外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
48.決着
ランメルスは哄笑しながら剣を振るった。
テツヤはというと防戦に回るだけで精いっぱいだ。
「同じ帰還者だというから少しは気になっていたのだけど、どうやら期待外れだったみたいだね」
肩をすくめながらランメルスがため息をついた。
まだ汗一つかいていない。
「は、それはどうかな」
テツヤはかく乱するかのように走り回りながら石槍を射出し続けている。
「だからそれは無駄だと言ってる……」
その時ランメルスが大きく体勢を崩した。
テツヤがランメルスの足下の床を操作し、小さな穴を開けたのだ。
小さな穴ではあるが足を踏み込むには十分な深さがある。
体勢を立て直すために床に手をついたのをテツヤは見逃さなかった。
手をついたはずみで床に転がった剣を即座に床に埋め込んで地中深くまで潜らせる。
「小癪な真似を!」
起き上がろうとするランメルスにテツヤは更に石をまとわりつかせた。
「う、うぬっ…」
石の重みに耐えきれずにランメルスが膝をつく。
テツヤは更に石を操作してランメルスを完全に床に固定させる。
同時に自分の方を向けないように首も完全に固定した。
テツヤは首に巻き付けた石を締めこんで窒息させようとしたが、それはランメルスの力によってはねのけられた。
剣の時と同じで単純な力比べだと拮抗しているようだ。
「だったらこれでどうだ!」
そう叫んでテツヤは頭上数十メートルの高さに巨大な石柱を作り出した。
魔力が無理でも位置エネルギーと運動エネルギーならば倒せるかもしれない。
直径、全長共に十メートルはある石柱の重さは千トンを超える。
「これでもくらえ!」
その石柱を一気にランメルスに向かって落下させる。
「ふ、ふざけるなああああ!!!!」
ランメルスの絶叫と共に轟音を立てて石柱が直撃した。
あたりに猛烈な土煙が舞い上がった。
だが土煙が収まった時、俺の目に映ったのは墓標のように立っている石柱、ではなく真っ二つになったそれだった。
テツヤは事態を悟って即座に石柱から飛び退ったが肩と足が衝撃と共に切り裂かれた。
「ぐあっ!」
転がるように破片の陰に身を潜める。
二つに分かれた石柱の真ん中にランメルスが立っていた。
「やってくれるじゃあないか……」
その手には柄の部分から先が失われた先ほどの剣を持っている。
テツヤは剣を土中に埋め込みながらランメルスの力が及ばなくなったタイミングを見て地面と融合させたつもりだったが、どうやら完全ではなかったらしい。
おそらくランメルスの力によって最後の最後に土中から復活して拘束を破壊し、落ちてくる石柱を断ち割ったのだろう。
「私の剣を折ったのは君が初めてだよ、テツヤ。全く貴様という奴はよくよく私をむかつかせてくれる。その功績を讃えて今この場で殺してやるよ」
「は、口調に余裕がなくなってきたぜ、色男さんよ。言っとくけど決着をつけるのは俺の方だ!」
テツヤは軽口をたたきながら石柱を操作し、ランメルスを挟み込んだ。
「ぐぬぬぬぬぬっ」
しかしランメルスはそれを両手で防ぎ、抗っている。
やはり力が拮抗しているからだろうか。
「これで終わりだ!」
テツヤが両手の塞がっているランメルスの前に飛び出した。
「馬鹿め!」
ランメルスが吠える。
この位置なら斬撃の視線で容易に切り裂くことができる。
「死ね!」
ランメルスが斬撃の視線を放とうとした寸前、テツヤの姿がかき消えた。
「なにっ!」
驚愕の表情を浮かべるランメルス。
その顔面に、不可視の巨大な塊が衝突した。
「はぐああっ!!!!」
全身を襲う強烈な衝撃にランメルスが吹き飛んだ。
そのまま石壁に激突し崩れ落ちる。
「ぐ…ぐぬうう……」
なんとか起き上がろうとするものの、うめき声が上がるだけで体が言うことを聞かない。
「どうした。俺を叩き斬るんじゃなかったのか?」
背後から聞こえてきた声にランメルスの全身がびくりと震えた。
憎しみのこもった眼で見ようとするがその首筋に鋭利な刃物が当てられたのを悟り、動きを止めた。
「な、何をしたのだ…?」
絞り出すように声をあげる。
ランメルスには何が起こったのか全く理解できていなかった。
斬撃の視線で切り裂こうとしたその瞬間にテツヤの姿が消え、見えない何かに全身を弾き飛ばされたのだ。
「屈折、と言ってもお前にはわからないだろうな」
テツヤがランメルスの目の前に握り拳ほどの物を放り投げた。
それは限りなく透明なガラスの塊だった。
「ここら辺の鉱物が石英を豊富に含んでくれて助かったよ。おかげでこいつが作れた」
テツヤが作ったのは巨大なガラスのプリズムだった。
そのプリズムごと突っ込んでいったのだ。
そしてランメルスが斬撃の視線を放とうとした瞬間に屈折を利用して光軸をずらしたのだった。
「もう終わりだ、ランメルス。少しでも動いたらこいつでお前の首を断ち切る」
テツヤの宣告にランメルスは首をうなだれた。
「ゴルド市民よ、我はフィルド国王ウィゼル・フィルドである」
その時、市内中にウィゼル王の声が響き渡った。
「卑劣な反逆者、ランメルスがゴルドにて反乱を起こしているがそれは失敗に終わった。我はこれより騎士隊を指揮し王城を奪還する!市民よ、反逆軍を恐れるな!」
「ソラノが上手くやってくれたみたいだな」
テツヤは軽く息をついた。
この市内中に響く声は恐らくソラノの風魔法によるものだろう。
そしてこの宣言がされたということは王は無事だということだ。
「どうする?お前の野望は潰えたみたいだぞ」
テツヤは首をうなだれたままのランメルスに尋ねた。
「フ、フフフ…フフフフ、フハハハハハハ!」
その時、突然ランメルスが笑い出した。
「潰えた?たかが町一つ、城一つ落としたのを失敗した位で?この私が失敗しただと?」
高らかに叫びながらなおも笑いを止めない。
「これしきのことを失敗と呼べるものか、いや、呼ばせはしないとも!今はこの場を退き、いずれ力を蓄えてまた戻って来ればいいだけのことなのだから!」
「て、手前、強がってるんじゃ…」
テツヤはランメルスを黙らせるために剣を振り上げようとして気付いた。
自分が土中の鉱物より生み出した剣が己の意思に反して全く動こうとしないことを。
「そうそう、一つ私の力を紹介し忘れていたよ。私は刃物を持った物であればなんであれ私の意のままに操ることができるんだ。これが私の能力の一つ、”制剣”だよ」
ランメルスはゆっくりと立ち上がった。
形勢逆転、と言いたいところだが実際はそれほどでもない。
お互いの能力が拮抗しているためランメルスと言えども剣の自由を奪ったとは言え自分の制御下に置くことは出来なかった。
ならば振り向いた瞬間に斬撃の視線で決着をつけるのみ。
「そしてテツヤ、これで本当にさよならだ」
そして振り向きざまに斬撃の視線を放つ。
斬った!
ランメルスは勝利を確信した。
しかしランメルスの目に映ったのはテツヤではなく他ならぬランメルス自身だった。
「は?」
それがランメルスの最期の言葉だった。
両目を境にしてランメルスの頭部が宙を舞う。
テツヤはランメルスが斬撃の視線を放つことを見越してあらかじめ鏡を作り上げていたのだ。
しかも反射率97%を誇るスパッタリングミラーだ。
「言っただろう、これで終わりだと」
テツヤの言葉がランメルスに届いたかどうかはわからなかった。
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