アッフルガルド

ikaru_sakae

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「さあ、わたくしとともに来なさい。そして共に、見届けましょう」

「見届ける? いったい何を?」

「多くの世界を。滅びゆくここ以外の、まだ今もある多くの美しい時空の数々を。そしてできるなら――」

 悪魔が顔をあげ、どこか遠くを見上げました。
 世界最後の太陽が、今まさに沈もうとしています。
 その最後の光が、悪魔の横顔を赤く綺麗に照らしました。とても綺麗に。

「ともに、戦いましょう。ともに、護りましょう。終わらなくてもよい世界が、終わらなくてすむように」

 悪魔が左手を差し出しました。
 そう、ヨルドさま、
 あなたはあのとき、わたくしに手を差しのべたのです。
 その、差し出されたあなたの左手を、わたくしは弱く、そっと握りました。
 わたくしは握りました。そして光がわたしを包み――
 

 そしてそれこそが――
 それこそが、そのあと何億光時もひたすらにつづいてゆく、
 長い長い、世界を護るための戦いの始まりでした。
 わたくしは戦い、戦い、戦い続け、
 幾多の時空で、戦闘を重ね――
 とても長い戦いでした。とても苦しい戦いでした。
 わたくしは、わたくしは――


 ねえ、ヨルドさま。
 ヨルドさま。
 きこえていますか。
 まだ、わたくしの声が、きこえていますか。届いていますか。
 さいごにひとつ、ひとつだけ――




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