アッフルガルド
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そして、
そこには古い泉があった。
深い峰々がいただく万年雪、それがとけこむ地下水脈が、水の汚れを研ぎ澄まし――
地下から湧き出すその水は、世界のほかのどんな水よりも清いという。その地を人々はパレムの泉と呼んだ。そして泉の水は、いつの頃からか『命の水』の名で呼ばれるようになる。
心地よい水音をたてて、水はその場所に流れこむ。
高い天窓から降りこむ午後の光。泉の底で光が踊る。
そして今そこに、ひとりの旅人が。
白い布地の旅人服に身を包んだひとりの男。
裸足の足を、泉の水に気持ちよさそうにそのままひたして。
微笑みながら、男が何かをつぶやいた。
そのつぶやきは、そこに響く水音にまじり、命の水に溶けこんで――
そして、
その館は「白の石の舘」と呼ばれている。
羊飼いの丘のふもと、滔々と流れる大河のほとりにそびえるその館。
石組みの壁が春の午後の陽ざしにくっきりと白く輝き、
あたたかな南風が、なめらかな河面にやわらかな波紋を投げかて。
そしてそこに住まうのは、ひとりの貴人。「緑の姫君」の名で呼ばれるその少女。
彼女がもとはどこの生まれで、いつからそこに住むようになったのか――
土地の古老の誰ひとりとして、そのことを知る者はいない。
けれども姫はいつ誰が見ても美しく、いつの日にも可憐で、無垢で、誰にでも優しく――
その姫は深い慈愛に満ち満ちて、土地のすべての者から愛されて――
そして今ひとりの旅人が。
白い布地の旅人服に身を包んだひとりの男。
街道をゆく馬車の席から、河むこうのその館を遠目にながめ、
旅人は静かに、ひとりで笑って――
そしてまた――
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