外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
29.地下水路を行く
店を出た後で俺は辺りを見渡しながら感心した。
建ち並ぶ建物はどれも一目で古いとわかる石造りのものばかりだ。
「このゴルドは千年の歴史を持っている。フィルド王国はおろかミネラシアで最も歴史を持った都市なのだぞ」
ソラノが得意げに鼻腔を膨らませた。
「ソラノはゴルド出身でね。この都市に誇りを持っているのだよ」
アマーリアが耳打ちしてきた。
なるほどね。
「そうなると、地下にもかなり古いものが埋まってるということなのかな」
何気なく石畳に手を置いてみた。
「ああ、都市中に古い地下水路や地下道が走っていると言われているね。あまりに古すぎて全容を知っている者は王城の中にもいないのだとか。今ではほとんど使われていないよ」
そうなのか。確かに探査してみると地下に何層にも渡って地下道が走っているのがわかる。
?
「…アマーリア、地下道は使われていないと言ったよな?」
「ああ、いくつか使われているものは地下水路だけだが、それがどうしたのだ?」
「その使われていない地下道を、今まさに通っている奴がいるぞ」
「それは確かなのか?」
アマーリアが真剣な顔で聞いてきた。
「ああ、地下十五メートルくらいを向こうに走っている地下道があって、そこを四人くらい歩いている」
「……テツヤ、君の力でそこに行くことは可能か?」
アマーリアの口調は既に調査隊長のものに変わっていた。
「ああ、今すぐできる」
「ならばやってくれ。これは確かめる必要がありそうだ」
俺はすぐに地上からその地下道まで続く穴を開けた。
「本当にこんなことができるのだな…」
ソラノが驚きの声をあげている。
そう言えばソラノが俺の力を見るのはこれが初めてだったか。
「よし、ソラノ。私たちを地下まで降ろしてくれ」
「承知しました!」
その言葉と共に足下にあった地面の感覚が消えた。
ソラノの力でみんな宙に浮いている。
俺たちは滑るように地下道へと降りて行った。
俺は降りて行きながら通ってきた穴をふさいだ。
当然ながら地下道は完全な闇だった。
キリが俺の服にしがみついているのがわかる。
「ソラノ、気配はどうだ?」
アマーリアが囁くように聞いた。
地下道ではほんの小さな音でも遠くまで響き渡る。
「問題ありません。この周囲に気配はありません」
どうやらソラノは探知のスキルも持っているらしい。
流石はA級魔法戦士だ。
俺の探知も周囲に人がいないことを知らせている。
アマーリアがライティングの呪文を唱えた。
手に持った魔法石があたりを明るく照らす。
そこは石造りの地下水路だった。
高さは俺の身長より少し高いくらいだからかなり大きな地下水路だ。
足首くらいまで濁った水が流れていて凄まじい悪臭が鼻を突く。
「大気操作」
ソラノが風属性の呪文を唱えると気が遠くなりそうな悪臭が消えた。
「助かったよ。あたりを調べる前に悪臭で死ぬところだった」
「これを持っていてくれ」
俺に魔法石を渡すとアマーリアとソラノは音もなく剣を抜いた。
「ソラノ、音を消せるか?」
アマーリアがソラノに尋ねた。
ソラノが頷き、小声で呪文を唱えた。
「サウンドターミネート」
とたんに辺りから音が消えた。
「空気を操作して俺たちが発生させる音を相殺させているのか。凄いスキルだな」
「本来ソラノはこういう繊細な技が得意なのだけど本人はライトニングのような派手な技が好きでね」
「ほっといてください!」
困ったものだ、という顔をするアマーリアにソラノが頬を膨らませてむくれている。
「ただしこの技は向こうの音も聞こえなくなるという欠点がある。探知を任せてもいいかな?」
「もちろんだ」
アマーリアの言葉に俺は頷いた。
「しかしこの水は邪魔になるな、水流操作」
アマーリアの呪文で足元を流れていた水が左右に分かれた。
これなら波紋をたてずに移動することができる。
流石は王立騎士隊と調査隊だ、やることに無駄がない。
俺たちは地下水路をゆっくりと進んで行った。
先頭は俺、その後にソラノ、そしてキリ、しんがりはアマーリアだ。
◆
しばらく進んだところで俺は拳をあげた。
それを合図にみんなの動きが止まる。
「角を曲がったところに人がいる」
俺の言葉に緊張が走る。
「幸いこの明かりはまだ気づかれていないみたいだけど、どうする?」
「問題ない。みんなここからは音をたてないように頼む」
ソラノが呪文を解除し、鞘に仕込んでいた小刀を取り出した。
「フライングダガー」
ソラノの呪文と共に小刀が宙を飛び、角を曲がって消えていった。
やがて「うぐっ」というくぐもった声が聞こえたかと思うと洞窟内の人の気配が消えた。
しばらく待って人が増える気配がないことを確認した後に俺たちは再び進み始めた。
やがて地下水道を塞ぐように作られた扉の前にやってきた。
そこには首元に先ほどの小刀を突き立てた男の死体が転がっていた。
「大したもんだな」
「探知スキルと操作スキルを使えばこの位は造作もない」
感心する俺に事も無げに答えるソラノ。
可愛い顔をしてはいるけど流石は王立騎士隊に選ばれたA級魔法戦士だけのことはあるな。
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