外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
9.三つ巴
アマーリアとソラノ、キリが俺とグランの間に割って入った。
「どけ、こいつはよりにもよってオニ族の娘を奴隷にしやがった。お前らも女だからといってただじゃ済まさねえぞ」
騎士を相手にグランは一向にひるむ様子がない。
むしろ全身から発する殺気が増幅している。
「勝手なことを言うな!ご主人様はキリを救ってくれたんだ!キリは好きでここにいるんだ!」
キリが両手に棍棒を構えたグランに食ってかかった。
「嬢ちゃん、あんたはこの男に騙されてるんだ。俺はオニ族の娘を攫っては町で売り飛ばしている奴らを何人も見てきた。こいつはそいつらと同類だ」
俺はふらふらと立ち上がった。
首から先がもげたかと思う位のパンチだった。
グランの部下たちも戦闘態勢に入っている。
不味い、このままでは赴任早々一悶着起きてしまうぞ。
「た、大変だあ!グランさん!!!」
その時、町から男たちが走ってきた。
「なんだ!邪魔すんなと言っただろうが!」
グランが吠える。
「そ、それが、また連中がやってきたんだ!」
「!」
その言葉にグランの表情が変わった。
「連中、まっすぐこっちに向かってきてるよ!」
その言葉通り町の方から蹄の音が聞こえてきた。
二十人はいるだろうか、全員馬に乗り完全に鎧で武装している。
一目で正規の軍隊だとわかるいでたちだ。
馬に乗った兵士たちは俺とグランのところまで来るとぴたりと立ち止まった。
「てめえら、また来やがったのか」
グランが先頭の男を見上げて睨みつけた。
眼から殺気が迸る。
「ふん、新しい領主が来たというから挨拶に来たまでよ。ついでに税の徴収もな」
「ふざけんじゃねえ。いつもいつも勝手な理屈をこねて金品をむしりやがって。ここは手前らのカドモイン領じゃねえんだぞ」
「しかし貴様の領地でもあるまい。ここはゴルド王国の土地だ。なれば我々が不在の領主に代わって税金を徴収しても何の問題もあるまい。新しい領主もまだこの土地の風習に慣れていないようだしな」
そう言ってその兵士がちらりと俺を見た。
何も知らないひよこが猛獣の檻に放り込まれたな、とでも言わんばかりの眼だ。
「こいつが領主だろうと手前が王国の代行だろうと関係ねえ。てめえらの好き勝手にはさせねえと言ってるんだ」
グランがゆらりと前に出た。
「面白い。野盗と大して変わらん風情で調子に乗りおって。今まで目こぼししてやっていたがこの機会に討伐してくれるわ」
兵士が馬上槍を構えた。
「やれるもんならやってみな!」
グランが吠える。
その言葉を合図に両陣営が一気に動きだし……
「うるせえっ!!!!!!」
俺は叫んだ。
同時に両陣営の動きが止まる。
いや、俺が動きを止めさせた。
地面から無数に伸びた刃が両陣営の喉元にぴたりと狙いを定めている。
俺は頭を振りながら立ち上がった。
まだ少し頭がふらついているがそれを怒りが上回っていた。
「人の頭ごなしに勝手に盛り上がってんじゃねえぞ。俺はここの領主だ。勝手な真似をする奴は誰であろうと容赦はしねえぞ」
俺は兵士の前に出た。
「おい、お前の名前と所属は?」
「わ、私はカドモイン領外縁警護部隊西方部隊長コダノ・ハッセーであ……あります」
地面から喉元に突き付けられた刃に冷や汗を流しながらコダノが答えた。
「そのカドモインの兵士がなんで領外まで出向いてるんだ?税金の徴収ってのは何のことだ?」
「そ、それは、この地方は長らく治めるものがいなかったので我々カドモインのものが治安維持を代行していたからであります。そのための維持費として……その……」
「ふざけんじゃねえ!今まで金を持っていくだけで何もしてねえじゃねえか!」
町人の一人が叫んだ。
そうだそうだという声が辺りに響き渡る。
「だったら俺が赴任してきた以上もうそれは必要ないな?」
「そ、それは……しかしこの辺は治安が悪い…及ばずながら我々も手助けを……」
「必要ないと言ったのが聞こえなかったのか?」
刃がコダノの喉元へ更に近づいていく。
「わ、わかりました…おい、お前ら、戻るぞ!」
コダノは額の汗をぬぐいながら踵を返した。
退却する直前にこちらをちらりと振り返る。
「後悔しますぞ」
捨て台詞を残し、コダノたちカドモイン軍は去っていった。
コダノたちが去ったのを確認し、俺はグランの方へ振り返った。
「さっきも言った通り俺がこのグラン地方の新たな領主だ。俺の前で勝手な真似は許さない。ついでに言うとキリは自分の意志でここに来ている。その意思を無視する奴は例えキリと同じオニ族であっても容赦はしない」
そう言って俺はグランを真っ向から睨みつけた。
まるで大人と子供の体格差だが引く気は全くない。
「……ふん」
どのくらい経っただろうか、やがてグランが視線を移した。
喉元に突き付けられた刃を無造作に握り、まるで枯れ木でも折るようにそれを握りつぶす。
「国王に任命されたかなんだが知らねえが、せいぜい身の回りに気を付けるんだな」
そう言って踵を返す。
グランの部下たちもそのあとへ続いた。
「ふう…」
グランたちが去ったのを確かめてから俺は地面にへたり込んだ。
とんでもない馬鹿力でぶん殴られたせいで正直立ってるのもやっとだった。
「まったく、無茶をして」
アマーリアがたしなめるように言いながら治癒魔法をかけてくれた。
痛みがみるみる消えていく。
「しかしここは思った以上に複雑な事情がありそうだな」
ソラノがそう言ってため息をついた。
それは俺も同感だ。
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