外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
2.ベンズ商会を探索せよ
「やっぱりそうか~。そうじゃないかとは思っていたんだけど」
「まあそう落ち込むな。大体わかっていたことではないか」
「それはそうだけど…」
そうは言ってもやはり気がかりは気がかりだ。
ランメルスを倒しただけではこの問題は解決しないのだ。
「今日お主を呼んだのはそのためなのだ」
「はあ?」
突然のリンネの言葉に俺は意味が分からずぽかんとしていた。
「だからこれからヨコシンが何かそれに関する手がかりを残していないか探すのだ。お主の力のことは聞いておる。おそらくお主の力が役立つはずだ」
「ああ、なるほどね」
「この屋敷はランメルスが倒されてすぐに我の権限でもって閉鎖して監視を置いている。残念ながらヨコシンが逃げ出した直後ではあったがな。それ以来誰も入っていない」
そう説明しながらリンネは立ち上がり、部屋を出た。
俺もその後に続く。
リンネは廊下の奥にある部屋に入っていった。
おそらくそこはヨコシンの書斎だったのだろう、部屋の奥に巨大な机があり壁一面に棚がしつらえてあるがそこは空っぽだった
「ここにあったものは全て調べたが目ぼしいものは出なんだ」
リンネは話を続けながらその奥にある部屋へ入っていった。
そこは寝室だった。
金の縁取りをした巨大なベッドが部屋の中央を陣取り、壁には巨大な暖炉が据え付けられている。
「お主に見せたいのはこれよ」
リンネが暖炉を指差した。
そこには何かを重ねたようなものが炭化して残っている。
「奴は逃げ出す時に見つかると困るであろう書簡などを全て暖炉で焼き捨てたのだ。だが羊皮紙と言うのは存外燃えにくいものでな」
「なるほど、俺の力でこの灰から書かれていた文字を読めるようにしたいという訳か…訳ですね」
「敬語はいい。まあ要するにそういうことよ。話が早くて助かるわ」
リンネの言うことは確かに理にかなっている。
羊皮紙の事は知らないが紙ですら燃やしても意外と原型を留めるものなのだ。
紙幣を燃やしてしまってもその灰から額面を割り出してお金を取り戻せたなんていう話もある。
特に暖炉やストーブのような対流の起こりにくい環境だと燃やしたものがその形を留めたままという場合が多い。
まさにこの暖炉に残った灰がそれだった。
「じゃあやってみます…やってみるかな。言っておくけど結果は期待しないでくれよ。俺もやるのは初めてなんだ」
「ふん、それはわかっておる。だが物は試しと言うではないか」
俺はその言葉に頷き、灰に意識を集中した。
やはりインクの成分が染みた部分とそうでない部分は燃焼速度や温度に違いが出ているらしい。
羊皮紙一枚分の灰を慎重に浮き上がらせて固定させる。
うっすらとだが文字が読める。
「よし、続けてくれ」
リンネが満足そうに頷いた。
俺は続けて灰となった羊皮紙を次々と固定していった。
再生することができた羊皮紙は全部で十二枚だった。
固定できたとは言え祭りの屋台で遊ぶ型抜き程の硬さもないから慎重に扱わなくてはいけない。
俺たちはそれを隣の書斎にある机に並べた。
◆
「ううむ……」
読んでいくうちにリンネの顔が険しくなっていく。
俺はと言うと、文字は読めるのだけどもって回った言い回しが多くて何が書かれているのかよく分かっていなかった。
「何が書かれているんだ?」
「概ね予想通りよ」
しばらく経ってから聞いてみるとリンネはやれやれと言うように息を吐いた。
「これは手紙や契約書の類だな。内容はランメルスに力を貸すなら望み通りの援助を行うこと、今後の商売の確約、ランメルスに渡す武器防具についての指示が書かれておったわ」
「で、誰からなんだ?」
「ここを見るがよい」
俺の問いにリンネは羊皮紙の左下隅を指差した。
そこにはバラをあしらった複雑な模様の印章が押されている。
「これは我が国最大の諸侯であるカドモイン家の家紋よ。現当主リード・カドモイン辺境伯のサインも書かれておるわ」
「な、なんだってー!って、カドモインって…誰だ?」
俺の言葉にリンネががくっと肩を落とした。
「き、貴様は……いや、そういえば帰還者であったか…どうやらそこから説明せねばならぬようだな」
リンネは机の上にあったペンを取り上げると壁に近づいていった。
高級そうな壁紙の上に無造作にペンを走らせる。
中央にでかでかと城を描き、その城を中心として大きな円を描き、その円の下半分ほどを楕円で囲った。
「カドモインとは我が王家に次ぐ広さの領地を持っておる。大体この辺がきゃつの土地だ」
そう言って先ほど描いた楕円をペン先で叩いた。
「そ、それは確かに凄いな。つまりゴルド王国の三分の一位はカドモインのものという訳なのか?」
俺の言葉にリンネが頷いた。
「そもそも王と諸侯の関係というのは完全な上下関係にはないのだ。諸侯は税金を納める必要はなく、領内の権限は完全に諸侯のものとなっている」
「それじゃあ国の中に別の国があるようなものなんじゃないのか?」
「そうと言ってもよいかも知れぬ。しかし諸侯は国王が決めた法に従わねばならぬ。諸侯を裁く権利は国王が有しておるし命令があれば諸侯は兵を集めて参じなけらばならぬ。背けば反乱と見なされ処罰されるのだ」
「つまり諸侯は王に従ってはいるけど領地内では国王と言ってもいい権力を持っているということか」
リンネが頷いた。
「そして諸侯で最大の領土を持つカドモインは言わばこの国で王に次ぐ力を持っていると言えるだろう。それがベンズと結託してランメルスに力を貸していたということは…」
俺は息をのんだ。
「カドモインこそが国家転覆を企んだ黒幕ということか」
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