アッフルガルド

ikaru_sakae

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「忌々しい悪魔め。どこまでも我々の仕事の邪魔をするか」

 サクルタスが歯ぎしりする。緑の光の防壁のむこう。形の上では、そいつは今でもアサシンのガントのシェイプをとってる。けど、あれはもう絶対に誰がどう見てもプレイヤーじゃない。全身からほとばしる青白い炎。その眼にやどった底なしの殺意。

「はい。最大限、邪魔をさせて頂きます。あなた方の好きにはさせません」

 冷静そのものでヨルドが答えた。す、すごい。あの小さな小さな体であの本気のバケモノを押し返してる。あたしたちの頭上で、とんでもない力と力が衝突。周囲の空間がねじれて、そこにある空気がブルブルと震えた。足もとの小石もその余波をうけてカタカタ震えてる。あたしの髪も静電気をうけたみたいに逆立つ。なんか皮膚まで、ビリビリチクチク、電気が刺すみたいに。

 衝撃。
 同時に立ちのぼる盛大な土ぼこり。

「みなさま防御を。いま二体目が接地しました!」

「接地って何? 魔法陣、破られたってこと??」
「やばいカナカナ! 一体がそっちに!」
「み、見てるけど! けど、あんなのどうやって防ぐのよ??」

  キインンッ  

 うわっ??
 カトルレナが、まともに剣で受けた! 
 歌姫ヘスキアの――
 いや、
 ちょっと前まではスキアだった青光りするバケモノが、
悪魔みたいな長い長い鋭い爪を(天使なのに!)もうムチャクチャに振り回し、バシバシガシガシ一方的に切りこんでくる。
 カトルレナはそれを、ロングソードでいなしてかわして―― 
「くっ、速い。速すぎる。こんなの絶対まともにやってもムリだ。勝てないよこれ。カナカナは逃げて! はやく!」
 こっちに叫んだカトルレナ。けど、その一瞬が隙になった。
 折れた。カトルレナの剣。 
 根元から真っぷたつ。
 そこを逃さずバケモノの鉤爪が、
 カトルレナの脇腹をえぐる――かと見えたけど。

 だけど何かが防いだ。受けとめた。

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