フォーの聖所

ikaru_sakae

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 RPG「ロード・オブ・ソウルズ」の運営会社の名前は、フォー・ゲーミング・インスティテュート。そのトップは、若干14歳の天才プログラマー、香港特別区の市民籍を持つ、ひとりの少女だった。ところが今から二年前に―― 彼女は失踪。その消息は、今でもわかっていない。少女の生死は不明。ただ、運営会社は、しっかりと彼女の意志をつぎ、今でも、そしてこれからも。「ロード・オブ・ソウルズ」のサービスを、一時たりとも止めるつもりはない。止めるつもりはありませんと。数ヶ国語で、強い声明を出していた。過去のニュースのアーカイブの中から、わたしはそのビデオを見つけ、何度もひたすら、繰り返し再生し、その声明を字幕で読んだ。『我々は、「ロード・オブ・ソウルズ」のサービスを、一時たりとも止めるつもりはない。止めるつもりはありません。たとえ我々がこの先、どのような困難な未来に、直面したとしても――』
 
 
 世界は変わり始めているのだろうか?
 昨日まで正しかったもの。昨日までは真実だったもの。
 それが今日、どれだけ正しく、どこまで真実なのだろう。わたしには、よくわからない。世界のどこもかしこもが、わたしの知らぬ間に、大きく変わろうとしている。その響きが、いま、たしかな大きなうねりとなって、今、わたしの目の前で展開しはじめている。そしてわたし自身もまさに今、その大きなうねりの中に飲み込まれ始めている――
 わたしはここで、何をすべき? 何がわたしの、役割だろう? ここにまりあがいたのなら、彼女はわたしに、なんと言う? 何を、わたしに、して欲しい? あるいはしろと。言うのだろうか? わたしの役割。わたしの使命。わたしの――

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