外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
11.殴り合いのあとで
グランの拠点のドアがけたたましく開いた。
血相を変えたアマーリアとソラノ、キリが中に飛び込んでくる。
「テツヤはどこだ!」
龍牙刀を携えたアマーリアが凄まじい形相で叫んだ。
「慌てなさんな、奴さんならそこで寝てるぜ」
グランが親指で示した先にはフラムの膝枕の上で寝息を立てているテツヤがいた。
「あいつは無事だよ。わざわざあんたらを呼んだんだからさっさと引き取ってくれ」
そう言ったグランの顎先にアマーリアの龍牙刀がピタリと当てられた。
「その前に事情を話せ。事と次第によっては今すぐお前を殺す」
業火すら凍りつきそうな口調だ。
「言葉を慎重に選べよ。お前だけじゃなくここにいる貴様ら全員の命がかかっているのだからな」
グランの背後からソラノの剣がその首元に突き立てられる。
部屋の空気は既に帯電し、中にいる全員の髪が逆立ち始めていた。
キリも棍棒を構えて家の中にいるグランの部下たちを威嚇している。
「ま、待ってくれ……訳は俺から話す」
その時部屋の隅から声がした
それは目を覚ましたテツヤだった。
◆
「つまり、テツヤがケンカを売ったのか?」
アマーリアが呆れたように叫んで天を仰いだ。
「いや、そういう訳じゃ……最初に殴ってきたのはあいつだし……」
「そうもこうもない!領主とあろうものが住民にケンカを吹っ掛けるなど!」
アマーリアの怒号が民家に響き渡る。
「申し訳ない!グラン殿!テツ…我が上司の不手際、この通り謝罪する!」
アマーリアとソラノがそう言って深々と謝罪した。
そして俺の方をぎろりと睨む。
う、やっぱり俺もやらなくちゃ駄目か。
言っとくけどこてんぱんにのされたのは俺の方なんだぞ。
とは言えケンカを売ったのが俺だというのは揺るぎのない事実であり、領主がむかついたからという理由で領地の人間を手にかけるなんてあってはならないのも事実。
俺が全面的に悪いことに変わりはない。
「悪かった。俺が浅はかでした。謝りますのでどうか許してください」
俺は深々と頭を下げた。
「やめてくれ」
グランがうんざりしたように手を振った。
「謝られるようなことはされてねえよ。あれはちょいと厳しめのディスカッションみてえなもんだ。第一俺の方はなんの被害もねえしな。むしろそいつの心配をしてやるんだな」
…待て。
確かに俺の方がダメージはでかかったが、かと言ってむざむざやられっぱなしだったわけじゃないぞ。
「いやいや、グラン殿も結構被害があったはず。なにせ今も右手を庇って左手で酒瓶を持っているようだし?いやぁ申し訳ないことをした」
俺の言葉にグランがぎくりと右手を隠した。
その右手の指は俺が何本か折っている。
「何を言ってるんだかわからねえな。それよりもしばらくベッドで安静にしてた方が良いぜ。血反吐を吐いてのたうち回ってたのを連れてきたんだからな」
「いやいや、俺の膝蹴りがみぞおちに決まって涙目でうずくまっていたのは誰でしたっけ?」
「は?あんなの全然効いてねえから。手前こそ肋骨と腕を折られてたくせにしつこく突っかかってきやがって。うぜえんだよ」
「んだと?」
「ああ?やんのか?」
「もういい」
俺たちを制しながらアマーリアが呆れたように額に手を当てた。
「とにかくこれはケンカ両成敗ということで、それでよろしいですか?グラン殿」
「ふん、俺は負けてねえしどうでもいいよ」
そう言ってグランは肩をすくめた。
「それではこれにて失礼します。しかしながらグラン殿」
アマーリアは俺に肩を貸しながら戸口へ進み、出る前にグランの方へ振り返った。
「いくら新しく赴任したとはいえテツヤはこのトロブ地方の領主、いかなる理由があろうと彼への敵対行動は認められない。以後心してほしい」
「はん、よく肝に銘じておくよ。おい、テツヤ」
そう言って俺へと話しかけてきた。
「手前のことは認めたわけじゃねえ。だがお前がどこまでやれるのかお手並み拝見といこうじゃねえか。そこのオニの嬢ちゃんもひとまずお前に預けてやる。だがその嬢ちゃんに何かあったら俺が許さねえからな」
「キリはお前の娘じゃない!」
その言葉にキリが顔を真っ赤にして憤慨している。
「分かってるよ、どこまでやれるかわからないけど頑張るさ」
俺の言葉にグランは手をひらひらと振った。
「さっさと帰んな、俺はもう眠いんだ」
グランの言葉に見送られながら俺たちはグランの拠点を出て屋敷へと向かった。
「まったく、帰ってこないから心配していたらケンカなど…」
俺に肩を貸しながらソラノがぶつぶつと言っている。
「悪かった、悪かったよ。ほんと反省してます」
俺は道中ひたすら三人に謝っていた。
このすぐに手が出してしまう癖は何とかしないと駄目だな。
「しかしまあ無事で良かった。あのグランは素手でドラゴンを殺したことがあるという話だからな」
ソラノの反対側で肩を貸してくれているアマーリアが安心したように息をついた。
え、そうなの?
「ああ、あ奴の角はその時に折れたらしく、それ以来隻角のグランと呼ばれいてその名は魔界にも轟いているくらいだ」
ひょっとして俺はとんでもない奴にケンカを売っていたのではないだろうか。
「だから言っているではないか。しっかり反省するように!」
ソラノの叱責が耳に痛い。
いや、まったくその通りです……
◆
「大丈夫ですかい?お頭」
カエルが心配そうに聞きながらグランの右手に軟膏を塗って包帯を巻いた。
「っつ……こんなのなんてことねえよ」
顔をしかめながらグランが答える。
「しかしあのテツヤとかいう男、お頭相手に素手でここまでやるなんて大したもんですね」
バグベアが感心したように言った。
「は、殺さねえように手加減してやったからな。つぅっ!」
グランが右手で酒瓶を掴もうとして顔をしかめた。
「しかしあの野郎、本当に最後まであの力を使わなかったな。なかなかおもしれえ奴じゃねえか。しばらくは退屈せずに済みそうだぜ」
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