に放った魔獣がまだ残っているのでその討伐に軍を派遣するらしい。我々にも協力するように要請が来たのだ」
俺の脳裏に森の中でリュースと一緒に出くわしたオーガウルフの姿が蘇った。
あんなのが自由に歩き回っていたらどんな被害が出るか分かったものじゃない。
「どうする?」
「決まってる。さっそく明日から出かけよう!」
「テツヤならそう言うと思っていたよ」
満足そうにアマーリアが頷いた。
◆
「うーん、ちょっと食べ過ぎたか…」
その夜はフラムの歓迎会ということでかなりのご馳走を食べたせいか夜中に喉が渇いて目を覚ました。
台所に降りていくと庭に人影が見えた。
不思議に思って外に出るとそれはフラムだった。
「どうした?眠れないのか?」
俺が近づくとフラムは振り返り、首を横に振った。
「夜哨をしてるだけ」
そんなことしなくていいのに、と言おうとして口をつぐんだ。
おそらくフラムはそういう世界で生きてきたのだろう。
それに住まわせてもらう以上何かをしたいという気持ちがあるのかもしれない。
だったらその気持ちは尊重しなくては。
「それなら俺も付き合うよ」
「いい、これは私の仕事」
「まあまあ、今日は月がきれいだしさ。なんか見ていたい気分なんだよ。ほら、フラムも座んなって」
俺は庭のベンチに腰掛け、座面をポンポンと叩いた。
「…じゃあちょっとだけ」
フラムが不承不承と言った感じで座ってきた。
「良い月だよな」
「うん」
俺たちは並んで月を見ていた。
月明かりが庭に青い光を落としている。
「…こんな風に月を見たのは初めてかもしれない」
フラムがポツリとこぼした。
「フラムはこれからもっともっと色んなものを見られるさ」
俺はフラムの肩を抱いた。
「この世界には素晴らしいもの、美しいものがたくさんある。これからそれをみんなで見ていきたいんだ。もちろんフラムも一緒だ」
「うん」
フラムが俺の肩に頭を預けてきた。
「不思議なんだよな。月や太陽は俺が飛ばされた地球とあまり変わらないんだ。星の並びは全然違う…」
気付けばフラムは静かな寝息を立てていた。
「おやすみ、フラム。ここが今日からフラムの家になるんだ」
俺はフラムを抱きあげ、屋敷の中へと戻っていった。
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