フォーの聖所

ikaru_sakae

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―――うん。おねえちゃんと、ふたりで。冬の部屋で。ずっと、二人で、座ってるの。日が暮れてきて、部屋はどんどん暗くなる。そしてどんどん寒くなる。でも、暖房ないし。照明もない。暗くなっていく、ゴミでうもれた冬の部屋で、二人でじっと、抱き合ってるの。抱き合ったままで、じっとじっと、座っている。そういう夢。今でもたまに、見たりする。
―――そっか。うん。あれはでも、キツかったものね。うん。
―――おねえちゃん、
―――何?
―――どうしてひとりで、行ってしまったの?
―――行って? 何? あたし、今ここにいるじゃない?
―――でも。本当のリアルでは。もう、おねえちゃんは、いない。
―――ああ。それね。その話。でも、だって、それは今朝、いろいろ、詳しく、話した――
―――でも。わたしは、お姉ちゃんに、行って欲しくなかった
――― ……
―――生きていて、欲しかったよ
――― ……
―――おねえちゃんには、ずっと、そばにいて欲しかった
――― ……
―――家族、だもん。たったひとりの。わたしの、たった、ひとりだけの
――― ……ごめん、カナナ。きっとあたしは弱かったのよ
―――うん。誰でも、弱いことはある。特に、そのことで怒ったりはしてない。だから謝ることはない。ただ――
―――ただ?
―――さびしい、よ。さびしい。ただ、それだけ。
―――カナナ…
―――ねえ、
―――んん?
―――こっちでは、さびしくない? お姉ちゃん?
―――ここで? あたしが?
―――そうだよ。ひとりで、こっちで。お姉ちゃんは――
―――ん。どうだろう。でも―― さびしいとは、たぶん、感じていないと思う。
―――…そう?
―――うん。だって、あたしこっちでは、島守りって言って、いろいろ、島の子たちのために、戦ったりとか。役割があるよ。こっちで生きてる意味がある。誰かに頼りにされてる感じする。大事にされてる感じする。そういうの、あっちの世界ではなかった。リアルでは。全部が使い捨てで、あたしなんて、ゴミと同じの、道具に過ぎない
―――そんなこと、なかったよ
―――そういう世界に、あたしはいたの。だから……
―――おねえちゃん……
―――こっちでは、フォー様っていう、わりとまともなボスがいて。その人が、ここの、ちっちゃな綺麗な島を、すごく大事に考えている。その、まっすぐな、護りたい気持ち、あたしもけっこう好きだから。だから。
――― ……

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