外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
17.新しい生活
新居に移ってからしばらくは平和に過ごしていた。
キリが生活の面倒を見てくれるおかげで俺の方は思う存分自分の能力の研究にいそしむことができた。
意外にも(こんなことを言うとキリに怒られるが)キリは料理や家事全般がかなり得意だった。
キリが言うにはオニ族は凝り性が多いから料理や職人芸に秀でている者が多いのだとか。
特に料理は何を作っても美味しくて料理がそんなに得意じゃない俺としては大助かりだ。
そのうち日本の料理も教えてみよう。
家には池のある小さな中庭もあり、俺はそこで一週間ずっと自分の能力の研究をしていた。
そこで分かったことが幾つかある。
まず、俺が構造を理解していないものは作り出せないということ。
例えば銃を作ろうと思っても構造を理解していないからただ銃の形をした鉄の塊でしかない。
弾丸も同様だ。
同じようにスマホのバッテリーを作る事もできないから俺が持っているスマホはもはや文鎮代わりにしかならない。
その代わりというか、細かな部分は多少ぼんやりしたイメージでも自分の思った通りのものになるみたいだ。
例えば岩石の表面を鏡面にしたいと思った場合でもミクロン単位で岩石を制御する必要はなく、鏡面になった岩石を思い描くだけでそれが実現する。
キリを風呂に入れた時に作った鏡で気づいていたけどこれは嬉しい発見だった。
あとは人体内のミネラル(鉱物)を操作するのはかなり魔力を消費するけど土中の鉱物を操作するのはあまり魔力を消費しないということも分かった。
新居の庭でしばらく土中の鉄やら銅やらを取り出していたけど倒れることはなかった。
どうやらテナイト村で倒れたのは村人の体内からヒ素を取り出すのがかなりの負担だったみたいだ。
どの位魔力を使ったら気絶するのかはまだわからない。
少なくとも周りの土から金属のインゴットや鉱物の結晶を作ってそれを加工しても問題はないみたいだ。
「ご主人様~、お客様だよ~」
キリの声がした。
この一週間でこの町での俺の仕事ができつつあった。
ことの発端は一週間前にキリと一緒に料理道具屋に行った時のことで、その時一人のお客が壊れた鍋をお店に持ち込んできたのだ。
ところがそのお店では修理することができないらしく、たまたまその場にいた俺がその鍋を直したらそれが評判を呼んだらしく、最近は修理の依頼が舞い込んでくるようになっていた。
なんでもこの町内には修理工がいなくて、みんな城内の高い修理屋に持ち込んでいたらしい。
今日持ち込まれた修理は車輪の軸受けが壊れた荷車だった。
「頼むよ、こいつが動かないとおまんまの食い上げになっちまうんだ」
依頼主は近所にパン屋を営んでいるオークのオクゾーさんだ。
ここのクルミとレーズンが入った糖蜜パンが絶品なんだ。
修理自体は簡単だけど、ちょっと新しいことを試してみるか。
まずは素材となる鉄のインゴットを持ってきて軸受けにあてる。
そしてイメージする。
イメージするのは無数の鉄球とそれを囲む内側と外側のリング、鉄球の位置を保持するカバーだ。
内側のリングは車軸と固定し、外側のリングは車輪の軸受けに固定する。
これで簡易的なボールベアリングを付けた車輪と車軸が完成だ。
「す、凄え!今までの荷車とは比べ物にならないくらい軽くなったぞ!まるで勝手に動いてるみてえだ!」
オクゾーさんが荷車を押して仰天している。
ミネラシアで使われている軸受けは車軸と車輪の間に取り付けるリングのような形をした滑り軸受けくらいで、俺が作った転がり軸受けはこの世界に存在すらしてない。
滑り軸受けと転がり軸受けの摩擦係数は百倍以上違うからオクゾーさんが驚くのも当然だろう。
「こ、こいつは直ったなんてもんじゃねえ!これだったら今までの倍は配達できそうだ!ほんとにありがとよ!パンが欲しくなったらいつでも言ってくれよな!」
オクゾーさんはお礼を言って山ほどパンを置いて帰っていった。
この仕事の代金は銅貨五枚だった。
「ご主人様は欲がなさすぎるよ」
キリが庭に置いた瓶の中から銅貨を回収して口を尖らせた。
俺の仕事は基本的に代金というものがなくて依頼者がめいめい好きな額を置いていくようにしている。
「そうは言ってもなあ~。いちいち代金設定するの面倒くさいし、お金だったらある意味幾らでも生み出せるからなあ」
そう、俺の力を使えば金貨だろうが銀貨だろうがいくらでも土中から作り出すことができる。
仮に硬貨を作り出さないにしてもインゴットを作ってそれを売っても良い。
それにそんなことをしなくてもテナイト村から持ってきたヒ素を魔法薬屋に売ったお金と例の組織から奪ったお金がまだまだ残っている。
あと数年は何もしなくても生きていけるくらいだ。
「そうは言ってもさあ、みんなに良いように使われすぎだよ」
「こういうちょっとした気づかいが地域住民に溶け込む秘訣なんだって」
実際修理の依頼をするようになって地域での俺とキリの評判はうなぎのぼりだ。
最初は俺たちを胡散臭そうに見ていた町の住人たちも今ではにこやかに挨拶をしてくる。
オニ族は他の種族から孤立しがちだからキリのためにも町の住人と打ち解けるのは優先事項だ。
それに今回のオクゾーさんみたいにお金以外に食べ物を差し入れしてくれる人も結構いるから助かってる。
お互いにとっていい関係を築けているならそれで十分だよね。
キリが生活の面倒を見てくれるおかげで俺の方は思う存分自分の能力の研究にいそしむことができた。
意外にも(こんなことを言うとキリに怒られるが)キリは料理や家事全般がかなり得意だった。
キリが言うにはオニ族は凝り性が多いから料理や職人芸に秀でている者が多いのだとか。
特に料理は何を作っても美味しくて料理がそんなに得意じゃない俺としては大助かりだ。
そのうち日本の料理も教えてみよう。
家には池のある小さな中庭もあり、俺はそこで一週間ずっと自分の能力の研究をしていた。
そこで分かったことが幾つかある。
まず、俺が構造を理解していないものは作り出せないということ。
例えば銃を作ろうと思っても構造を理解していないからただ銃の形をした鉄の塊でしかない。
弾丸も同様だ。
同じようにスマホのバッテリーを作る事もできないから俺が持っているスマホはもはや文鎮代わりにしかならない。
その代わりというか、細かな部分は多少ぼんやりしたイメージでも自分の思った通りのものになるみたいだ。
例えば岩石の表面を鏡面にしたいと思った場合でもミクロン単位で岩石を制御する必要はなく、鏡面になった岩石を思い描くだけでそれが実現する。
キリを風呂に入れた時に作った鏡で気づいていたけどこれは嬉しい発見だった。
あとは人体内のミネラル(鉱物)を操作するのはかなり魔力を消費するけど土中の鉱物を操作するのはあまり魔力を消費しないということも分かった。
新居の庭でしばらく土中の鉄やら銅やらを取り出していたけど倒れることはなかった。
どうやらテナイト村で倒れたのは村人の体内からヒ素を取り出すのがかなりの負担だったみたいだ。
どの位魔力を使ったら気絶するのかはまだわからない。
少なくとも周りの土から金属のインゴットや鉱物の結晶を作ってそれを加工しても問題はないみたいだ。
「ご主人様~、お客様だよ~」
キリの声がした。
この一週間でこの町での俺の仕事ができつつあった。
ことの発端は一週間前にキリと一緒に料理道具屋に行った時のことで、その時一人のお客が壊れた鍋をお店に持ち込んできたのだ。
ところがそのお店では修理することができないらしく、たまたまその場にいた俺がその鍋を直したらそれが評判を呼んだらしく、最近は修理の依頼が舞い込んでくるようになっていた。
なんでもこの町内には修理工がいなくて、みんな城内の高い修理屋に持ち込んでいたらしい。
今日持ち込まれた修理は車輪の軸受けが壊れた荷車だった。
「頼むよ、こいつが動かないとおまんまの食い上げになっちまうんだ」
依頼主は近所にパン屋を営んでいるオークのオクゾーさんだ。
ここのクルミとレーズンが入った糖蜜パンが絶品なんだ。
修理自体は簡単だけど、ちょっと新しいことを試してみるか。
まずは素材となる鉄のインゴットを持ってきて軸受けにあてる。
そしてイメージする。
イメージするのは無数の鉄球とそれを囲む内側と外側のリング、鉄球の位置を保持するカバーだ。
内側のリングは車軸と固定し、外側のリングは車輪の軸受けに固定する。
これで簡易的なボールベアリングを付けた車輪と車軸が完成だ。
「す、凄え!今までの荷車とは比べ物にならないくらい軽くなったぞ!まるで勝手に動いてるみてえだ!」
オクゾーさんが荷車を押して仰天している。
ミネラシアで使われている軸受けは車軸と車輪の間に取り付けるリングのような形をした滑り軸受けくらいで、俺が作った転がり軸受けはこの世界に存在すらしてない。
滑り軸受けと転がり軸受けの摩擦係数は百倍以上違うからオクゾーさんが驚くのも当然だろう。
「こ、こいつは直ったなんてもんじゃねえ!これだったら今までの倍は配達できそうだ!ほんとにありがとよ!パンが欲しくなったらいつでも言ってくれよな!」
オクゾーさんはお礼を言って山ほどパンを置いて帰っていった。
この仕事の代金は銅貨五枚だった。
「ご主人様は欲がなさすぎるよ」
キリが庭に置いた瓶の中から銅貨を回収して口を尖らせた。
俺の仕事は基本的に代金というものがなくて依頼者がめいめい好きな額を置いていくようにしている。
「そうは言ってもなあ~。いちいち代金設定するの面倒くさいし、お金だったらある意味幾らでも生み出せるからなあ」
そう、俺の力を使えば金貨だろうが銀貨だろうがいくらでも土中から作り出すことができる。
仮に硬貨を作り出さないにしてもインゴットを作ってそれを売っても良い。
それにそんなことをしなくてもテナイト村から持ってきたヒ素を魔法薬屋に売ったお金と例の組織から奪ったお金がまだまだ残っている。
あと数年は何もしなくても生きていけるくらいだ。
「そうは言ってもさあ、みんなに良いように使われすぎだよ」
「こういうちょっとした気づかいが地域住民に溶け込む秘訣なんだって」
実際修理の依頼をするようになって地域での俺とキリの評判はうなぎのぼりだ。
最初は俺たちを胡散臭そうに見ていた町の住人たちも今ではにこやかに挨拶をしてくる。
オニ族は他の種族から孤立しがちだからキリのためにも町の住人と打ち解けるのは優先事項だ。
それに今回のオクゾーさんみたいにお金以外に食べ物を差し入れしてくれる人も結構いるから助かってる。
お互いにとっていい関係を築けているならそれで十分だよね。
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