フォーの聖所

ikaru_sakae

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「けっこう疑うのね、あなたも?」
「疑うというか―― この島自体も、まだあまり、どういう場所なのかよくわかっていませんし――」
「うーん。でもま、あの人形っ子たちの話の感じでは、特に敵キャラなニュアンスは感じないけどな~。今も、情報照会してくれてるんでしょ? ちょっとぐらい待って、その、あの子たちの家に行っても、特に何かを失うわけじゃない気はするけど? いいんじゃないの?」
「アリーさんが、そう言うのであれば――」
 リリアは生真面目な顔でそう言って、まるで自分自身を納得させるみたいに何度かその場でうなずいた。たぶんわたしみたいにゲーム慣れしていないから、なのかもしれないけど。どことなく、不安そうなニュアンスが彼女の所作から伝わってくる。
 ああでも、そうか。考えてみれば。
 ログアウト不可、とか。そういう不安要素もあるし。島につくなり戦闘で逃げ回るとか、ここに来るまでのバカでかいシーサーペントのうごめく地底湖、とか。あまりこの手のゲーム慣れしてない人間からすると、まあ、あまりに非日常なイベントなわけで。ゲーム初心者のこの子が、ちょっぴりナーバスになるのも、無理はないのかもしれない。

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 シーマとエルナの案内で、工房都市ウトマを歩いた。坂がやたらと多く、道は狭く、どこもかしこも崖に面していて、平地らしい平地はどこにもなかった。谷底の湖にむかってせり出す感じで、白い石造りの小さな家がぎっしりと建っていた。小さいけれど、どの家にもかわいい小さな緑の庭と噴水があって、その庭で人形たちが遊んでいた。そう、たぶん、遊んでいたのだろう。庭の花々の上にふわりと浮いて、お互いに追いかけっこをする人形や、何か、風変りなボール遊びに興ずる子達や―― あとは、なんとなく絵的に奇妙なのだけど、人形なのに、自分たちよりさらにひとまわり小さいぬいぐるみとかを使って、おままごとだか、お人形遊び的なもので遊んでいる人形もいた。

 人形たちの見た目のイメージはシーマやエルナとほとんど同じで、わずかに目鼻の感じとか、髪型とか、ひらひらした優雅な服のデザインや色が少しずつ違ってはいるけど―― もし仮にシーマとエルナがその中にまぎれてしまったら、探し出して、誰が誰かを言い当てるのは難しいかもしれない。

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