ピーターパンは帰れない。
6-3
「またって……いつも変なところに隠れるの?」
「そうだよー。この前だって、そうだったよね」
ヒイが言うと、
「そう、だった?」
とセイは首をかしげた。
ヒイが腕を動かし、空の方を指さす。
「前はあの星に乗って隠れてたでしょーっ!」
へ? 星にぶら下がってたの? それとも乗ってたの?
「ええと……どうやって行ったの?」
わたしが聞くと、セイは一つ溜息をついて、
「ひ・み・つ」
と言った。
「あのね、人は、少しミステリアスな方が、魅力がある、よ」
いや、そうじゃなくてさ……もういいや。
「じゃあ次は、先に見つかったおねえちゃんがオニね」
そういって、二人はすぐに走り出した。
わたしは、目をつむり数をかぞえる。
いくつ数えればいいんだろう? 十……は少ないかあ。じゃあ、百? ちょっと長いかなあ。
とりあえず、五十のところで、
「もう良いかーい?」
と確認してみる。
――返事はない。
もう探し始めてもいいのかな。
辺りを見回してみる……が、当然二人の姿が見えるはずもない。
二足歩行のウサギの出てきたイカ型のロケットが、絵に描いたような赤とオレンジの炎をあげながら、真っ黒の海へと飛んでゆく。一つだけ付いた窓からこちらを見ている気がしたので、わたしは手を振った。
ウサギって、なんて鳴くんだろ?
二人を探して歩き回る。そんなに遠くへは行かないはずだからと、近場の物陰を探しまわる。
うーんと、あとどこ探してないかな。
……ああ、あそこか……あそこは、さすがにいないよね。
その場所に近づいてみる。そこは、三角形の建物の残骸。わたしが先ほど隠れていた場所。
「誰か居ますかあ?」
と確認するように中に声をかける。
「だ、誰もいません事ですわよっ」
その、誰もいないという空間から、無理に高くして、震える女の子の声が返ってきた。
少ししゃがみ、中を覗き込む。
「み~つけたっ」
さっきわたしが座っていた場所と、同じ場所に同じ形でヒイが座っていた。声をかけると、すねたように唇をとがらせながらその場所から出てくる。
「どうして、同じ場所に隠れてたの?」
「だって、さっきと同じ場所に隠れてるなんて誰も考えないでしょ。だから……」
「まあ、それは、そうだけどさ」
付近を見回し、セイを探す。
ヒイは見つかって悔しいのか、ふてくされているのか、三角形の残骸の横に座り、どこか空中を見つめている。
さて、他にどこか隠れられるような場所あったかな? もしかして、遠くまで行っちゃった?
相手はあのセイだから油断できない。そう心の中で念じながら探し続ける。
――見つからない。
近くの物陰は全部探したはず。なのに、見つからない。
そういえば、ヒイとセイが二人でかくれんぼした時に隠れてた場所って……。
「ピーターパンは帰れない。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
1,392
-
1,160
-
-
3万
-
4.9万
-
-
450
-
727
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
5,217
-
2.6万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
8,191
-
5.5万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
6,681
-
2.9万
-
-
14
-
8
-
-
89
-
139
-
-
218
-
165
-
-
2,534
-
6,825
-
-
1,000
-
1,512
-
-
614
-
1,144
-
-
62
-
89
-
-
398
-
3,087
-
-
33
-
48
-
-
6,237
-
3.1万
-
-
71
-
63
-
-
104
-
158
-
-
27
-
2
-
-
116
-
17
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
265
-
1,847
-
-
83
-
2,915
-
-
215
-
969
-
-
3,224
-
1.5万
-
-
2,860
-
4,949
「現代ドラマ」の人気作品
-
-
363
-
266
-
-
208
-
139
-
-
159
-
143
-
-
139
-
71
-
-
139
-
124
-
-
111
-
9
-
-
39
-
14
-
-
28
-
42
-
-
28
-
8
コメント