フォーの聖所

ikaru_sakae

page71

「ねえ。ここって、何。どうなってるの、これ?」
 わたしはそこにいる人形のエルナに向かって、思わず少し、強い口調で詰問し、その両肩を、彼女をはげしく強く、揺さぶっていた。
「なんで? どうして? だって、わたしのお姉ちゃんは、お姉ちゃんは―― もう、リアルでは、もう―― だってもう、お姉ちゃんは―― まりあは――」

「もう、死んでしまっている―― だからそこには、もう、いない―― …のですよね?」

 エルナがダイレクトにその言葉を言ったので、私は思わず息をのんだ。とっさに次の言葉が出てこない。
「もちろん、それほど簡単な話題ではないのですが。でも、ごめんなさい。私としては、最初から、そのことはわかっていました」エルナが、少し申し訳なさそうに、さびしそうに微笑した。「こちらの島に、ご身内の方に面会に来たという。それを聞いた時点で。その―― アリーさんのお姉さまと―― それから、リリアさんの弟さんが。どちらもリアルでは、もうすでに、亡くなられているということは。はい。その時点でもう、わかっていましたよ」
「…なんで?」「どうして、わかったんですか…?」
「理由は、えっと。なぜなら、その、この島では――」

「ここでは誰も―― リアルでは、誰ひとりとして生きてはいないからですよ」

 エルナのかわりに、もうひとつの声が答える。
 シーマがそこに立っていた。

「フォーの聖所」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く