フォーの聖所
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「うーん。困ったな。サーペントの何体かは、攻撃モードに入ろうとしてますね。これは何とかしないと」
シーマが言って、首を何度か左右に振った。それほど慌てた感じでもなく、ちょっぴり思案をしてる感じで。
「じゃ、二人は舟の底に座って。そこから動かないでください。僕が鎮めます」
「しずめる? しずめるって何よ??」
「静かに。ふたりは声を出さないで。そして動かないでください。これ以上、サーペントたちを不要に刺激しないように」
へさきの上、2メートルくらいの高さに浮遊し。
人形のその子が―― 目を閉じて。空中で静止した。
同時に舟も動きを止めた。今そこにあるのは、ザブザブと舟の横を打つ波音。澄み切った湖底からは、何十メートルもありそうな大蛇が、つぎつぎ湧き出して。たがいに絡み合いながら―― うねうねと、水のなかでのたくっている。ザブザブと、巨体がたてる多くの波が、舟を下から突き上げる。揺れる。揺れる! なにこれ。本気でもう、ヤバくない??
ただ1匹だけでも、たぶんしっぽの一撃で舟そのものを沈めてしまいそうなイキモノなのに―― それがもう、無数だ。ゲームとわかっているけれど。これはゲームと、心で何度も復唱しても。わき起こってくる恐怖感は、まぎれもなく本物だ。
「ねえ、アリーさん。あの子はいったい、今から何を――」
あたしの腕をギュッと握ったリリア。その腕を通して、その子の震えがこっちまで伝わってくる。
「しっ。黙って。声出すなって、言ったよあの子。ひとまずあの子にまかせよう。今はとにかく――」
あたしはリリアを黙らせて。
強く、その子の肩を抱き寄せた。あたしも怖い。正直言って。
空中に静止し、目を閉じたシーマの体が。
いま、かすかに白く光りはじめた。
白い光が、薄暗い洞窟内部にさざ波のように広がって。水の中にも、静かに深くしみてゆく。
そしてそのシーマが目をひらく。色素の薄い青の瞳が、どこか遠くに視点を定めた。
シーマが言って、首を何度か左右に振った。それほど慌てた感じでもなく、ちょっぴり思案をしてる感じで。
「じゃ、二人は舟の底に座って。そこから動かないでください。僕が鎮めます」
「しずめる? しずめるって何よ??」
「静かに。ふたりは声を出さないで。そして動かないでください。これ以上、サーペントたちを不要に刺激しないように」
へさきの上、2メートルくらいの高さに浮遊し。
人形のその子が―― 目を閉じて。空中で静止した。
同時に舟も動きを止めた。今そこにあるのは、ザブザブと舟の横を打つ波音。澄み切った湖底からは、何十メートルもありそうな大蛇が、つぎつぎ湧き出して。たがいに絡み合いながら―― うねうねと、水のなかでのたくっている。ザブザブと、巨体がたてる多くの波が、舟を下から突き上げる。揺れる。揺れる! なにこれ。本気でもう、ヤバくない??
ただ1匹だけでも、たぶんしっぽの一撃で舟そのものを沈めてしまいそうなイキモノなのに―― それがもう、無数だ。ゲームとわかっているけれど。これはゲームと、心で何度も復唱しても。わき起こってくる恐怖感は、まぎれもなく本物だ。
「ねえ、アリーさん。あの子はいったい、今から何を――」
あたしの腕をギュッと握ったリリア。その腕を通して、その子の震えがこっちまで伝わってくる。
「しっ。黙って。声出すなって、言ったよあの子。ひとまずあの子にまかせよう。今はとにかく――」
あたしはリリアを黙らせて。
強く、その子の肩を抱き寄せた。あたしも怖い。正直言って。
空中に静止し、目を閉じたシーマの体が。
いま、かすかに白く光りはじめた。
白い光が、薄暗い洞窟内部にさざ波のように広がって。水の中にも、静かに深くしみてゆく。
そしてそのシーマが目をひらく。色素の薄い青の瞳が、どこか遠くに視点を定めた。
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