外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
8.隻角のグラン
翌朝、俺たちはヨーデンに案内されてこれから住むことになる屋敷へと向かったのだけどその建物を見て俺は絶句した。
それはよく言って廃墟、悪く言っても廃墟としか言えないような代物だった。
「申し訳ありません!ここは元々この地方の領主を任命された方が住まう官舎だったのですが、ここ十数年領主が任命されたことがなく、おかげですっかり寂れてしまったのです」
ヨーデンが禿頭から汗をぬぐいながら謝罪している。
いや、寂れるってレベルじゃねーぞ、これは。
「まあいいか」
「は?よろしいのですか?」
しかしあっさりと快諾した俺にヨーデンが意外そうな表情をした。
「雨風がしのげるだけ御の字だよ。ヨーデンさんありがとう」
「は、はあ……」
怪訝な顔をしながらヨーデンは立ち去った。
「おい、本当に良いのか?これでは雨風を凌ぐどころではないぞ」
「まあ見てろって」
不安そうに聞いてくるソラノにウインクをすると俺は屋敷という名の廃墟に手を当てて内部を軽くスキャンした。
元々の造りはしっかりしているらしく土台はまだ健全だからこれなら大した苦労はないだろう。
俺がイメージを広げるとともに屋敷がみるみるうちに修復されていく。
欠け落ちた漆喰は周囲から少しずつ集めて埋めていき、腐った部分は隣に生えていた木を加工して材料にあてた。
もとは領主の屋敷だっただけに各部屋に水道の配管が走っているのでそれも修復しておく。
「これで大体直ったと思うぞ。ベッドマットや枕、毛布なんかは持ってきたのを使えばいいだろうな」
「おお、流石はテツヤだ。見違えるようになったな」
「これなら問題なく住めるね!」
アマーリアとキリも感心したようだ。
俺たちは屋敷の中へと入っていった。
屋敷は二階建てで一階は応接間と書斎、居間、台所になっている。
二階は居住区で部屋は全部で六部屋、各部屋にトイレと風呂が付いている。
屋根裏に貯水タンクがあって井戸からそこに水を送り、屋敷中に張り巡らせた水道管で水を使えるようになっているみたいだ。
お湯は別途沸かす必要があるけどそれはなんとかなるだろう。
「で、なんでみんな俺についてきてるんだ?」
とりあえず荷物を広げようとしたものの、何故かみんな俺の部屋に荷物を運びこんでいるんだが。
「なんでって、ここに住むからだろう?」
アマーリアが不思議そうに聞いてくる。
「ああ、アマーリアはここがいいのか。じゃあ俺はあちらに」
そう言って向かいの部屋に移るとやっぱり三人が付いてくる。
「なんで俺のあとをついてくるんだ?」
「キリはご主人様と一緒の部屋がいい!」
「いや、そういう訳にはいかないんだけど」
「テツヤも何かと身の回りの世話が必要だろう?遠慮しなくていいんだぞ」
「わ、私はテツヤの警護も仕事のうちだからな!だったら一緒にいなくてはならない、そ、それだけだからな!」
「い、い、か、ら、さっさと自分たちの部屋に行ってくれ!」
なんとか三人を追い出すことができた。
俺は南側の真ん中の部屋で、その両側がアマーリアとソラノ、向かい側がキリだ。
「やれやれ、ようやく落ち着いたぞ」
荷物を広げて一段落したところで窓から外の景色を見た時、俺たちの新居に向かってくる集団がいることに気付いた。
ただならぬ気配を察して俺はすぐに駆け下りた。
同じようにその集団を怪しいと感じたのか三人もそれぞれ武器を携えて俺のあとをついてきた。
玄関から出て対峙した時、その中に昨日出会ったバグベア、ドワーフがいることに気付いた。
店主が言っていたのはこういうことか。
何故かバグベアは顔に派手な痣を作っている。
はて、俺はあいつを痛めつけてはいなかったはずだけど?
その集団は総勢百名はいるだろうか、この町の規模からするとかなりの勢力だ。
そのほとんどが魔族で、種族も性別も様々だ
全員武装してはいるけどそれぞれの装備はバラバラだ。
しかしよく使いこまれているし着慣れていることが一目でわかる。
一見すると野盗に見えなくもないけど犯罪者集団によくあるこれ見よがしな威嚇を感じない。
数多の戦いを潜り抜けてきた戦士の空気がその集団を包んでいる。
そしてその集団の中にひと際強大な圧を発している男がいた。
身長は二メートル以上あり、肩まで伸ばした真っ黒な長髪からオニ族特有の牛のような角が二本出ていて、そのうち右側の一本は真ん中あたりで折れている。
顎に髭を生やし、その眼は視線で人を射殺さんばかりだ。
赤黒い肌にシャツが弾けそうな筋骨隆々の体、一目見てその男がこの集団の頭領だとわかる。
その男がのそりと前に出てきた。
「お前が新しい領主か」
俺を値踏みするように見下ろしてくる。
地の底から響くような野太い声だった。
「ああ、俺がここの領主をすることになったテツヤだ。お前は?」
「お前だとおっ!?」
「このガキ、調子に乗りやがって!」
ざわつく背後の集団だったが、そのオニ族の男が手をあげた途端に静まり返った。
「俺はグラン、トロブ含めてこの辺を取りまとめている」
なるほど、領主不在とはいえ自然発生的な権力構造が出来上がっているのか。
「それで、そのグランが俺に何の用だ?今更俺の赴任に文句を言いに来たのか?」
「ふん、別にそんなわけじゃねえさ。ただどういうもの好きがこんな辺境にきたのか興味があってな。ついでに昨晩の詫びにきた。俺の部下が迷惑をかけちまったみたいだからな」
グランの後ろで顔に痣を作ったバグベアが頭を下げた。
なるほど、バグベアの痣の理由はそれか。
俺は肩をすくめた。
「別にいいさ。怪我をしたわけじゃない」
「これであんたとの間に遺恨はなくなったわけだ。あんたの邪魔をする気は…」
グランの言葉が途中で止まった。
全身から殺気が膨れ上がり、その顔が憤怒の形相へ変わっていく。
なんだ?何があったんだ?
俺はグランの視線の方向へ顔を向けた。
その先にいるのは……キリ?
「話が変わった」
そう言ったグランの右手が掻き消えた。
その瞬間、俺の顔面を凄まじい衝撃が襲った。
「「テツヤッ!」」
アマーリアとソラノの悲鳴が聞こえたような気がしたが俺はそのまま真横に吹っ飛び、立ち木に背中から激突していった。
「がはっ!!」
衝撃で肺の中の空気を全部吐きだし、全身の力が抜けていく。
まるでダンプカーにはねられたみたいだ。
「手前は許さねえ」
朦朧とした意識の中、凄まじい形相をしたグランが近寄ってくるのが見えた。
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