外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
29.逃げる女と追う男
リュースは空を飛んでいた。
テツヤは楽しい遊び相手だけど殺さなくてはいけない。
それがカドモインの命令だ。
リュースはカドモインの命令には逆らえない。
それでもテツヤとはもっと遊びたい。
今回は無理だったけど、次はもっと上手くやろう。
もっと本気でテツヤと遊んで、殺すのはそれからでもいい。
そんなことを考えながら飛んでいると突然体に電撃を浴びたような衝撃が走った。
「ぐはっ!」
一瞬で体から魔力が失われ、地上へ向かって落下していく。
普通の人間なら衝撃でバラバラになる高度だ。
いや、実際リュースの体もばらばらになった。
しかしリュースはこの程度では死なない。
あり得ない方向にねじ曲がった体はやがて元に戻り、リュースはゆっくりと体を起こした。
「あちゃー、魔力障壁だよ。なんなのよこれ、これじゃ魔法が使えないじゃん。なんで急にこんなのを作ったのよ」
何もない空間に手を伸ばしてぶつぶつ文句を言っている。
リュースは今、魔法が全く使えなくなる魔導的空白地帯にいた。
その体に宿す不死性は今も有効ではあるものの、得意とする召喚術は一切使えない。
今やリュースは死なないだけの一般人だった。
「参ったな~。歩いていくしかないってわけ?」
ぼやきながら足を踏み出す。
その足が急に止まった。
リュースの顔を冷や汗が伝う。
「うーん、これはちょびっとヤバイかも……」
その声に若干の焦りが滲んでいる。
その目の前に真っ黒な山がそびえていた。
いや、山ではない。それは巨大な一頭の獣だった。
オーガウルフ、象ほどもある巨体で下半身は狼のような剛毛に覆われており、上半身は毛が抜け落ち、筋肉質な灰色の肌がむき出しになっている。
鼻は平たくひしゃげて口からは上下のまっ黄色な牙がむき出しになっている。
辺りを獣臭が包み、聞こえるのはオーガウルフの荒い呼吸音だけだ。
森に棲むモンスターですらオーガウルフにとっては腹を満たす獲物でしかなく、時にはレッサーベヒモスを狩ることもあると言われている。
その頭の割に異様に小さな眼が品定めをするようにリュースをねめつけている。
「逃がしては……くれない、よね?」
ひきつった笑いを浮かべながらリュースはそろそろと後ずさったがオーガウルフは距離を保ちながら少しずつ近づいてくる。
気が付けばリュースは大木を背中に追い詰められていた。
ごああああっ!!!
獰猛な唸り声と共にオーガウルフが飛び掛かる。
「くぅっ!」
リュースが観念して目をつぶった時、オーガウルフの首元に巨大な影が突き刺さった。
オーガウルフを突き飛ばしたその影は反動で宙に舞い、そのまま滑るようにリュースの近くに着地した。
「こんな所に居やがったのか!」
それはテツヤだった。
◆
「テツヤ!?」
リュースが驚きの声をあげた。
「なんなんだよ、こいつは?こいつもお前の仕業なのか!?」
俺はリュースに掴みかかると今さっき蹴り飛ばしたモンスターを指差した。
初めて見るモンスターだ。
「あれはねえ、オーガウルフだよ」
「オ、オーガウルフだあ?なんでそんなのがフィルド王国にいるんだよ!?」
オーガウルフと言えば魔界ことワールフィアの奥地にしか住んでいない魔獣のはずだ。
こんな奴がフィルド王国に現れたとなったら軍隊を率いて討伐しに行かなくちゃならないはずだ。
なんでこんなに魔獣がここに?
「そんなことよりもさあ、あれまだ生きてるよ?」
リュースの言葉に振り返ると確かにオーガウルフが頭を振りながら起き上がるところだった。
高高度から全力で突っ込んでいったのに恐ろしくタフな奴だ。
今やオーガウルフは怒りに目をぎらつかせて俺を睨んでいた。
巨大な牙のせいで閉じ切らない口から涎がぼたぼたと落ちている。
どうやら奴のヘイトをたっぷり集めてしまったらしい。
オーガウルフが凶悪な唸り声と共に俺に向かって飛び掛かってきた。
「ついでに言っておくとねえ、今ここは魔法が使えないよ」
リュースが何かを言った気がしたけどオーガウルフに集中していたせいで上手く聞き取れなかった。
魔法がどうこう言っていたような。
考える間もなく俺は地面から巨大な錐を生み出した。
飛び掛かってきたオーガウルフが自重でその錐に串刺しになる。
耳をつんざく悲鳴を上げながらオーガウルフは絶命した。
「魔法がなんだって?」
俺の問いにリュースがひきつった笑みを浮かべていた。
こういうリアクションをしていると普通の女の子と変わらないんだけどな。
テツヤは楽しい遊び相手だけど殺さなくてはいけない。
それがカドモインの命令だ。
リュースはカドモインの命令には逆らえない。
それでもテツヤとはもっと遊びたい。
今回は無理だったけど、次はもっと上手くやろう。
もっと本気でテツヤと遊んで、殺すのはそれからでもいい。
そんなことを考えながら飛んでいると突然体に電撃を浴びたような衝撃が走った。
「ぐはっ!」
一瞬で体から魔力が失われ、地上へ向かって落下していく。
普通の人間なら衝撃でバラバラになる高度だ。
いや、実際リュースの体もばらばらになった。
しかしリュースはこの程度では死なない。
あり得ない方向にねじ曲がった体はやがて元に戻り、リュースはゆっくりと体を起こした。
「あちゃー、魔力障壁だよ。なんなのよこれ、これじゃ魔法が使えないじゃん。なんで急にこんなのを作ったのよ」
何もない空間に手を伸ばしてぶつぶつ文句を言っている。
リュースは今、魔法が全く使えなくなる魔導的空白地帯にいた。
その体に宿す不死性は今も有効ではあるものの、得意とする召喚術は一切使えない。
今やリュースは死なないだけの一般人だった。
「参ったな~。歩いていくしかないってわけ?」
ぼやきながら足を踏み出す。
その足が急に止まった。
リュースの顔を冷や汗が伝う。
「うーん、これはちょびっとヤバイかも……」
その声に若干の焦りが滲んでいる。
その目の前に真っ黒な山がそびえていた。
いや、山ではない。それは巨大な一頭の獣だった。
オーガウルフ、象ほどもある巨体で下半身は狼のような剛毛に覆われており、上半身は毛が抜け落ち、筋肉質な灰色の肌がむき出しになっている。
鼻は平たくひしゃげて口からは上下のまっ黄色な牙がむき出しになっている。
辺りを獣臭が包み、聞こえるのはオーガウルフの荒い呼吸音だけだ。
森に棲むモンスターですらオーガウルフにとっては腹を満たす獲物でしかなく、時にはレッサーベヒモスを狩ることもあると言われている。
その頭の割に異様に小さな眼が品定めをするようにリュースをねめつけている。
「逃がしては……くれない、よね?」
ひきつった笑いを浮かべながらリュースはそろそろと後ずさったがオーガウルフは距離を保ちながら少しずつ近づいてくる。
気が付けばリュースは大木を背中に追い詰められていた。
ごああああっ!!!
獰猛な唸り声と共にオーガウルフが飛び掛かる。
「くぅっ!」
リュースが観念して目をつぶった時、オーガウルフの首元に巨大な影が突き刺さった。
オーガウルフを突き飛ばしたその影は反動で宙に舞い、そのまま滑るようにリュースの近くに着地した。
「こんな所に居やがったのか!」
それはテツヤだった。
◆
「テツヤ!?」
リュースが驚きの声をあげた。
「なんなんだよ、こいつは?こいつもお前の仕業なのか!?」
俺はリュースに掴みかかると今さっき蹴り飛ばしたモンスターを指差した。
初めて見るモンスターだ。
「あれはねえ、オーガウルフだよ」
「オ、オーガウルフだあ?なんでそんなのがフィルド王国にいるんだよ!?」
オーガウルフと言えば魔界ことワールフィアの奥地にしか住んでいない魔獣のはずだ。
こんな奴がフィルド王国に現れたとなったら軍隊を率いて討伐しに行かなくちゃならないはずだ。
なんでこんなに魔獣がここに?
「そんなことよりもさあ、あれまだ生きてるよ?」
リュースの言葉に振り返ると確かにオーガウルフが頭を振りながら起き上がるところだった。
高高度から全力で突っ込んでいったのに恐ろしくタフな奴だ。
今やオーガウルフは怒りに目をぎらつかせて俺を睨んでいた。
巨大な牙のせいで閉じ切らない口から涎がぼたぼたと落ちている。
どうやら奴のヘイトをたっぷり集めてしまったらしい。
オーガウルフが凶悪な唸り声と共に俺に向かって飛び掛かってきた。
「ついでに言っておくとねえ、今ここは魔法が使えないよ」
リュースが何かを言った気がしたけどオーガウルフに集中していたせいで上手く聞き取れなかった。
魔法がどうこう言っていたような。
考える間もなく俺は地面から巨大な錐を生み出した。
飛び掛かってきたオーガウルフが自重でその錐に串刺しになる。
耳をつんざく悲鳴を上げながらオーガウルフは絶命した。
「魔法がなんだって?」
俺の問いにリュースがひきつった笑みを浮かべていた。
こういうリアクションをしていると普通の女の子と変わらないんだけどな。
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