アッフルガルド

ikaru_sakae

page114

「ふふ、まったくの愚か者ね」

 ヘスキアが、血のまじった唾をひとつ床に吐いた。

「本気で勝てると思ったの? われわれ神の使徒に」

 ザンッ、

 金の光が鋭く瞬く。
 それは光の矢となって、まっすぐヘスキアの胸の中央を貫通――
 
 いや、
 しかし、それが貫く一瞬間際で、

「――そしてこちらも、それに劣らぬ愚か者。なんの芸もない単純な動き。読めないと思った?」
 ヘスキアが唇の端で笑った。
 そして左腕を前にさしだす。握りしめたその拳。
 その拳の中に、今にも押しつぶされそうな金の輝き――

「くっ! まだそんな余力があったのですね―― よくあの閉鎖世界から――」
 
 ヨルドが悔しそうに叫んだ。体をしめつける、赤黒い血にまみれたヘスキアの細い指。その圧迫に最大限の抵抗を示しながら、金色の小妖精が―― 
「まったく。空間閉鎖などとバカげたマネをしてくれた。あそこを出るのにずいぶん余分なリソースを消費した。しかも一名、失った。この底辺レベルのくだらない辺境世界で同志を失うなど、まったく考えてもいなかったけれど――」
「あなたがたの思う通りには―― させない――」
「おまえたち闇の種族にはまったくいつも驚かされる。いささか理解しがたい」ヘスキアが両目を閉じて首を横にふる。「なぜそうまでして、このような堕落した辺境世界に肩入れする? 何が得られると言うの? もうとっくに神も見放した悪徳の場所で?」
「…あなた方とは―― 考え方が――」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品