フォーの聖所

ikaru_sakae

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「まず、リリアさんの弟さまに関しては、何か、リリアさんがお持ちの照会コードが不完全で、確認にもう少し、時間が必要とのことでした。」
「えっと。不完全、とは、あの、何か不備が、あったのでしょうか…?」
 リリアが少し不安そうに小声できいた。
「わたくしも、あまり詳しくは聞けなかったのですが。何か、照会コードの一部が、最新のものではない、とか。でもいま、フォー様の方で、あらためて、コードの不備の詳細を確認中、とのことでした。もう少し、返答を待ってほしい、と」
「そうですか――」「照会コードのエラー、か。なんかちょっと、残念ね、それは。せっかくわざわざ、来てみたのに――」
「それから、アリーさんのお姉さまに関しては、」
「あ?? そっちは何かわかった? どうどう? どうだった??」
「はい。アリーさんお姉さまは―― たしかに今も、こちらの島に、いらっしゃいます」
「え! マジで??」
「はい。今は少し、距離の離れた場所にいらっしゃいますが―― 明日の午後までには、こちらのウトマに、来ることができそうだ、とのことです。こちらがその、お姉さまからの―― ダイレクトな、伝言、ですね。こちらに、わたしの方で、お預かりしています。いま、そちらに飛ばします」
 エルナが言って、目の前の空間の上、指を何度かスライドさせた。
 リンッ! という金属質の着信音がして、わたしのメッセージ・ダイアログに新着が来た。大急ぎでウィンドウをひらき、その、新着メッセージを読む。

『フォー様から、今、聞いた。あんた、ちゃんと信じて来てくれたんだ。まあでも、ちょっぴりややこしい時期に来ちゃったね。いまわたし、けっこう大事な用事で手がはなせない。でも、それ終わり次第、そっちにすぐ行く。待ってて。  まりあ』

「おねえ、ちゃん…?」
 わたしは思わず、つぶやいた。そのメッセージのニュアンスは―― たしかに、いかにも―― 姉のまりあが、書きそうな感じではある。でも――
 そんなことって、あるのだろうか。もう姉は、リアル世界では死んでいる。
 その死に顔も、実際に見た。冷たい唇に、この指で触れた。そのときの淡く冷たい死の感触は、今でも指先に残っている。

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