外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
11.潜入捜査
「どうですか、彼は?」
テツヤが去り、割れた食器などが片付けられてしばらくした後、アマーリアの元に一人の兵士がやってきた。
アマーリアの部下であり、褐色の肌にベリーショートの銀髪、金色の瞳を持ったダークエルフのセラだ。
「大したものだよ、彼は」
アマーリアはなおもグラスを空けているが、今はビールからワインに切り替えている。
「ソラノと立ち会った時の剣の使い方を見ればわかるが、ああ見えてかなりのやり手だよ。おそらく師事した人が良かったのだろうな。我が国の剣とは違うが太刀筋がまっすぐで迷いがいない」
「問題はこの任務を上手くこなせるかどうかですね」
「それは大丈夫だと思うよ。彼は私の言葉にも全く動揺していなかった。おそらくこうなることを予想していたのだし、言葉通り過去に似たような経験があるのだろう。言葉に一切のブレがなかった」
「しかし、そうは言っても彼は土属性使いなのでしょう?いざという時に使いものになるのかどうか」
「それは偏見というものだよ、セラ君。四大属性、それに聖と魔を合わせた六大属性というのは本来お互いにバランスを取り合っていて優劣はないんだ。土属性だから他に劣るということはないよ」
それに、とアマーリアが続けた。
「彼の土属性の使い方はユニークだ。おそらく地球、という世界に転移した影響なのだろうな。ひょっとしたら我々調査隊、ひいてはこのフィルド王国にとってかけがえのない存在になるかもしれないぞ」
「そういうものなのでしょうか?」
なおも合点がいかないといった表情のセラだったが、アマーリアには不思議な確信があった。
テツヤはいずれフィルド王国のみならずこのミネラシアを左右する存在になるだろうと。
◆
俺は薄暗い路地を歩いていた。
アマーリアとの食事の間に日はすっかり暮れ、光の魔石を使った街灯の明かりがぽつりぽつりと路地を照らしている。
とりあえず向かったのは冒険者ギルド街だ。
ギルドはバーを兼任していることが多く、そこなら俺が目当てにしている連中も立ち寄ってる可能性が高いからだ。
なるべく辺鄙なギルドを選んで中に入る。
中にはラングにあったハインツ冒険者ギルドと同じように、いかにもな連中がたむろしていた。
カウンターでビールを頼み、リクルートボードに目を通す。
ここもやはり大した依頼は貼られていない。
「よお、仕事を探してんのかい?」
店でたむろしていた男の一人が声をかけてきた。
「まあな」
ここはあえてそっけない返事をする。
「だったらいい仕事を紹介するぜ。即金で銀貨十枚だ」
「失せな。そんなはした仕事に用はねえよ」
俺はリクルートボードから目を離す事すらせず一言で切り捨てた。
「っんだとコラ!」
激高した男が立ち上がったが、その声が途端に消えた。
横目で確認すると別の男がそいつの肩を押さえていた。
俺のあとからギルドに入ってきた男だ。
とりたてて特徴のない男だったが、俺に仕事を振ってきた奴はそいつの顔を見て青ざめている。
こいつはさっそく食いついてきたか?
たむろしていた男たちはそそくさと店を出て行き、いまやその店にいるのは俺とその男だけになった。
「あんた、この辺じゃ見かけない顔だな」
男が側に近づいて話しかけてきたが、俺はそれには答えない。
「これは失礼。自己紹介がまだだったな。俺はジョン、ジョン・スミスだ」
それ、明らかに偽名だろ。
「テツヤだ。俺になにか用か」
あえてぶっきらぼうに答える。
「仕事を探してるようだが、なにか良いのは見つかったか?」
「てんで駄目だな。どれもこれも大した金額じゃねえ。雑魚にでもできるような依頼ばかりだ」
「どんな仕事をお探してるんだ?」
「金になるんならなんでもいい。ただしでかく稼げる奴だ。金さえもらえるなら何だってやってやるよ」
「だったらいい話があるぜ。上手くやれば大金だって手に入れられる」
俺はジョンと名乗るその男を見た。
「そんな言葉だけで信用すると思うか?」
「それもそうだな」
ジョンはそう言って笑った。
「それなら”王立騎士隊へ入れなかったテツヤ”に旨い話があるんだが、聞く気になったか?」
「てめえ、それを誰から聞いた?」
俺はジョンの胸ぐらを掴んだ。
ここからが演技力の見せ所だ。
「この界隈じゃお前さんはすっかり有名人なんだよ。山賊ザークを倒したのに王立騎士隊への入隊を断られたってな」
よし、俺が騎士隊に入らなかったことがうまい具合に転がっているみたいだ。
さっきのレストランでの騒ぎも功を奏したかもしれない。
「で、その俺に何の用だ?からかいたいだけだったら相手を間違ってるぞ」
「あんた、金さえ手に入るんなら何でもするんだろ?だったら俺の話を聞いて損はねえぜ」
ジョンという男は俺に胸ぐらを掴まれても平然としている。
胆力はそこそこあるらしい。
俺はジョンから腕を離した。
「いいだろう。話だけは聞いてやる」
「そうこなくっちゃな。ただしここじゃあ駄目だ。場所を変えてもらうぜ」
その言葉に俺は頷いた。
ここから先が本番だ。
テツヤが去り、割れた食器などが片付けられてしばらくした後、アマーリアの元に一人の兵士がやってきた。
アマーリアの部下であり、褐色の肌にベリーショートの銀髪、金色の瞳を持ったダークエルフのセラだ。
「大したものだよ、彼は」
アマーリアはなおもグラスを空けているが、今はビールからワインに切り替えている。
「ソラノと立ち会った時の剣の使い方を見ればわかるが、ああ見えてかなりのやり手だよ。おそらく師事した人が良かったのだろうな。我が国の剣とは違うが太刀筋がまっすぐで迷いがいない」
「問題はこの任務を上手くこなせるかどうかですね」
「それは大丈夫だと思うよ。彼は私の言葉にも全く動揺していなかった。おそらくこうなることを予想していたのだし、言葉通り過去に似たような経験があるのだろう。言葉に一切のブレがなかった」
「しかし、そうは言っても彼は土属性使いなのでしょう?いざという時に使いものになるのかどうか」
「それは偏見というものだよ、セラ君。四大属性、それに聖と魔を合わせた六大属性というのは本来お互いにバランスを取り合っていて優劣はないんだ。土属性だから他に劣るということはないよ」
それに、とアマーリアが続けた。
「彼の土属性の使い方はユニークだ。おそらく地球、という世界に転移した影響なのだろうな。ひょっとしたら我々調査隊、ひいてはこのフィルド王国にとってかけがえのない存在になるかもしれないぞ」
「そういうものなのでしょうか?」
なおも合点がいかないといった表情のセラだったが、アマーリアには不思議な確信があった。
テツヤはいずれフィルド王国のみならずこのミネラシアを左右する存在になるだろうと。
◆
俺は薄暗い路地を歩いていた。
アマーリアとの食事の間に日はすっかり暮れ、光の魔石を使った街灯の明かりがぽつりぽつりと路地を照らしている。
とりあえず向かったのは冒険者ギルド街だ。
ギルドはバーを兼任していることが多く、そこなら俺が目当てにしている連中も立ち寄ってる可能性が高いからだ。
なるべく辺鄙なギルドを選んで中に入る。
中にはラングにあったハインツ冒険者ギルドと同じように、いかにもな連中がたむろしていた。
カウンターでビールを頼み、リクルートボードに目を通す。
ここもやはり大した依頼は貼られていない。
「よお、仕事を探してんのかい?」
店でたむろしていた男の一人が声をかけてきた。
「まあな」
ここはあえてそっけない返事をする。
「だったらいい仕事を紹介するぜ。即金で銀貨十枚だ」
「失せな。そんなはした仕事に用はねえよ」
俺はリクルートボードから目を離す事すらせず一言で切り捨てた。
「っんだとコラ!」
激高した男が立ち上がったが、その声が途端に消えた。
横目で確認すると別の男がそいつの肩を押さえていた。
俺のあとからギルドに入ってきた男だ。
とりたてて特徴のない男だったが、俺に仕事を振ってきた奴はそいつの顔を見て青ざめている。
こいつはさっそく食いついてきたか?
たむろしていた男たちはそそくさと店を出て行き、いまやその店にいるのは俺とその男だけになった。
「あんた、この辺じゃ見かけない顔だな」
男が側に近づいて話しかけてきたが、俺はそれには答えない。
「これは失礼。自己紹介がまだだったな。俺はジョン、ジョン・スミスだ」
それ、明らかに偽名だろ。
「テツヤだ。俺になにか用か」
あえてぶっきらぼうに答える。
「仕事を探してるようだが、なにか良いのは見つかったか?」
「てんで駄目だな。どれもこれも大した金額じゃねえ。雑魚にでもできるような依頼ばかりだ」
「どんな仕事をお探してるんだ?」
「金になるんならなんでもいい。ただしでかく稼げる奴だ。金さえもらえるなら何だってやってやるよ」
「だったらいい話があるぜ。上手くやれば大金だって手に入れられる」
俺はジョンと名乗るその男を見た。
「そんな言葉だけで信用すると思うか?」
「それもそうだな」
ジョンはそう言って笑った。
「それなら”王立騎士隊へ入れなかったテツヤ”に旨い話があるんだが、聞く気になったか?」
「てめえ、それを誰から聞いた?」
俺はジョンの胸ぐらを掴んだ。
ここからが演技力の見せ所だ。
「この界隈じゃお前さんはすっかり有名人なんだよ。山賊ザークを倒したのに王立騎士隊への入隊を断られたってな」
よし、俺が騎士隊に入らなかったことがうまい具合に転がっているみたいだ。
さっきのレストランでの騒ぎも功を奏したかもしれない。
「で、その俺に何の用だ?からかいたいだけだったら相手を間違ってるぞ」
「あんた、金さえ手に入るんなら何でもするんだろ?だったら俺の話を聞いて損はねえぜ」
ジョンという男は俺に胸ぐらを掴まれても平然としている。
胆力はそこそこあるらしい。
俺はジョンから腕を離した。
「いいだろう。話だけは聞いてやる」
「そうこなくっちゃな。ただしここじゃあ駄目だ。場所を変えてもらうぜ」
その言葉に俺は頷いた。
ここから先が本番だ。
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