外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
21.営業も領主の仕事
「うーん、やっぱりゴルドは良いな!」
ソラノが喜びの声をあげた。
そう、俺たちは今ゴルドに戻っていた。
理由はトロブの新たな特産品にしようとしているバニラエッセンスの売り込みのためだ。
同時にリンネ姫への中間報告も兼ねている。
今回はソラノとキリを連れての帰還で、アマーリアは留守番をしている。
じゃんけんの激闘の末に決定したのだけど最後までアマーリアは悔しがっていた。
何かお土産を買って行かないと絶対に機嫌を直さないだろうな…。
「じゃあまずはリンネ姫の所に報告に行くぞ」
「そんなあ~、【子猫とクリーム亭】のパフェを楽しみにしてたのに」
「後で幾らでも食べられるって」
ぶうぶう文句を言うソラノを引っ張るようにして俺たちは王城へ向かった。
◆
「なるほど、カドモインの兵士がの」
顎を摘まみながらリンネ姫は俺の報告を聞いていた。
「ああ、どうやらトロブはかなり前からカドモインや周辺諸侯から搾取されているみたいだ」
「その辺の事情はまあ分かっておったことよ。それもテツヤが赴任することで収まるだろう。それよりもランメルスとの関係はなにかわかったのか?」
「…う、そ、それはまだ…なにせ嵐だなんだで忙しかったもんで…」
「…まあよい、すぐにわかるとも思っておらんしな」
歯切れの悪い俺にリンネ姫は軽くため息をついた。
「それよりもゴルドに急に戻ってきたのがその件でないとするなら他に何かあるのであろう?」
「ああ、実は今回はそっちが本題なんだ」
リンネ姫の指摘に俺はにやりと笑った。
「リンネは【子猫とクリーム亭】というお店を知ってるか?最近パフェというメニューを売り出して人気なんだけど」
「知らんでか!毎週通っておるわ!実は今日も行く予定なのだ。あのパフェという物を知ってしまってはもう他の菓子は食えんぞ」
「毎週…良いな~」
それを聞いてソラノが羨ましそうにしている。
「ちょうど良かった、俺たちも一緒についていっていいかな?実はリンネに知らせたいことには【子猫とクリーム亭】も関わっているんだ」
「それは別に構わんが…一体何なのだ?」
「それはお店でのお楽しみだ」
俺はリンネ姫にウインクした。
◆
「これはこれはリンネ姫殿下、お待ちしておりました。…あれ、テツヤさんもご一緒で?それにソラノ様も」
「なんじゃ、お主ら知り合いだったのか」
俺たちが閉店後の【子猫とクリーム亭】へとやってくると店主のコグランは驚いたような顔をした。
なんでもリンネ姫が来るとそれを見ようと凄い人だかりができてしまうためにこうしてお忍びで来ているらしい。
「もちろんでございます。というか当店の名物パフェはテツヤさんに教えてもらったのですよ。おかげで当店の人気はうなぎのぼりです」
「お主、色んなことをやっておるのじゃな。というかなぜ今まで黙っていたのだ」
リンネ姫がじろりとこっちを睨んだ。
いや、こっちこそリンネ姫がこのお店の常連だったなんて初耳なんですけど。
「まあよい、とりあえず食べるとしよう」
リンネ姫はそう言って店主の引いた椅子に腰かけた。
「その前に今日はみんなで厨房に入らせてもらっていいかな?ちょっと作ってもらいたいものがあるんだ」
「そ、それは構いませんが…?」
コグランが不思議そうな顔をした。
「アイスクリームとホイップクリームを作る時にこれを入れてほしいんだ。入れるのはほんの少しで良い」
俺は厨房でコグランにバニラエッセンスの瓶を渡した。
「は、はあ」
コグランは訝しむように瓶を受け取るとその蓋を開け……匂いを嗅いだ瞬間にぶっ倒れた。
「コ、コグランさん?」
慌てて駆け寄る俺の腕をコグランががしっと掴んだ。
「テ、テツヤさん、これをどこで?」
「どこって…うちの領内でだけど?」
「お願いします!金額を言ってください!言い値で買います!」
「い、いや…まずは使ってからの方がいいんじゃ?」
「使わなくてもわかります!これこそ、これこそ私がクリームに求めていた最後のピース、香りそのものです!これがあれば私の理想のクリームが完成します!」
「まあ待て、交渉する時間はまだたっぷりある。まずは作ってくれぬか?」
そこへリンネ姫が仲裁に入ってきた。
「我々はお主の作る菓子を食べに来たのであるからな」
「はっ、申し訳ありません!ついつい我を忘れてしまいました」
「よいよい、お主がそれほど取り乱すものがどれほどなのか楽しみになったわ」
リンネ姫が愉快そうに笑った。
「…これは、今まで食べてきたパフェとは全くの別物じゃな」
バニラエッセンスを入れたパフェを食べてリンネ姫が驚きの声をあげた。
「香りだけでここまで味が変わるとは」
「別物どころではありません!これは菓子の革命です!」
コグランが熱弁を振るっている。
「今までの菓子に欠けていたのが香りなのです!確かにミルクの香りや小麦とバターの焼ける香りなどはありましたが、どれも決定的な香りとはなり得ませんでした。この香りこそがその欠けたピースを埋めるものなのです!」
俺が売り込むよりコグランに任せた方が良さそうだな。
「わかったわかった。しかし我を誘ったということは単にこのバニラエッセンスを店主に売り込むためではないのであろう?」
リンネ姫がスプーンを口に運びながら俺の方を向いた。
「その通りです。俺はこのバニラエッセンスをトロブ地方の新しい特産物にしようと思ってる。このバニラはトロブ地方でしか育たないらしいし、さっきも言ったように菓子に使えば無限の可能性を秘めている」
俺は言葉を続けた。
「ただ残念なことにトロブ地方にはバニラで利益を出せるくらいの消費地がないし、これを全国に売るだけの流通力がないんだ」
「そこで我の出番ということか」
リンネ姫がにやりと笑った。
「我のベンズ商会を使ってこれを売ろうというのだな」
俺は頷いた。
「ふん、お主もなかなか賢しいことを考えるではないか。だがまあいい、これにはそうするだけの価値があるしの」
パフェを食べ終わったリンネ姫がスプーンを置いた。
「わかった。このバニラエッセンスの販売はベンズ商会が一手に引き受けよう」
ソラノが喜びの声をあげた。
そう、俺たちは今ゴルドに戻っていた。
理由はトロブの新たな特産品にしようとしているバニラエッセンスの売り込みのためだ。
同時にリンネ姫への中間報告も兼ねている。
今回はソラノとキリを連れての帰還で、アマーリアは留守番をしている。
じゃんけんの激闘の末に決定したのだけど最後までアマーリアは悔しがっていた。
何かお土産を買って行かないと絶対に機嫌を直さないだろうな…。
「じゃあまずはリンネ姫の所に報告に行くぞ」
「そんなあ~、【子猫とクリーム亭】のパフェを楽しみにしてたのに」
「後で幾らでも食べられるって」
ぶうぶう文句を言うソラノを引っ張るようにして俺たちは王城へ向かった。
◆
「なるほど、カドモインの兵士がの」
顎を摘まみながらリンネ姫は俺の報告を聞いていた。
「ああ、どうやらトロブはかなり前からカドモインや周辺諸侯から搾取されているみたいだ」
「その辺の事情はまあ分かっておったことよ。それもテツヤが赴任することで収まるだろう。それよりもランメルスとの関係はなにかわかったのか?」
「…う、そ、それはまだ…なにせ嵐だなんだで忙しかったもんで…」
「…まあよい、すぐにわかるとも思っておらんしな」
歯切れの悪い俺にリンネ姫は軽くため息をついた。
「それよりもゴルドに急に戻ってきたのがその件でないとするなら他に何かあるのであろう?」
「ああ、実は今回はそっちが本題なんだ」
リンネ姫の指摘に俺はにやりと笑った。
「リンネは【子猫とクリーム亭】というお店を知ってるか?最近パフェというメニューを売り出して人気なんだけど」
「知らんでか!毎週通っておるわ!実は今日も行く予定なのだ。あのパフェという物を知ってしまってはもう他の菓子は食えんぞ」
「毎週…良いな~」
それを聞いてソラノが羨ましそうにしている。
「ちょうど良かった、俺たちも一緒についていっていいかな?実はリンネに知らせたいことには【子猫とクリーム亭】も関わっているんだ」
「それは別に構わんが…一体何なのだ?」
「それはお店でのお楽しみだ」
俺はリンネ姫にウインクした。
◆
「これはこれはリンネ姫殿下、お待ちしておりました。…あれ、テツヤさんもご一緒で?それにソラノ様も」
「なんじゃ、お主ら知り合いだったのか」
俺たちが閉店後の【子猫とクリーム亭】へとやってくると店主のコグランは驚いたような顔をした。
なんでもリンネ姫が来るとそれを見ようと凄い人だかりができてしまうためにこうしてお忍びで来ているらしい。
「もちろんでございます。というか当店の名物パフェはテツヤさんに教えてもらったのですよ。おかげで当店の人気はうなぎのぼりです」
「お主、色んなことをやっておるのじゃな。というかなぜ今まで黙っていたのだ」
リンネ姫がじろりとこっちを睨んだ。
いや、こっちこそリンネ姫がこのお店の常連だったなんて初耳なんですけど。
「まあよい、とりあえず食べるとしよう」
リンネ姫はそう言って店主の引いた椅子に腰かけた。
「その前に今日はみんなで厨房に入らせてもらっていいかな?ちょっと作ってもらいたいものがあるんだ」
「そ、それは構いませんが…?」
コグランが不思議そうな顔をした。
「アイスクリームとホイップクリームを作る時にこれを入れてほしいんだ。入れるのはほんの少しで良い」
俺は厨房でコグランにバニラエッセンスの瓶を渡した。
「は、はあ」
コグランは訝しむように瓶を受け取るとその蓋を開け……匂いを嗅いだ瞬間にぶっ倒れた。
「コ、コグランさん?」
慌てて駆け寄る俺の腕をコグランががしっと掴んだ。
「テ、テツヤさん、これをどこで?」
「どこって…うちの領内でだけど?」
「お願いします!金額を言ってください!言い値で買います!」
「い、いや…まずは使ってからの方がいいんじゃ?」
「使わなくてもわかります!これこそ、これこそ私がクリームに求めていた最後のピース、香りそのものです!これがあれば私の理想のクリームが完成します!」
「まあ待て、交渉する時間はまだたっぷりある。まずは作ってくれぬか?」
そこへリンネ姫が仲裁に入ってきた。
「我々はお主の作る菓子を食べに来たのであるからな」
「はっ、申し訳ありません!ついつい我を忘れてしまいました」
「よいよい、お主がそれほど取り乱すものがどれほどなのか楽しみになったわ」
リンネ姫が愉快そうに笑った。
「…これは、今まで食べてきたパフェとは全くの別物じゃな」
バニラエッセンスを入れたパフェを食べてリンネ姫が驚きの声をあげた。
「香りだけでここまで味が変わるとは」
「別物どころではありません!これは菓子の革命です!」
コグランが熱弁を振るっている。
「今までの菓子に欠けていたのが香りなのです!確かにミルクの香りや小麦とバターの焼ける香りなどはありましたが、どれも決定的な香りとはなり得ませんでした。この香りこそがその欠けたピースを埋めるものなのです!」
俺が売り込むよりコグランに任せた方が良さそうだな。
「わかったわかった。しかし我を誘ったということは単にこのバニラエッセンスを店主に売り込むためではないのであろう?」
リンネ姫がスプーンを口に運びながら俺の方を向いた。
「その通りです。俺はこのバニラエッセンスをトロブ地方の新しい特産物にしようと思ってる。このバニラはトロブ地方でしか育たないらしいし、さっきも言ったように菓子に使えば無限の可能性を秘めている」
俺は言葉を続けた。
「ただ残念なことにトロブ地方にはバニラで利益を出せるくらいの消費地がないし、これを全国に売るだけの流通力がないんだ」
「そこで我の出番ということか」
リンネ姫がにやりと笑った。
「我のベンズ商会を使ってこれを売ろうというのだな」
俺は頷いた。
「ふん、お主もなかなか賢しいことを考えるではないか。だがまあいい、これにはそうするだけの価値があるしの」
パフェを食べ終わったリンネ姫がスプーンを置いた。
「わかった。このバニラエッセンスの販売はベンズ商会が一手に引き受けよう」
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