外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
第一部最終話:意外な結末
結局ランメルスの企てた内乱はたったの一日で決着がついた。
ソラノが町中にランメルスの死を報じたことでただでさえ劣勢だった反乱軍は一気に瓦解し、主だった首謀者は次々に逮捕、投降、殺害されていった。
ランメルスに武器を横流ししていたベンズ商会の会長、ヨコシン・ベンズは逃亡し、指名手配されているが一週間経った今も見つかっていない。
兵士間の内乱と王城の占拠が主であり町の破壊は最小限だったお陰で復旧はかなりの速度で進んでいるらしい。
事後処理やらなんやらでバタバタしていたけど一週間経ってようやく俺の身の回りも落ち着いてきた。
事件後初めてアマーリアの屋敷に戻った時は心配のあまり泣いて怒るキリにしこたまどつかれた。
ともあれゴルドの町にいつもの平和が訪れようとしていた時、俺は登城するようにという伝令を受け取ったのだった。
城に行くとすぐに王の間に通された。
王の間にはウィゼル王、ラウラ王妃、リンネ姫が待っていた。
その傍らにはアマーリアとソラノが控えている。
何事が起こるのかと不思議に思いながら俺はウィゼル王の前に跪いた。
「よいよい、お主は我ら一家を、いやこの国を救ってくれた英雄だ。どうぞ気楽にしてくれ」
ウィゼル王はそんな俺を椅子に座るように促した。
それでは、と俺が椅子に座るとどこからともなくメイドが現れお茶を淹れてくれた。
ウィゼル王に勧められるままにお茶を飲んだものの、何故ここに呼ばれたのか全く分からなかったのでなんともぎこちないお茶会だった。
◆
「さて、ここにお主を呼んだのは先のランメルス討伐についてじゃ」
来た。
まあそのことだろうなとは薄々思ってましたよ。
「重ね重ねになるがまずは礼を言わせてほしい。お主のお陰で私の家族もこの城も、この町もランメルスの魔の手から救われたのじゃ。何度お礼を言っても足りることなどない」
「いえいえそんな。俺一人の力ではないですし。ここにいるアマーリアとソラノがいなければどうなっていたか。俺はあの二人に救われたようなものです」
俺は頭を下げて礼を言うウィゼル王に手を振って断った。
実際二人がいなかったら俺はランメルスに切られた傷で死んでいてもおかしくなかったのだ。
「謙遜は立派だがそれでは我も気が収まらんのだ。お礼としてこれを受け取ってはくれまいか?」
ウィゼル王はそう言って手を叩いた。
またも音もなくメイドがやってきた。
手には宝石をあしらった鞘に納められた見事な剣を持っている。
「我が国にとって多大なる功績をあげた騎士に恵賜する宝剣だ。これを持つものは一切の税が免除され、またフィルド王国のどこへも手形なしで行くことができる」
一瞬断ろうと思ったけど流石にそれは王に対してあまりにも失礼だと思い直し、素直に受け取る事にした。
王に促されるままに鞘から剣を引き抜くと白銀のような刀身が窓から差し込む日の光に煌めいた。
素人目に見ても見事だとわかる名剣だ。
(刀身の素材は鍛鋼、硬度はブリネル硬度で二五〇。剣の価値は金貨五〇〇〇枚分)
頭の中に剣の素材情報が流れ込んでくる。
刀身は普通の鋼だけど剣本体の価値はそれだけで豪邸を一軒建ててお釣りが出るくらいある。
なによりもこの剣にはものとして以上の価値があった。
背筋がぶるっと震えた。
ひょっとして俺はとんでもない物を受け取ってしまったんじゃないだろうか……
「聞けばお主は以前からランメルスの不穏な動きに気付いておったとか」
剣に見惚れていると、というか畏怖の念で見ていると突然ウィゼル王が聞いてきた。
「いや、気付いていたとかそういう確かなことではないんですけど。なんかランメルスには違和感があったという程度で」
「いやいや、それが人としての器をわけるのだ。その違和感を無視せず対処する能力こそが人を率いるに必要な力なのだよ。そうであろ?」
ウィゼル王がアマーリアとソラノに振り返って同意を求めた。
なんだ?なにか雲行きが怪しくなってきたぞ?
「実はな、他ならぬテツヤに折り入って話があるのだ。もちろんここだけの話であるぞ」
来た、来ましたよ。
こういう話があるだろうなというのはなんとなく感じていた。感じていましたとも。
当然俺には頷く以外の選択肢はない。
そんな俺を見てウィゼル王は満足そうに話しを続けた。
「逆賊であるランメルスは地に落ち、かの領土は近隣諸侯と領主が分割統治することになったのだが、どうしても余ってしまう土地があっての」
お茶をすすりながらウィゼル王が話を続けた。
「そこは元々空白地帯のような場所で誰も管理をしておらんかったのだ。ランメルスとて真面目に統治していたかどうか。しかしそうは言っても我が国の領土であることに変わりはない」
???話が見えないぞ???
「そこでだ、お主その土地の領主になってはもらえないか?」
?
??
????
待て、俺が領主?孤児院育ちで異世界から帰ってきたばかりのこの俺が?
「お主はこの国を逆賊から救った英雄なのだ。本来ならもっとちゃんとした領土を与えたいところなのだが、あいにくと空きがなくてな。申し訳ないがこれで許してもらえないだろうか?」
「いやいやいやいや、意外過ぎる申し出ですが、流石にそれは俺の手に余りますって!俺はそういう政をいっさいやったことがないんですよ?」
「もちろんそれはわかっておる。その土地はいずれしっかりした領主を用意することになるだろう。お主にはそれまでの繋ぎとしてその土地を守ってもらいたいのだ」
「し、しかし……」
「もちろん一人でやってもらおうとは思っておらん。お主をサポートする人間を王都から派遣しよう」
そう言ってウィゼル王がアマーリアとソラノを手招きした。
「執政担当官としてアマーリアを、王都との連絡及び武官としてソラノを派遣しよう」
やられた。
俺は頭を抱えた。
既にこの二人には根回しが済んでいたのか。
「そういうわけだテツヤ。私たちはこの国に忠誠を誓った騎士、王の命令は絶対なのだ」
「済まないが分かってくれ。これも任務なのだ」
いや、その割には全然申し訳ないという気分を感じ取れないんだが。
この王様、無害な雰囲気をしてるけど実は結構なやり手なんじゃ。
俺は軽くため息をついた。
「わかりました。その任務拝命いたします」
「おお!引き受けてくれるか!」
俺の返事にウィゼル王は一気に相好を崩した。
もとより俺に断る術があるわけもなかった。
同時にそれを聞いて正直少しワクワクする気持ちもあった。
もっとこの世界を見たいと思っていたのだ。
誰も欲しがらない土地、それはどんな所なのだろうか。
俺の新しい旅が今ここに始まろうとしていた。
ソラノが町中にランメルスの死を報じたことでただでさえ劣勢だった反乱軍は一気に瓦解し、主だった首謀者は次々に逮捕、投降、殺害されていった。
ランメルスに武器を横流ししていたベンズ商会の会長、ヨコシン・ベンズは逃亡し、指名手配されているが一週間経った今も見つかっていない。
兵士間の内乱と王城の占拠が主であり町の破壊は最小限だったお陰で復旧はかなりの速度で進んでいるらしい。
事後処理やらなんやらでバタバタしていたけど一週間経ってようやく俺の身の回りも落ち着いてきた。
事件後初めてアマーリアの屋敷に戻った時は心配のあまり泣いて怒るキリにしこたまどつかれた。
ともあれゴルドの町にいつもの平和が訪れようとしていた時、俺は登城するようにという伝令を受け取ったのだった。
城に行くとすぐに王の間に通された。
王の間にはウィゼル王、ラウラ王妃、リンネ姫が待っていた。
その傍らにはアマーリアとソラノが控えている。
何事が起こるのかと不思議に思いながら俺はウィゼル王の前に跪いた。
「よいよい、お主は我ら一家を、いやこの国を救ってくれた英雄だ。どうぞ気楽にしてくれ」
ウィゼル王はそんな俺を椅子に座るように促した。
それでは、と俺が椅子に座るとどこからともなくメイドが現れお茶を淹れてくれた。
ウィゼル王に勧められるままにお茶を飲んだものの、何故ここに呼ばれたのか全く分からなかったのでなんともぎこちないお茶会だった。
◆
「さて、ここにお主を呼んだのは先のランメルス討伐についてじゃ」
来た。
まあそのことだろうなとは薄々思ってましたよ。
「重ね重ねになるがまずは礼を言わせてほしい。お主のお陰で私の家族もこの城も、この町もランメルスの魔の手から救われたのじゃ。何度お礼を言っても足りることなどない」
「いえいえそんな。俺一人の力ではないですし。ここにいるアマーリアとソラノがいなければどうなっていたか。俺はあの二人に救われたようなものです」
俺は頭を下げて礼を言うウィゼル王に手を振って断った。
実際二人がいなかったら俺はランメルスに切られた傷で死んでいてもおかしくなかったのだ。
「謙遜は立派だがそれでは我も気が収まらんのだ。お礼としてこれを受け取ってはくれまいか?」
ウィゼル王はそう言って手を叩いた。
またも音もなくメイドがやってきた。
手には宝石をあしらった鞘に納められた見事な剣を持っている。
「我が国にとって多大なる功績をあげた騎士に恵賜する宝剣だ。これを持つものは一切の税が免除され、またフィルド王国のどこへも手形なしで行くことができる」
一瞬断ろうと思ったけど流石にそれは王に対してあまりにも失礼だと思い直し、素直に受け取る事にした。
王に促されるままに鞘から剣を引き抜くと白銀のような刀身が窓から差し込む日の光に煌めいた。
素人目に見ても見事だとわかる名剣だ。
(刀身の素材は鍛鋼、硬度はブリネル硬度で二五〇。剣の価値は金貨五〇〇〇枚分)
頭の中に剣の素材情報が流れ込んでくる。
刀身は普通の鋼だけど剣本体の価値はそれだけで豪邸を一軒建ててお釣りが出るくらいある。
なによりもこの剣にはものとして以上の価値があった。
背筋がぶるっと震えた。
ひょっとして俺はとんでもない物を受け取ってしまったんじゃないだろうか……
「聞けばお主は以前からランメルスの不穏な動きに気付いておったとか」
剣に見惚れていると、というか畏怖の念で見ていると突然ウィゼル王が聞いてきた。
「いや、気付いていたとかそういう確かなことではないんですけど。なんかランメルスには違和感があったという程度で」
「いやいや、それが人としての器をわけるのだ。その違和感を無視せず対処する能力こそが人を率いるに必要な力なのだよ。そうであろ?」
ウィゼル王がアマーリアとソラノに振り返って同意を求めた。
なんだ?なにか雲行きが怪しくなってきたぞ?
「実はな、他ならぬテツヤに折り入って話があるのだ。もちろんここだけの話であるぞ」
来た、来ましたよ。
こういう話があるだろうなというのはなんとなく感じていた。感じていましたとも。
当然俺には頷く以外の選択肢はない。
そんな俺を見てウィゼル王は満足そうに話しを続けた。
「逆賊であるランメルスは地に落ち、かの領土は近隣諸侯と領主が分割統治することになったのだが、どうしても余ってしまう土地があっての」
お茶をすすりながらウィゼル王が話を続けた。
「そこは元々空白地帯のような場所で誰も管理をしておらんかったのだ。ランメルスとて真面目に統治していたかどうか。しかしそうは言っても我が国の領土であることに変わりはない」
???話が見えないぞ???
「そこでだ、お主その土地の領主になってはもらえないか?」
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待て、俺が領主?孤児院育ちで異世界から帰ってきたばかりのこの俺が?
「お主はこの国を逆賊から救った英雄なのだ。本来ならもっとちゃんとした領土を与えたいところなのだが、あいにくと空きがなくてな。申し訳ないがこれで許してもらえないだろうか?」
「いやいやいやいや、意外過ぎる申し出ですが、流石にそれは俺の手に余りますって!俺はそういう政をいっさいやったことがないんですよ?」
「もちろんそれはわかっておる。その土地はいずれしっかりした領主を用意することになるだろう。お主にはそれまでの繋ぎとしてその土地を守ってもらいたいのだ」
「し、しかし……」
「もちろん一人でやってもらおうとは思っておらん。お主をサポートする人間を王都から派遣しよう」
そう言ってウィゼル王がアマーリアとソラノを手招きした。
「執政担当官としてアマーリアを、王都との連絡及び武官としてソラノを派遣しよう」
やられた。
俺は頭を抱えた。
既にこの二人には根回しが済んでいたのか。
「そういうわけだテツヤ。私たちはこの国に忠誠を誓った騎士、王の命令は絶対なのだ」
「済まないが分かってくれ。これも任務なのだ」
いや、その割には全然申し訳ないという気分を感じ取れないんだが。
この王様、無害な雰囲気をしてるけど実は結構なやり手なんじゃ。
俺は軽くため息をついた。
「わかりました。その任務拝命いたします」
「おお!引き受けてくれるか!」
俺の返事にウィゼル王は一気に相好を崩した。
もとより俺に断る術があるわけもなかった。
同時にそれを聞いて正直少しワクワクする気持ちもあった。
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