外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道 一人

17.森の魔女

 村での食事も終わり、俺たちは町へ帰ることにした。


「え~、キリちゃんもう帰っちゃうの~?」


 子供たちが名残惜しそうにしている。


 たったの一日でえらく馴染んだものだ。


 でもキリにはこういう近い年代の友達が必要なのかもしれないな。


「おう、嬢ちゃん、遊びに来たくなったらいつでも来るんだぞ」


 グランがキリの頭を揺するように撫でた。


「嬢ちゃんじゃない!キリだ!……でも…まあ…ここは気に入ったからたまに遊びに来てもいいぞ。うんたまにはな」


「はははっ、そう言ってもらえるならありがたいってもんだ。チビどもも喜ぶだろうよ!」


 グランが盛大に笑った。


「テツヤ」


 ひとしきり笑った後でグランが俺の方を振り返った。


「今回の件は世話になった。この借りは必ず返す」


「良いのか?被害が出たところの復旧を手伝わなくても?」


「は、ここは俺の村だ。そこまで借りを作るのはこの俺のプライドが許さねえ。それにお前らの魔力はもうすっからかんだろ。早く帰って静養するんだな」


 確かにそれはグランの言う通りで俺たちは力を使いすぎて空を飛んで帰ることすらできない状態だった。


 このまま村にいても大した手助けは出来ないだろう。


「帰り道はフラムに案内させる。落ち着いたらまたこの村に来いよ。歓迎するぜ」


「ああ、また来るよ」


 俺たちはグランの村に別れを告げ、山を下りていった。








「こっち」


 フラムが俺たちを案内してくれたが、はっきり言って山道というよりも獣道という感じだ。


 しかもところどころ土砂崩れで埋まっていてその度に崖を降りたり登ったりしなくちゃいけない。


 フラムはそんな道をまるで散歩でもしているかのようにすいすい進んでいく。


 俺たちはついていくのがやっとだった。






「なんか泣き声のようなものが聞こえないか?」


 ソラノがそんなことを言いだしたのは山を下りて森に入った時のことだった。


「まさかこんなところに人がいるわけ……いや、確かに聞こえるな」


 ソラノの言う通り、確かに泣き声が、それも女性の泣き声が聞こえる。


 なんだこれは?まさか妖怪変化の類か?


「あれはきっとカーリン」


 フラムはそういうと森の中の小道を曲がっていった。


 なんだか言葉少なな女の子だな。


 後をついて森の道をしばらく歩いているとやがて山裾へとたどり着いた。


 そこには土砂崩れに埋まった家らしき残骸と、その前でしゃがみこみさめざめと泣いている黒ずくめの服の女性がいた。




「わ、私の家がああああ、今までの研究結果が、資料が、全部土の中にいいいい」


 全体的な崩落は防いだつもりだったけどやっぱり部分部分で防ぎきれなかったところがあったのか。


 それにしてもその防ぎきれなかったところに家があったとは、不幸にも程があるな。


「気を落とさないでください。今は魔力が尽きちゃって無理だけど魔力が戻ったらこんな土砂はすぐにどかしますから」


 慰めるように声をかけるとその女性は急に立ち上がりこっちを振り向いた。


 真っ黒い幅広の帽子をかぶり、真っ黒なケープを身にまとった眼鏡をかけた黒髪の女性だった。


 年は俺よりも年上にも見えるし年下にも見える、なんとも不思議な佇まいの人だ。


 フラムの言っていたカーリンというのはこの人なのだろうか。


「あなた、土属性持ちなのですね。そして……うん、確かに魔力がほぼなくなっていますね」


 うお、なんでそんなことがわかるんだ?何者だこの人?


 しかも見た感じこんな森の奥深くに一人で住んでいるみたいだし。


「これは失礼しました。わたくしカーリンと言います。この森に住んでいて魔女をしています」


 カーリンと名乗る女性は訝しむ俺を見て慌ててお辞儀をしてきた。


 やっぱりこの人がカーリンなのか。




「俺はテツヤ、訳あってトロブ地方の新しい領主に任命されたんです。これからよろしくお願いします。こちらにいるのはアマーリアとソラノ、二人は王都から派遣されてきた騎士で俺を手伝ってくれています。そしてこっちのオニ族の娘はキリです」


「これはこれはご丁寧にありがとうございます」




 俺の自己紹介にカーリンは丁寧に頭を下げた。


「それにしても俺が土属性だということをすぐに見抜いたみたいですけど、一体どうやって?それも魔女の力なんですか?」


「それはですね…この魔具のお陰なのです!これは私が作った見魔眼鏡けんまがんきょうと言って、これ越しに見るとその人の属性や魔力量がわかるのですよ」


 へえ~……って凄いな!


 さらっと言ってるけどひょっとしてこの人、とんでもない魔女なんじゃ。


「この地方に凄い力を持った魔女が住んでいるという噂を聞いたことがあったけど、本当だったのか……」


 アマーリアも感心したように嘆息している。


「ところでみなさん確かに魔力が空になっていますね。でしたらこちらなどはいかがですか?」


 カーリンがそう言って懐から羊皮紙の包みを出してきた。


 中に入っていたのはマカロンそっくりなカラフルなお菓子だった。



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