アッフルガルド

ikaru_sakae

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「おい、カナカナ、」
「ん? なに?」
「さっきなんで手を振ってたんだ?」

「え?」

 通りの先で足を止め、
 少女がこちらをふりかえる。何か少しおどろいた様子で。

「おまえさっきなんか、手、振ってただろ。どっか遠くにむかって。あれ、何だったんだ?」
「え~、そんなの振ってたっけ? 見まちがいじゃない?」
「おい、ごまかすなよ。ちゃんと見てたぜ?」
「ん~、そうか~、見られてたか~。。」

 少女がしばし沈黙する。なにかをちょっと決めかねるように。

「ま、でも、とりあえずまだ今は―― 秘密。だね」

「おいこら。笑ってごまかすなよ。あ、こら、逃げるな!」
「ははっ! おそいぞアルウル君」
「おいこら! それ! 信号! あぶないってば!」
「も~、さっさと来なさいってばよ~ あんたってば基本がトロいのよ~」
 少女がどんどんかけていく。それを少年が追いかける。
 どこまでもどこまでも追いかける。そして――

「お待たせ~」

「おお! なになに? ひょっとしてあなたがカトルレナ??」
「ま、そうです。ふふ、ちょっとガッカリした? ゲームほど美人じゃなかったりして」
「え、そんなことないない。十分しっかり美人さんだよ~」
 踊るような足取りで、少女が女性のまわりを回った。それからしっかり手を取った。その手を握ったまま、しばらくじっと放さずに。
「ま、でもそれ、ビジュアルの話で言っちゃうと、こっちのアルウルなんて、ゲームとのギャップがもうこれはね~」
「おい! おまえ、自分をさしおいてそれかよ!」
「え、ってことはやっぱりこっちがアルウル? あはっ。ほんとにけっこうちっさいんだ」
 女性がおかしそうに笑った。サラサラした長い髪が、春風の中で揺れている。
「え、けどけどカトルレナ、」
「ん?」
「そっちって誰? そっちのちっさな――」
 少女がそちらを指さした。
 女性の足もと、半分うしろに隠れるようにして――

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