フォーの聖所

ikaru_sakae

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「ふたりなら、倍額。と、言いたいところが。こっちもまあ、そこまで鬼ではないんで。ちょっぴりまけて、ふたりで8000だ。どうだ、払えるのか?」
「こら、あんた! ぜんぜんそれ、割引率、低すぎでしょ!」
「うるせえな。貧乏人は黙ってろ。おれはそっちの可愛い方のお嬢ちゃんと話をしてるんだ」
「なによそれ! NPCのくせにわたしをブス扱いとはいい度胸だ!」
 わたしはそいつの胸ぐらをつかんだ。リアルだとたぶん勇気ないけど、しょせんはゲームだ。こっちをけっして攻撃できない街人キャラのNPCだからと、ちょっぴりわたしも舐めている。
「おいおい。手癖わるいな、あんた。おれは別に、ブスまでは言ってないだろう。言葉の解釈、ひろげんなよ」
「言ってるのも同じじゃない! だいたいあんたね、NPCのくせに――」

「8000。ええ。それでしたら、何とか大丈夫かと」

「ええ!! そんな持ってんの??」「マジか! 金持ち過ぎだろ!」
 わたしと男が同時にふりかえる。
 ゴールドで8000!
 このゲームやってない人にはピンとこない数字かもしれないけれど、シルバーでさえ、1000単位で集めようとすればかなりのプレイ時間を要求される。ましてそれがゴールドともなれば、たぶん、数か月単位ログインし続けても、普通にやったら厳しいだろう。なんでこの子、そんな金額をいきなり持ってるわけ――?

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