外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
第二部最終話.それから
フィルド国王が厳かに口を開いた。
「カドモインとランメルスを操りしワンドの暗躍を見事に防いだ此度の活躍は真に見事であった」
「もったいないお言葉です」
あれから一週間後、俺たちはワンドの件で国王の前へと招聘された。
「これほどの活躍をしたお主にはそれなりの褒美を与えねばなるまい。じゃがその前にちと問題があってな」
国王が顎髭を捻った。
「それというのもカドモイン領のことじゃ。あれほどの領土を治めるものがいなくなってしまい我としても困っておる。流石に全てを王領地としては他領主への覚えも悪いでのう」
待て、何か嫌な予感がするぞ。
「ということでテツヤよ、お主がカドモイン領の新たな領主にならぬか?」
「ははあっ!全力でお断りします!」
「こ、こら!テツヤ!国王陛下の前で無礼だぞ!」
隣にいたソラノが冷や汗を流しながらたしなめてきた。
「ハハハ、よいよい。そう言うと思うておったわ」
冗談だったのか。
はっきり言ってさっきはマジで断ってたぞ。
流石に王国二番目の領土を預けられるのは荷が重すぎる。
「実のところカドモイン領は幾つかに分割して我と各領主とで預かると既に決まっておるのだ」
そこでゴルド王が俺を見据えた。
「その領主の中にはテツヤ、お主も入っておるぞ。大した広さではないがこればかりは受け取ってもらう。でなければ国王としての沽券にかかわるからのう」
「わかりました。謹んで拝命いたします」
俺は素直にそれを受け入れた。
ゴルド王としても褒美を与えない、断られたとあっては王の名に響くし、ここで断ってはかえって失礼にあたるというものだ。
「よろしい」
ゴルド王が満足げに頷いた。
「しばらくは王都に留まり、存分に骨を休めるがよい」
◆
「やれやれ、とんだことになったな」
「浮かない顔をしておるではないか」
王城のベランダで一人黄昏れていると傍らにリンネ姫がやってきた。
今夜はワンド討伐を祝宴するためのパーティーが開かれているのだ。
当然俺たちも参加している。
今日のリンネ姫の装いは金糸銀糸で複雑な刺しゅうを施した純白のドレスだ。
ぱっと見近寄りがたいほど高貴な佇まいだけどその眼には茶目っ気のある光が輝いていることを俺は知っている。
「そりゃ浮かなくもなるさ」
俺はため息をついた。
「トロブの領主になって半年も経ってないのに今度はカドモイン領の一部まで引き受けるんだぞ。俺に扱えるのかね」
「なんだ、そんなことを悩んでいたのか」
リンネ姫がおかしそうに笑った。
「国を救った英雄にしてはずいぶんと地に足をついたことに悩んでおるな」
「そうは言うけどさ…」
「安心するがいい」
リンネ姫が手すりにかけていた俺の手にそっと手を乗せた。
小さくてまるで大理石で出来てるみたいに真っ白な手だ。
「お主なら上手くやれるさ。いや、これはちょっと違うな。お主がそのままのお主でいるならきっと上手く回ってくれるさ」
「??それってどういう?」
「お主自身がリュースに言っていたではないか」
リンネ姫が呆れるようにため息をついた。
「その人の行動で周りも変わっていくと。いいか、お主の周りには多くの人が集まっている、それはお主が有能だからでも強いからでもない」
そう言ってリンネ姫は俺の手を握った。
「お主がそういう行動をとったからだ。だからみんなお主の側にいるのだ。この私も含めてな」
「そう…いうものかな」
「そうだとも。だから安心しておけ。お主が人のことを思って行動している限り周りもそうなっていくのだから」
リンネ姫が笑いかけてきた。
夜だというのにそこだけ日が昇ったような笑顔だ。
「少なくとも私はそう信じているぞ」
見下ろしたその髪に以前あげたかんざしが煌めいているのに気付いた。
「それ、まだ持ってたんだ」
あの後、ワンドの亡骸から回収したのをリンネ姫に頼まれて再びかんざしに変えていたのだった。
「当然だ。お主からもらった初めてのプレゼントだからな」
リンネ姫はあの時のことを思い出しているのか眼下の城下町を眺めて軽く息をついた。
「あのリュースとやらは今頃何をしているのだろうな」
あの後リュースは俺たちに別れを告げて立ち去り、それ以来全く連絡がない。
「ま、あいつだったら大丈夫だろ。きっと元気に暴れまわっているさ」
「あまり暴れられても困るのだがな」
リンネ姫が苦笑した。
「それよりもテツヤ、お主はもっと大きくなる、いや、大きくなってもらわねば困るぞ」
「えぇ~、俺としては今のままでも手一杯なんだけどな」
「駄目だ、お主は達成した業績に相応しい地位を手に入れてもらわねば私に釣り合わんではないか」
え、それって……
「当然、私の婿になってもらうためだ。そのためには今の一領主ではまだ足りんからな。せめて爵位は取ってもらわねばなるまい」
いやいやいや、いきなりそんなこと言われても!
「なんじゃ、嫌なのか。王家の女の裸は夫となるもの以外には見せぬ決まりになっている。ならばお主を私の婿にするしかあるまい」
いや、別に嫌という訳じゃないんだけど、急に言われてもリアクションも困ると言うかなんと言うか。
しどろもどろになる俺を見てリンネ姫が吹き出した。
「冗談だ、あまり真剣に受け止めるな」
「なんだよ、冗談かよ。あまりびっくりさせないでくれよな。こういうことには慣れてないんだからさ」
「お主は存外初心よな。しかしな……」
リンネ姫が俺の顎を軽くつまんで自分の方へ向けさせたと思うと、バラの花びらのような唇が俺の唇に重なってきた。
柔らかな感触は、それを認識した瞬間に離れていった。
「こ、こ、こ、これは……?」
「さっきの言葉は冗談だがこれは冗談ではないぞ」
呆気にとられる俺に少しはにかみながらリンネ姫が微笑んだ。
「いいかテツヤ、お主は望むと望まぬに関わらずもっと大きくなる。それだけの器を持っているからな。だが私はもっと成長してみせよう。お主の方からプロポーズをしてくるほどにな」
そう言って俺の唇に人差し指をあてた
「だからこれは予約だ。楽しみに待っているぞ」
頬を薄く朱に染め、火花が散っているように瞳を輝かせて俺を見上げている。
俺はリンネ姫の頬に手を当てた。
リンネ姫がその手に頬をすり寄せてくる。
「リンネ、これだけは約束するよ。リンネが王位につかないとしても俺が仕えるのはリンネただ一人だ」
「馬鹿者、私はお主に仕えてほしいのではない。私の隣にいてほしいのだ」
すねたように頬を膨らませ、リンネ姫が俺の腕を取った。
「だが今はそれで勘弁してやろう。さあパーティーに戻るぞ。今夜はたっぷりダンスの相手をしてもらうからな」
俺たちは手を取り合って歓声がさざ波のように満ちるパーティールームへと戻っていった。
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