フォーの聖所
page81
わたしはこっそりベッドから起きて、リリアのベッドに、しずかに近づいた。
カーテンから入る、かすかな白い夜の光の中で、リリアの銀色と白の中間色のボリュームある髪が、しっとり光って見えていた。瞳は固く閉ざされて―― その頬は、涙でひどく濡れていた。わたしは自分の手の甲で―― その、彼女の顔の涙をこっそりぬぐった。ぬぐうと、涙はたちまち小さな水泡のエフェクトとなって綺麗に散り消えてなくなった。わたしは同じ手で、彼女の髪にかすかに触れた。たしかな髪の感触がした。リアルだ。ゲームだけど、とてもリアル―― これがもし、本当じゃなかったら―― 本当のことって、いったい何なのだろう。わからない。いろいろ、リアルがわからない。
これはリアル? それとも――
自分のベッドにふたたびもどって、わたしは自分に自問した。
誰もそれには答えてくれない。答えはたぶん、自分の心の、中にしか。
うん。たぶん―― 何が、リアルで、そうでないのかは――
その人の目、その人の心、そしてあとは――
あとは何? 答えはほかに、どこにある…?
そういうまとまりのない、ぜんぜん論理的じゃないわたしの頭で――
ひとおおり、真面目に、めずらしく真剣に考え続けているうちに――
わたしの意識は、どこか遠くに消えていた。
眠り、と。たぶんそれは呼んでも良いものだ。
でもそれはあまりにも無で、何も、何一つなさすぎて――
わたしの意識は、その無の中に、深くうずもれて、消えていった。
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カーテンから入る、かすかな白い夜の光の中で、リリアの銀色と白の中間色のボリュームある髪が、しっとり光って見えていた。瞳は固く閉ざされて―― その頬は、涙でひどく濡れていた。わたしは自分の手の甲で―― その、彼女の顔の涙をこっそりぬぐった。ぬぐうと、涙はたちまち小さな水泡のエフェクトとなって綺麗に散り消えてなくなった。わたしは同じ手で、彼女の髪にかすかに触れた。たしかな髪の感触がした。リアルだ。ゲームだけど、とてもリアル―― これがもし、本当じゃなかったら―― 本当のことって、いったい何なのだろう。わからない。いろいろ、リアルがわからない。
これはリアル? それとも――
自分のベッドにふたたびもどって、わたしは自分に自問した。
誰もそれには答えてくれない。答えはたぶん、自分の心の、中にしか。
うん。たぶん―― 何が、リアルで、そうでないのかは――
その人の目、その人の心、そしてあとは――
あとは何? 答えはほかに、どこにある…?
そういうまとまりのない、ぜんぜん論理的じゃないわたしの頭で――
ひとおおり、真面目に、めずらしく真剣に考え続けているうちに――
わたしの意識は、どこか遠くに消えていた。
眠り、と。たぶんそれは呼んでも良いものだ。
でもそれはあまりにも無で、何も、何一つなさすぎて――
わたしの意識は、その無の中に、深くうずもれて、消えていった。
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