フォーの聖所

ikaru_sakae

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「えっと。その、シーマ君たちの家って、ここからまだ、けっこう遠いのかな?」
 わたしは素直に聞いてみた。道の上にちょっぴりかがんで、少しゆるんだブーツの紐を、あらたにキツく締め直す。こういうとこ、すごくリアルだ、このゲーム。
「疲れましたか?」
「いや、特にそういうわけでもないけど。まあでも、なにげに遠いなって。まさかこんな街が大きいとは思わなかったし――」
「すいません。でも家までは、もう少しです。あとちょっとだけ、上ります」
 坂の少し上から、地面から40センチほど浮上した姿勢で、シーマがこちらに言葉を投げた。わたしと視線が合うと、ニコッと目を細めて笑った。その端正な微笑みが、なんだかじわっと心にしみた。この人形の姉弟には―― なにか、わからないけど―― なにかひどく、ひどく美しいものが、なにかある気がして。微笑みかえそうとしたわたしは―― なんだか心が痛くて、なぜだかうまく微笑むことができない。あまりに綺麗すぎるものは―― なぜか私を悲しくさせるのは、なぜなのだろう。

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