外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
17.魔女カーリン
そ、その名前は偶然なのか?
しかし初対面の人からいきなり食べ物を貰って食べるというのも抵抗があるな。
フラムを見ると俺に頷いてきた。
「カーリンは良い人。信用していい」
うーん、お世話になった人にそこまで言われたのなら信用するしかない。
俺は意を決して黒い魔加露を摘まむと口に運んだ。
サクッとした後にネチョッとした食感が続くのまでマカロンそっくりだ。
が……味は恐ろしく不味かった。
チョークと柿渋を混ぜたものに大量の砂糖をぶち込んで無理やり甘味を足した後に水飴で固めた、とでも言ったらいいのだろうか、何とも形容しがたい味だった。
吐きだしそうになるのを無理やり飲み下す。
しかし飲み込んだ瞬間に魔力が回復するのを感じた。
気のせいか足腰の力も戻ってきたみたいだ。
「テツヤさんの回復度は……た、たったの五百分の一?これは凄いですね!人より遥かに魔力量が多い魔族でもこれ一個で魔力を回復できるんですよ!」
カーリンが見魔眼鏡越しに俺を見て驚きの声をあげている。
そうなのか?確かにまだ十分とは言えない感じだけどこれだったら普通に力を使えそうなんだけど。
ともあれ、これだったらカーリンの家を何とかできそうだ。
俺は土砂に埋まったカーリンの家から土砂をどかし、崩れた家を完全に直した。
「ありがとうございます!ほんっとうに助かりました!」
カーリンが涙をぬぐいながら俺にお礼を言ってきた。
「いえいえ、これくらいなんてことないですよ。それよりも細かなものまでは復元しきれなかったけど大丈夫ですか?」
「ええ、ここまで直していただけたら十分です。私はここで魔道の研究をしていますので何かあったらいつでも相談に来てくださいね。良かったら皆さんもこれをどうぞ」
「これはこれは、ご丁寧にどうも」
「美味しそうですね!」
「キリも食べる!」
待った、と止める間もなく三人は魔加露を口に運んでしまった。
「あれ、お口に合わなかったですか?」
悶絶している三人と不思議そうな顔をしているカーリンを前に俺は頭を抱えた。
確かに凄い魔女なのかもしれないけど、どこかずれているのだろうか。
◆
「うう…酷い目に遭った……」
げっそりした顔の三人と共に俺たちはようやくトロブの町へ辿り着いた。
「しかし味はともかくあの魔加露というのは凄いな。完全に魔力が回復したぞ」
アマーリアも感心している。
まだまだ世には知られていない傑物がいるということなのだろうな。
町についてフラムと別れ、俺たちは懐かしの我が家へと戻ってきた。
風呂に入り、食事をした後でベッドに横になると昨日までの疲れが戻ってきたのかすぐに眠り込んでしまった。
目を覚ますと夜中だった。
変な時間に起きてしまったせいか少し小腹が減っている。
何か摘まむものはないかと台所へ行き、パンにジャムを塗って齧っていると誰かが下へ降りてくる気配がした。
振り返るとそれはアマーリアだった。
シンプルな白いワンピースの寝間着を着ている。
薄い生地なのか明かりに照らされて体の線がうっすらと見えるような……
「ね、眠れないのか?」
「いや、物音で目を覚ましたらテツヤが降りていくのが見えたのでな」
生唾を飲み込むのをごまかすように尋ねた俺に答えながらアマーリアは水差しの中からコップに水を注ぐと喉を鳴らして飲んだ。
何故かアマーリアの顎から鎖骨にかけてのラインから目を離せない。
「テツヤも飲むか?」
「あ、ああ」
コップを受け取って俺も水を飲む。
…
……
………
ち、沈黙が気まずい!
「じゃ、じゃあ俺はこれで」
そそくさと部屋に戻ろうとした俺をアマーリアが抱きしめてきた。
アマーリアの柔らかな体が俺を包んでいる。
「ア、アマーリア?」
思わず叫びそうになるのを必死でこらえる。
「あの時、正直私には無理だと思った」
俺の肩に顔を預けながらアマーリアが言った。
その言葉にあの嵐の夜のことが脳裏に浮かんできた。
あれは俺にとっても決死の出来事だった。
「テツヤ、あなたが守ると言ってくれたからできたんだ」
「そんなことはないさ。アマーリアならできると信じていた。俺はそう信じたからアマーリアの手助けをしただけだ」
ううん、とアマーリアは頭を振った。
「あの時、テツヤと一つになれた気がした。だからなんでもできると、テツヤと一緒ならどんなことでもできると思えた。だからできた」
「アマー……」
なにか言葉をかけようとした俺の口がアマーリアの唇で塞がれた。
ランメルスと戦った後とは違う、優しく温かな口づけだった。
俺たちは月明かりが照らす部屋の中で抱き合い口づけを交わし合った。
やがて名残を惜しむようにゆっくりとアマーリアの唇が離れていった。
「テツヤ、私の心はいつでもお前のために開けてあるからな」
はにかむように微笑むとアマーリアは部屋へと戻っていった。
俺は一人台所の窓から月を眺めていた。
ね、眠れるわけがねえ~。
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