ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった
47.第8階層青エリア - 第8清水町3 -
「ふう、いい湯だった。やっぱり青の湯は素晴らしいな。これだけでダンジョンに潜る価値があるというものだよ」
温泉に入って上気した顔で美那がやってきた。
いつもの服ではなく温泉で定番の浴衣を着ている。
その後ろからナナと灯美もやってきた。
「こうして再びこの温泉に浸かれるのも君のおかげだな」
そう言いながら休憩所にいた翔琉の横に腰を下ろす。
「いやいや、どう見てもあれは美那さんのおかげですよ。というか俺たちがいなくてもどうにかなっていたんじゃ」
「まあそれは確かにその通りだけどね」
美那はあっさりと認めた。
「それでも君の実力は大したものだよ。とっさの判断力、行動力、運び屋というジョブの使い方、どれをとっても一流の冒険者とそん色ない。少し前にダンジョンに来たばかりなんて信じられないくらいだ」
「そんなに褒められるとなんかむず痒いですね」
「誉めてなどいない。これは正当な評価さ」
そう言うと美那は持っていたコーヒー牛乳で喉を鳴らした。
それも翔琉が運んできたものだ。
結局あれからラットライダーズのメンバーは全員地上に送還して逮捕となった。
ダンジョンで行ってきた強奪行為に対してではなく、全員指名手配中の犯罪者だったからだ。
ラットライダーズのメンバーは羅桐以外も暴力団関係者や特殊詐欺犯、強盗殺人犯など犯罪者のオンパレードだった。
ダンジョンに逃亡していた指名手配犯大量逮捕は紙面を大きく飾ることにもなり、名前こそ出ていないものの翔琉たちの存在はダンジョンでも口の端に上るようになっていた。
ダンジョンにはそういった逃亡犯が今も数多くひそんでいるという。
ともあれ羅桐たちが奪った吸熱石はすべて回収され、それを報酬に翔琉は新たな依頼を受けることになったのだった。
それはラットライダーズに破壊された第8清水町復興のための資材運びだ。
そういうわけであれから1か月、翔琉はひたすら地上と第8層を往復して建築資材や生活物資の運搬をしていた。
そのかいあって第8清水町は目覚しい勢いで元に戻っていった。
青の湯も無事に営業再開し、今日はそれを祝してみんなで入りに来ていたのだ。
「本当にみなさんにはなんとお礼を言っていいのか」
モクレンがお礼を言いながらかき氷を持ってきた。
たっぷりと練乳をかけて果物と餡子を乗せた白くまだ。
「温泉を吸熱石で凍らせた氷で作った白くまだよ。食べとくれ」
「ありがとうございます。この白くまは青の湯のもう1つの楽しみなのだよ」
美那はそう言って白くまにスプーンを突っ込んだ。
「まさかこんなに早く営業再開できるなんてねえ…しかもあの連中もいなくなって…この恩は何をやったって返せるもんじゃないよ」
モクレンはそう言って目尻を押さえ、懐から金属のプレートを取り出した。
「これは青の湯の永久フリーパスだよ。これがあればうちにはいつ来ても入れるからね。どうかもらっておくれ!」
「そんな、悪いですよ」
「いーや、どうしても受け取ってもらうよ。今はこの位しかできないけど、この恩は絶対に忘れないからね!」
「まあまあカケル君、こういう好意は素直に受け取っておく方が為だぞ。申し訳ないと思うならそれば別の形で返せばいい」
美那がそう言ってカードを手にした。
「モクレンさん、これはありがたく頂戴します。ここに来るのは私の楽しみの1つでもあるので喜んで甘えさせてもらいますよ」
「是非そうしておくれ!さあさあ、あんたたちも!」
そう言いながらモクレンがナナと灯美にもフリーパスを配っていく。
「いいのかな?」
「いいに決まっているだろう。無下にするのはかえって失礼というものだよ。ところで…」
美那はそう言うと改めて翔琉に向き直った。
「どうかな?我々のチームに入るという話は考えてくれたかね?」
ラットライダーズ逮捕の後、翔琉は美那からケイブローグに加入しないかと誘われていたのだった。
「私たちもちょうど君のような人材を必要としていたんだ。君なら今すぐにでも私たちについてこれるだろう。それは私が保証する。」
「そのことなんですが…」
翔琉は申し訳なさそうに頬を掻いた。
「ダイゴにも言ったんですけど、やっぱりお断りします。2人から誘われて本当にありがたいんですけど…実はやりたいことも見つかったんで」
「…そうか」
しばらくの沈黙の後で美那が小さく頷いた。
「やるべきことがあるというのなら仕方がないね。それが何なのか聞いてもいいかね?」
「ええ、今回の件で思ったんです。ダンジョンは地上からの物資を必要としてる人がたくさんいるって。でもダンジョンの特性からなかなかそれを運ぶことができないでいる。僕の持つ運び屋というジョブだったらその助けになるんじゃないかと思って」
翔琉はそう答えると美那に頭を下げた。
「より深く潜るのも確かに魅力的なんですけど、僕としてはもっと直接人の助けになることをしたくて…だから、すいません!」
「まあいいさ」
美那はそう言って肩をすくめた。
「それが君の意思なら尊重するしかあるまいよ。なに、ダンジョンに潜り続けるのであればまた会う縁もあるさ。君の活躍を楽しみにしているよ」
「ありがとうございます!」
翔琉は再び美那に頭を下げた。
温泉に入って上気した顔で美那がやってきた。
いつもの服ではなく温泉で定番の浴衣を着ている。
その後ろからナナと灯美もやってきた。
「こうして再びこの温泉に浸かれるのも君のおかげだな」
そう言いながら休憩所にいた翔琉の横に腰を下ろす。
「いやいや、どう見てもあれは美那さんのおかげですよ。というか俺たちがいなくてもどうにかなっていたんじゃ」
「まあそれは確かにその通りだけどね」
美那はあっさりと認めた。
「それでも君の実力は大したものだよ。とっさの判断力、行動力、運び屋というジョブの使い方、どれをとっても一流の冒険者とそん色ない。少し前にダンジョンに来たばかりなんて信じられないくらいだ」
「そんなに褒められるとなんかむず痒いですね」
「誉めてなどいない。これは正当な評価さ」
そう言うと美那は持っていたコーヒー牛乳で喉を鳴らした。
それも翔琉が運んできたものだ。
結局あれからラットライダーズのメンバーは全員地上に送還して逮捕となった。
ダンジョンで行ってきた強奪行為に対してではなく、全員指名手配中の犯罪者だったからだ。
ラットライダーズのメンバーは羅桐以外も暴力団関係者や特殊詐欺犯、強盗殺人犯など犯罪者のオンパレードだった。
ダンジョンに逃亡していた指名手配犯大量逮捕は紙面を大きく飾ることにもなり、名前こそ出ていないものの翔琉たちの存在はダンジョンでも口の端に上るようになっていた。
ダンジョンにはそういった逃亡犯が今も数多くひそんでいるという。
ともあれ羅桐たちが奪った吸熱石はすべて回収され、それを報酬に翔琉は新たな依頼を受けることになったのだった。
それはラットライダーズに破壊された第8清水町復興のための資材運びだ。
そういうわけであれから1か月、翔琉はひたすら地上と第8層を往復して建築資材や生活物資の運搬をしていた。
そのかいあって第8清水町は目覚しい勢いで元に戻っていった。
青の湯も無事に営業再開し、今日はそれを祝してみんなで入りに来ていたのだ。
「本当にみなさんにはなんとお礼を言っていいのか」
モクレンがお礼を言いながらかき氷を持ってきた。
たっぷりと練乳をかけて果物と餡子を乗せた白くまだ。
「温泉を吸熱石で凍らせた氷で作った白くまだよ。食べとくれ」
「ありがとうございます。この白くまは青の湯のもう1つの楽しみなのだよ」
美那はそう言って白くまにスプーンを突っ込んだ。
「まさかこんなに早く営業再開できるなんてねえ…しかもあの連中もいなくなって…この恩は何をやったって返せるもんじゃないよ」
モクレンはそう言って目尻を押さえ、懐から金属のプレートを取り出した。
「これは青の湯の永久フリーパスだよ。これがあればうちにはいつ来ても入れるからね。どうかもらっておくれ!」
「そんな、悪いですよ」
「いーや、どうしても受け取ってもらうよ。今はこの位しかできないけど、この恩は絶対に忘れないからね!」
「まあまあカケル君、こういう好意は素直に受け取っておく方が為だぞ。申し訳ないと思うならそれば別の形で返せばいい」
美那がそう言ってカードを手にした。
「モクレンさん、これはありがたく頂戴します。ここに来るのは私の楽しみの1つでもあるので喜んで甘えさせてもらいますよ」
「是非そうしておくれ!さあさあ、あんたたちも!」
そう言いながらモクレンがナナと灯美にもフリーパスを配っていく。
「いいのかな?」
「いいに決まっているだろう。無下にするのはかえって失礼というものだよ。ところで…」
美那はそう言うと改めて翔琉に向き直った。
「どうかな?我々のチームに入るという話は考えてくれたかね?」
ラットライダーズ逮捕の後、翔琉は美那からケイブローグに加入しないかと誘われていたのだった。
「私たちもちょうど君のような人材を必要としていたんだ。君なら今すぐにでも私たちについてこれるだろう。それは私が保証する。」
「そのことなんですが…」
翔琉は申し訳なさそうに頬を掻いた。
「ダイゴにも言ったんですけど、やっぱりお断りします。2人から誘われて本当にありがたいんですけど…実はやりたいことも見つかったんで」
「…そうか」
しばらくの沈黙の後で美那が小さく頷いた。
「やるべきことがあるというのなら仕方がないね。それが何なのか聞いてもいいかね?」
「ええ、今回の件で思ったんです。ダンジョンは地上からの物資を必要としてる人がたくさんいるって。でもダンジョンの特性からなかなかそれを運ぶことができないでいる。僕の持つ運び屋というジョブだったらその助けになるんじゃないかと思って」
翔琉はそう答えると美那に頭を下げた。
「より深く潜るのも確かに魅力的なんですけど、僕としてはもっと直接人の助けになることをしたくて…だから、すいません!」
「まあいいさ」
美那はそう言って肩をすくめた。
「それが君の意思なら尊重するしかあるまいよ。なに、ダンジョンに潜り続けるのであればまた会う縁もあるさ。君の活躍を楽しみにしているよ」
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