火事場の超・馬鹿力~絶対に負けない超逆転劇~

ハクセイ

パーティ!そのニ

「テメェ!俺が先に目をつけてたんだ!横入りするんじゃねー!」


「ああ?!俺の方が先だ!テメェの方こそ邪魔するんじゃねえよ!!」


「やんのか?コラ!」
「上等だ!コラァ!」


「あちらにとても美味しいスープがありましたので、ご一緒にいかがですか?酸味がきいていてサッパリとした味わいでしたので、食べやすいですよ」


「はっ!貴様のような弱小貴族に、このお方が釣り合うはずがなかろう。レディそのような弱小貴族ではなく、伯爵であるこの私がお相手になりましょう。ささ、こんな下賎ものなど放っておいて、あちらでごゆるりと話しましょうぞ」


「はっ!ロクに剣を握ったこともないボンボン共が何を言ってる?武力のぶの字も知らないテメェらじゃ、お嬢さんを守れるわけがないだろ!お嬢さん!あんなナヨナヨした男よりも俺のような強いに男にこそ、お嬢さんは相応しい!さあ、こっちに!」


 ……なにこれ?
 なんでみんな僕のところに来んの?
 馬鹿なの?みんな馬鹿なの?
 ……女装が似合ってることくらい分かってる。けどさ、女装だよ?女装だからね?大事な事だから二回言ったよ?それなのに告白するなんて、頭がおかしいと思うよ?


 だいたい僕のことよく知りもしないくせに「好きだ」なんて、そんな薄っぺらいもの僕はこれぽっちも信用できない。


 異性からは付きまとわれて、同性からは恋敵として勝手に敵視される。


 極めつけは断わると、「モテるからっと言って、調子に乗るなよ?」なんてことを言ってキレてくる始末だ。
 ……手に負えない。


 さて、話を戻して、見てよ、この女性たちのあの恨めしい目つき。
 ……めちゃくちゃ怖いの。分かる?
 あれ?あの人見たことある。あの人は……まさかアカマルちゃん?
 あ、目が合った。


「******」


 ……なんか口ずさんだ!!!?
 え、呪いの言葉とかじゃないよね!
 まだ死にたくないよ!僕!?


「ぼ、僕に来るぐらいなら、周りの女性に行った方がまだいいのではないですか?皆さんとても綺麗な人ばかりじゃないですか。ほら、そこの全身真っ黒で髪の毛がツヤツヤしてる長い髪の女性とかどうですか?きっと僕よりも可愛いですよ?」


 ……おっ、アカマルちゃん嬉しそう!良かった!


 これで僕の危機は去った――


「ボクだと?」


――どうやら危険とは依然として身近に潜んでいるものらしい。


「さっきから、ずっと引っ掛かりを感じていたが、……もしや?」


 これって言わせたらかなりまずい?……まずいよね。
 男だとバレたら一巻の終わり、僕は死刑。
 まずい!!誤魔化さなきゃ!!


「あの……「ボクっ娘さん!私のことを虐めてくれませんか?」」


「あ、そういうのいいです。てか、予想外の反応しないでくれます?気持ち悪いです」


 ……僕の勘が告げている。この人は絶対に関わってはいけない部類の人だ。


「…………。」


「…………。」


「グハァ?!」
 え!?なんで、急にダメージ受けてんの?
 どこから攻撃されたの?


「……な、なんて辛辣な言葉。……だが、なんだ。この何とも言えない気持ちは。……喜びの感情?私は今、幸せを感じてるのか?ボクっ娘、頼む!もっと私に、辛辣な言葉を浴びさせてくれないか?!」


「すみません。この変態どうにかしてくれませんか?」


「グフッ?!いい口撃だな……」


「あ、この人、もうダメだ」


「ゴフッ……。あ…ありがとう。…………我が人生に一片の悔いなし」


「あ、従業員さーん。すみません!ひとり倒れたので、運んでください」


――変態退場。


 ふぅ。僕は一息つき、顔を上げと周りを見渡す。
 すると周りの人達は――固まっていた。
 まるで、豆鉄砲を食らった鳩みたいな顔だ。
 あははは!笑える!
 はははは……はぁ……もう、いや。


「ち、父上!どうされたのですか?……くそっ!一体誰がこんなふざけた真似を!!」


 ん?この気の強そうな声、まさか……!
 ……見覚えのある透き通るような青色の髪と瞳。
 間違いない、あの人だ!!


「おい、貴様か!父上を「ティーナ!」ーーグハァ?!」


 まっ、待って!
 それは違う、違うんだ!!


「…ユ」
「ユ?」
「ユメか?これは。こんな幸せな日が来るなんて。……ありがとう。名前は知らないが君のおかげで夢が叶った。本来なら一発ブン殴るつもりだったが、君はもう既に私の妹だ。今日の所は大人しく帰ることにしよう。そこの人、すまないが肩を貸してくれないか?」






――ティーナ退場……させてなるものか!!




「ティーナ姉さん!「グハァ」ティーナ姉さん!「グ、グフ……」僕です。ユーリです」




「…………あり…がとう…」






――ティーナ……退場


「えええええええええええええええ!!!?」






 …………冗談でしょ?






「ホ―ン。ただ者じゃねーとは思ってたが、まさかダスティネスのおっさんとティーナを言葉だけで倒すとはな。てめえの恩寵の能力か?面白い能力だ。おいそこのオマエ。俺と戦え!」


 ……もう、ほっといてよ。お腹いっぱいなんだよ……。


「おいこら!無視してんじゃねーぞ」


 分かったよ。向けばいいんでしょう?向けば。
 僕は渋々振り返る。


 そして視界に現れた男は変な格好をしていた。


 全身を革の衣類で包みこみ、黒色で統一された服に鶏冠のような形をした赤い髪。


 袖の無しのベストを素肌に身につけ、肩にはトゲドゲした金属の鎧。


 上着に関してはもはや、裸同然。袖の無いジャケットをじかに着るという暴挙。


 ズボンはあちこち破れ、ボロボロのものを着ている。


 なんというか……凄い弱そう……出てきた瞬間やられそうな。


「ああ?誰が雑魚キャラだ!てめえ!なめてんのか?」


 心の声を読まれた!?


「てめえ!コノヤロー!!……いいぜ、そこまで言うのなら、俺様の力見せてやる……。この六龍将【】の二つ名を持つホーン様を敵に回したこと後悔しながらあの世にいきな――「ドズン!!」」


 殴られる。僕がそう思ったとき、目の前に何かがよぎった。
 走馬燈かな?一瞬そう思ったが、どうにも感じが違った。
 目に映り込んできたのは……メイドさんだった。


「……え?」


「ホーン様。あまり力を大っぴらに見せびらかせるものではありませんよ?それに無抵抗の女性に手をあげようとするその性格。腐ってるんですか?そんな風にあなたを育てた覚えはありませんよ?帰ったら説教です」


「ま……まて、アルベルタ。俺はーー…」


「今すぐ、その口を閉じなさい。このクズ」


「……。」


 きっと今の僕は、豆鉄砲を食らった鳩のような顔をしていることだろう。
 この人誰なのか知らないけど、助けてくれたのかな?
 いいメイドさんだな……。


「ありがとうございます。おかげで助かりました」


「いえ、こちらの責任ですので」


 メイドさんは淡々とした表情でそう口にすると、謝罪の言葉を僕に述べ始めた。


「大変申し訳ありませんでした。主がこういう行動をとってしまったのも私の教育不足のせい。私にも責任があります。慰謝料としてこの金貨をお渡ししますので、どうかお許し頂けないでしょうか?」


 メイドの女性は深々と頭を下げながらそう言う。


「いえ、慰謝料はいりません。私はなにも怪我していないのですから。お気にならさずに」


 あとから、女装してるってバレたら、面倒だし。


「しかし――…」


「ほんとに気にしていないので!!」」


「では、お言葉に甘えさせて。私、アルベルタと申します。あなたのお名前をお伺いしても?」


「……まあ、良いですけど、ぼ…私は、ユーリ。ユーリ・フィリドールです」


「ありがとうございます。ユーリ・フィリドール様ですね。覚えておきます」


『『『『『俺たちもしっかり覚えたぜ』』』』』
   ※モブたち


「お見苦しい所をお見せしました」
   メイド服の女性は最後に、周囲の人達にそう言うと、会場を去っていった……と、思ったらこっちに来た!!




「あ、そうそうお困りのようでしたら、***********」


 なるほど。その手があったか。
 そんないい手があったなんて気が付かなかったよ。


「あ、もうこんな時間。楽しい時間は過ぎるのは早いですわね。ですが、あまり帰りが遅くなったら家族が心配いたしますので帰ります」


 そして、僕は帰ろうとする素振りを見せながら、「あ、そうでした……」と思い出したかのように言う。


 最後にこれだけは言っておきたい……という雰囲気を醸し出しながら、


「私が好きな男性は力が強い人でも、お金のある人でも、賢い人でもありません。私が好きな異性はのある人です。例えばそう……龍に戦いを挑み行った先日の兵士みたいな人達なんかとってもいいですよね♡」


 と、すこし媚びた声で言う。
 ……よし、これで指示通りの動きが出来たはずだ!


 後は、隣にいるアルベルタさんとその脇に抱えられているホーン君と共に会場を退場する。


――雑魚キャラ、ホーン&メイド、アルベルタ&謎の美女、ユーリ退場














――帰りの馬車にて。


 まさか、好みのタイプを話すことが解決方法とは思わなかったな。
 さすがメイドさん、現場でたたき上げられてきただけのことはある。


 それに、嘘偽りのない言葉だし!
 僕を養ってくれて、平穏な生活を提供してくれる勇気のある人待ってます!







 後日……王都内での武器屋の売れ行きがもの凄く上がったらしい。
 ついでに軍に入隊希望するものも急増したらしい。

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