フォーの聖所
page53
「ん~。そうか。これってたぶん、マジックチャントの、一種って感じ?」
「チャント? それは何ですか?」
あたしのそばで、リリアがこっそりささやいた。
「敵や味方の状態を変える、魔法の歌スキル、みたいな感じだと思う。今のこの場合は、鎮静効果とか? そっち方向の、マジックチャントっぽい。なんかでも―― 魔法とかスキルとか抜きにしても。とってもいい歌ね。声もきれい。聴き惚れちゃう」
「なんだかドイツ語のようにも聞こえますね」
「…そうなの? リリアってば、あなたドイツ語できる人??」
あたしはちょっぴり尊敬の眼差しで、リリアの顔をのぞきこむ。
「いえ。なんとなく、です。音が、そんな感じに聴こえる気がするだけです。あたしも、歌詞はぜんぜん、わからないですから」
「さて。ひとまず、サーペントたちの攻撃モードは、解けたと思います」
シーマが―― 人形のシーマが、歌をとめて。音もなく、あたしのそばまですべるように移動してきた。
「ほら、見てください。帰っていきますよ。ほら、」
船のへりに降り立って、シーマが水の方を指さした。
大蛇たちが―― 潜っていく…? ぜんぶそろって、水底の方に。巨大な体をゆすって、くねって。けど―― 巨体に似合わず、とても静かに。ここの水面にまでは、わずかの波も立てない感じで。はるかに澄み切った深い深い水の底へ。散っていく。戻っていく。気の遠くなるような、深みの底へ――
「チャント? それは何ですか?」
あたしのそばで、リリアがこっそりささやいた。
「敵や味方の状態を変える、魔法の歌スキル、みたいな感じだと思う。今のこの場合は、鎮静効果とか? そっち方向の、マジックチャントっぽい。なんかでも―― 魔法とかスキルとか抜きにしても。とってもいい歌ね。声もきれい。聴き惚れちゃう」
「なんだかドイツ語のようにも聞こえますね」
「…そうなの? リリアってば、あなたドイツ語できる人??」
あたしはちょっぴり尊敬の眼差しで、リリアの顔をのぞきこむ。
「いえ。なんとなく、です。音が、そんな感じに聴こえる気がするだけです。あたしも、歌詞はぜんぜん、わからないですから」
「さて。ひとまず、サーペントたちの攻撃モードは、解けたと思います」
シーマが―― 人形のシーマが、歌をとめて。音もなく、あたしのそばまですべるように移動してきた。
「ほら、見てください。帰っていきますよ。ほら、」
船のへりに降り立って、シーマが水の方を指さした。
大蛇たちが―― 潜っていく…? ぜんぶそろって、水底の方に。巨大な体をゆすって、くねって。けど―― 巨体に似合わず、とても静かに。ここの水面にまでは、わずかの波も立てない感じで。はるかに澄み切った深い深い水の底へ。散っていく。戻っていく。気の遠くなるような、深みの底へ――
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
4112
-
-
29
-
-
89
-
-
2
-
-
59
-
-
4405
-
-
58
-
-
221
-
-
39
コメント