フォーの聖所
page19
「わたし一度、ログアウト、しようかと思います。少し、食事とか、リアル世界で準備をして、それから」
「ああ、そうね。それが一番、賢いかもね。言われてみたら、わたしもちょっぴり、トイレ行きたくなってきちゃったわ」
「では、夜中の二時に。またここで、お会いしましょう」
その子は言って、自分の視線の前の空間で。腕を何か、左から右へと流れるように動かす動作をし―― こっちからは視覚的に見えないけれど、たぶん、ユーティリティのウィンドウを開いているんだろうと推定する。
「では、アリーさん。また後ほど、お目にかかりましょうね」
その子がそう言って、こちらを向いて、ニコリと上品に微笑んだ。ゲーム内のキャラだとわかっていても、そんな美形の女の子に、つぶらな金の瞳で見つめられてそんな言葉を言われてしまうと、なにか、自分も女だけど、キュンと、心が痛むレベルで見とれてしまった。海風のエフェクトが、その子の髪を右から左に綺麗に波立たせている。そのあとコインが床に散らばるみたいな効果音と、金色の光のエフェクトがはじけて、
その子の姿は、かき消すようにそこから消えた。
ログアウト、か。
わたしはひとり、城塞都市ディエト・マギトの港に残される。
カモメの声と、ちょっぴり哀愁あふれるストリングズ系のシンフォニーBGMが、この午後の港によく合っている。
あと、一時間と、40分。さてさて、何をして時間をつぶそうか―― まずはあれか。わたしもログアウトして、とりあえずトイレに。うんうん。まずはそれだな。わたしは短時間で決断し、左手で、視界の外からユーティリティーウィンドウを、目の前の空間までドラッグしてオープン。指でメニューを流し、一番下の、「ログアウト」を指でタッチした。
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「ああ、そうね。それが一番、賢いかもね。言われてみたら、わたしもちょっぴり、トイレ行きたくなってきちゃったわ」
「では、夜中の二時に。またここで、お会いしましょう」
その子は言って、自分の視線の前の空間で。腕を何か、左から右へと流れるように動かす動作をし―― こっちからは視覚的に見えないけれど、たぶん、ユーティリティのウィンドウを開いているんだろうと推定する。
「では、アリーさん。また後ほど、お目にかかりましょうね」
その子がそう言って、こちらを向いて、ニコリと上品に微笑んだ。ゲーム内のキャラだとわかっていても、そんな美形の女の子に、つぶらな金の瞳で見つめられてそんな言葉を言われてしまうと、なにか、自分も女だけど、キュンと、心が痛むレベルで見とれてしまった。海風のエフェクトが、その子の髪を右から左に綺麗に波立たせている。そのあとコインが床に散らばるみたいな効果音と、金色の光のエフェクトがはじけて、
その子の姿は、かき消すようにそこから消えた。
ログアウト、か。
わたしはひとり、城塞都市ディエト・マギトの港に残される。
カモメの声と、ちょっぴり哀愁あふれるストリングズ系のシンフォニーBGMが、この午後の港によく合っている。
あと、一時間と、40分。さてさて、何をして時間をつぶそうか―― まずはあれか。わたしもログアウトして、とりあえずトイレに。うんうん。まずはそれだな。わたしは短時間で決断し、左手で、視界の外からユーティリティーウィンドウを、目の前の空間までドラッグしてオープン。指でメニューを流し、一番下の、「ログアウト」を指でタッチした。
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