フォーの聖所

ikaru_sakae

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 グマ親衛隊 重歩兵
 LV 67   HP 8830

「え!! ちょっと! 冗談じゃないわよ。レベル67とか?? そんなの、戦闘になった時点で終わりじゃない! かるーく一撃くらってもアウトでしょ。。」 
 やれやれ。レベル違いとか、そういう次元じゃない。これでは、一体相手でも勝ち目はゼロだ。しかも4体。絶望的な戦力差。
「あ、見えました!」
 リリアが小さく叫んだ。
「え?」と、わたしは彼女を振りかえる。
「あれはでも―― 人形、でしょうか?」
 リリアはそちら、兵士らが入り乱れる戦闘領域の、どこか一角をターゲットしている。わたしもそちらに視線を向けて――
 なにか、低空を舞っている感じの、その白っぽいモノのひとつを、苦労しながら、ようやくターゲットした。移動速度が速く、ターゲットするのはけっこう難しかった。

  Seema Einlogue
 
 えっと。名前だけ?
 レベル表示とかが、出ない。
 どういうこと? どうも変だ。
 ゲーム内キャラに関しては、それがたとえ非戦闘NPCであっても、レベル表示とHP表示が必ず出るのがこのゲームの仕様。なのにそれが出ない、というのは。いったいどういうわけ? にしても、その、兵士の刃をひらひらと蝶のように軽やかにかわして舞っているあのモノ―― 見た目のシェイプは――
「人形、っぽいね?」
 わたしもリリアと、ほぼ同じ言葉を口にした。
 そうだ。人形、だろう。
 夜の浜辺に、そのモノたちのつるりとした肌の白さとなめらかさが、なんだか目に痛いくらい。『陶器のようななめらかさ』とは、まさにこのことだろう。全部で三体、か。
 そしてそれらはヒト型をしてるのだけど、全体にリアルな人間の子供よりも、さらに二回りくらいサイズが小さい。わたしのキャラも体形的にはけっして大きくないのだけど、そういうレベルの小ささではなく、足先からアタマの先までをまんべんなく40%縮小コピーしたようなビジュアルだ。ひらひらと動きが速いので細部まではわからないけれど―― でも、何かひじの関節やひざの部分の関節の継ぎ目がけっこう目立つ。ヒト型だけど、ヒトじゃない。どこか少し、作り物。まあもちろん、ゲーム内のすべてがもとより作り物、なのだけど。でも、それにしても――

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