外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
34.カドモイン領へ、のその前に
「う、うう…頭が……」
しかしソラノとアマーリアは青い顔をしている。
「昨日あんなに飲むからだぞ」
「や、やめてくれ、その話は思い出したくない…」
アマーリアが体を震わせた。
「あ、あの人はなんなのだ。この私が飲み比べて太刀打ちできないとは…あれが魔女の力なのか…」
昨日の夜、俺たちが帰るといつものごとく飲み比べが始まっていたのだけど、結果は意外にもカーリンの圧勝だったのだ。
というかどんなに飲んでも顔色一つ変えていなかった。
昨晩はトロブの町の一年分の酒が消えたという話だったけど、あの人が一番化け物なんじゃないだろうか。
「まったくしようのない奴らじゃな。さっさと己に治癒魔法をかけんか。私はやらないからな。魔力がもったいない」
リンネ姫が呆れたようにため息をついた。
うん、その意見には同意だ。
「それよりも、だ」
そのリンネ姫が急にこっちを向いてきた。
しかも獲物を見つけた猫のような眼をしている。
「な、なんだよ」
「お主、昨晩はフラムと一緒にどこぞへ出かけてしばらく戻ってこなかったようではないか。どこに行っておったのだ?ん、申してみよ」
ピシッ、と空気が張り詰めた気がするが気のせいだよな。
「ばばば、馬鹿言ってんじゃねえよ、あ、あれはだな」
突然の追及に舌が上手く回ってくれない。
まずい、なんとか穏便に説明しなくては。
「別に大したことない」
フラムが助け舟を出してくれた。
うん、こういう時は感情の起伏がないフラムの言葉が助けになってくれそうだ。
「私の身体をテツヤに捧げてきただけ」
フフフ、フラムさん?なにを仰っているんですか?
ヒュウ~、と騎士団の数名が口笛を鳴らしている。
「テツヤさあん?」
やべえ、アマーリアとソラノの眼が完全に据わっている。
まだ戦いじゃないのになんで武器を握りしめてるんですか?
「ち、違う!俺の話を聞いてくれ!あれはただの儀式、フラムの儀式の立会人になっただけなんだ、そうだろフラム?みんなにも説明してやってくれよ」
「そう」
俺の必死の嘆願にフラムが頷いた。
「私とテツヤで大人になる儀式をしてきただけ」
「ち~~~が~~~う~~~!!!!」
◆
「さて、そろそろ出発するか」
すったもんだの騒動の後でようやく俺たちは出発の準備ができた。
いや、リンネ姫の一言が無かったらもっと早く出られたと思うんだけど。
ともあれアマーリアとソラノの体調も戻ったみたいだ。
「本当にいいのか、俺が行かなくてもよ」
「ああ、グランには俺がいない間のトロブを守っていてほしいんだ」
尋ねてきたグランに俺は頷いた。
今回のリンネ姫のカドモイン辺境伯訪問に同行するのは俺とアマーリアとソラノ、それに王立騎士隊のメンバー、それにグランの部隊から借りた十名ほどの戦士だけで行く予定だ。
今回の訪問はどうなるのか全く予想がつかない。
全てがカドモイン、あるいはリュースの企みという可能性だってある。
だからトロブにも守りを残しておかなくちゃいけないのだ。
「グラン、一つ頼みがあるんだ」
「なんだよ、改まって」
「俺はトロブの領主を辞める。代わりにグランを領主に任命したい」
俺の言葉にグランが片方の眉を吊り上げた。
「ずいぶんと急なことを言うじゃねえか」
「カドモインの所に行って何が起こるのか俺にもわからないんだ。もちろん俺は全力でリンネ姫を守るつもりだ。それでも万が一があった時にトロブのことは守りたい」
俺は周囲を見渡した。
「みんなも聞いてくれ!ここから先、俺は俺個人の意思でカドモイン領へ行く!リンネ姫に命令されたからでも、トロブの領主としてでもない、これは俺自身で決めたことだ!」
「ふん、何かあった時にトロブの責任にはしねえ、そういう腹積もりかよ」
グランが肩をすくめた。
「わかったよ。トロブは預かっておいてやる。だがわかってんだろうな、これはあくまで一時的だ。必ず帰ってきやがれ。俺は領主なんて面倒ごとはごめんだからな」
そう言って拳で俺の胸を突いた。
「ああ、わかってるさ」
「ふん、ずいぶんと殊勝なことを言うではないか」
リンネ姫が俺の前にやってきた。
「だがその覚悟はしかと受け取った。私の命はテツヤ、お主に預けたぞ」
「ああ、約束する、リンネだけは絶対に生かして帰す。だからこれを持っていてくれないか」
俺はそう言ってリンネ姫に一本のかんざしを渡した。
俺が作り上げた宝石で出来たバラの花をあしらった純金のかんざしだ。
「これがあれば俺はリンネ姫の位置を追える。それにカーリンさんに抗魔術式を施してもらったから何かあった時の助けになってくれるはずだ」
「ふふ、貴様らしくもないことを。しかしありがたく受け取らせてもらおう。テツヤ、お主が差してくれぬか?」
そう言ってリンネ姫が後ろを向いた。
雪花石膏でできているような真っ白く細いうなじと金色の後れ毛を無防備に俺に預けている。
俺は生唾を飲み込むのをなんとか堪えて、その細く艶やかな髪にかんざしを差した。
「貴様の贈り物、確かに受け取った。しかし生きて帰るのは私だけではない、全員で帰るのだ」
リンネ姫が俺に向き直って微笑んできた。
俺が頷くとリンネ姫も頷き、そして声を張り上げた。
「よし、出発するぞ!」
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