外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
12.俺には向かない仕事
その建物の地下に降りるとそこはちょっとした応接間になっていた。
ジョンは奥にあるソファに腰を下ろすと引き出しから煙草を取り出して火をつけた。
地下室には他にも数人の男たちがいて、どいつもろうそくの火を吹き消すのと同じ感覚で人の命を奪ってきたという雰囲気を持っている。
底辺ギルドでくだを巻いている連中とは明らかにまとっている空気が違っていた。
どうやらいきなり当たりを引いたらしい。
「とりあえず歓迎するぜ、テツヤ」
ジョンと名乗った男はどうやらこの組織の中でもかなりの地位にいるみたいだ。
そんな雰囲気を全く漂わせていなかったけど、それこそがこの男の実力のゆえんなのだろう。
「で、ここはなんだ?野郎同士のパーティー会場か?」
「まあそう慌てるなって。何か飲むか?良いワインがあるんだぜ」
ジョンが自分のグラスにワインを注ぎながら言った。
「興味ねえな。金の話をしねえんなら帰らせてもらうぜ」
「まあまあ、最近の若い奴は辛抱ってもんがねえな。俺たちはちょいとした小売業を営んでいてな、そいつを手伝ってもらいてえのよ」
「小売業だあ?」
「ああ、ただし俺たちが扱ってるのはちょいと特殊な商品ばかりでな。商売敵から目を付けられることも多いのよ」
ジョンが煙草を俺に向けた。
「そこでテツヤ、あんたに手伝ってほしいのさ。熱斧のザークといやこの辺でも知られた山賊だったんだぜ。そいつを倒したあんたが手伝ってくれるんならこんなに助かることはねえ」
「金はもらえるんだろうな?」
「そいつは約束する。これは手付金だ」
そう言ってジョンが革袋を投げてよこした。
中には金貨が数十枚入っている。
「悪くないな。話を聞かせろ」
俺は地下室の壁に体を預けた。
「まあ仕事と言ってもそんなに難しくはねえよ。商品を右から左に渡すだけだ。その間にちょいと面倒ごとがあったら……」
ジョンが話を続けていたが、俺の耳には入っていなかった。
無意識的に地下の様子をサーチしていて気付いた事があったからだ。
この地下室には隣にも空間がある。
そして、そこには数十人の気配がある。
どれもこれも……
「……しばらくは補助って感じで動いてもらうが、働きぶりによっては仕事を任せることにもなる。そうすりゃ入ってくる金は段違いに……?」
話を続けていたジョンが不思議そうに俺を見てきた。
「仕事ってのはよ、商品を右から左に渡すことだって言ってたよな?」
俺は尋ねた。
「あ、ああ、その通りだが?」
「その商品ってのは、これの事かっ!」
右手を地下室の壁に叩き付ける。
石造りの壁が音を立てて崩れた。
壁の向こうにあった別の地下室が露わになる。
そこにいたのは十数人の少年少女たちだった。
ボロボロの服を着て、壁が崩れたというのに何の反応も見せずに空ろな目をしている。
「て、てめえ、何しやがる!」
地下室にいた男の一人が叫んだ!
ジョンがその男を手で制する。
「こりゃどういうことだよ、テツヤさんよ。あんた俺たちがパンでも売ってると思ってたのか?」
やれやれ、と言いたげにジョンが煙草をもみ消した。
「言っとくがよ、今更正義漢ぶったって遅えんだぜ。仕事のことはおいおい話すつもりだったが知られちまった以上はやっぱ止めますってのは通じねえよ」
「これが商売だと!ふざけんじゃねえ!てめえらがやってるのはただの人さらいじゃねえか!てめえらは便器にこびりついたクソ以下だ!」
気が付くと俺は叫んでいた。
ジョンが頭を抱えた。
「はあ、お前もういいよ。いらない」
ジョンの合図で地下室にいた男たちがゆらりと動いた。
上階からも駆け下りてくる音が聞こえる。
「ちっとは役に立つかと思ったんだが、とんだ見込み違いだったな」
呆れたようにため息をつくジョン。
「ここにいる奴らをザーク如きと一緒にするなよ。せいぜい後悔しながら死んでいくんだな」
「それはこっちの台詞だぜ、ジョン。こっから先は自分のしてきたことを悔いる時間だ」
◆
「大変です!」
アマーリアは部屋に飛び込んできたソラノの叫び声で目を覚ました。
「城下で魔法による破壊活動が行われていると報告がありました!」
「三十秒で支度する。案内してくれ!」
アマーリアは跳ね起きながら寝巻を脱いだ。
何だか嫌な予感がする。
「これは……」
アマーリアたちがたどり着いたのは完全に崩壊した建物の跡だった。
上階部分は完全に吹き飛んであたりに残骸をまき散らしている。
「!?」
地下に降りていったアマーリアとソラノはその光景を見て目を見張った。
ほぼ半壊した地下室にはボロボロになった男たちが転がっていた。
いや、散乱していたと言っていいくらいだ。
人の形を留めていないものすらいる。
うっ、とソラノが口を押えた。
地下室の中央に立つ影があった。
右手で持ち上げているのはかつてジョンだったものだ。
その影はテツヤだった。
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