アッフルガルド

ikaru_sakae

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「まあでも、楽でいいじゃない。逆にバグってめちゃくちゃ強くなってるとかだと、やばいでしょう」
 モンスターアーカイブをうしろからのぞき見しながら、あたしも久しぶりに言葉をしゃべった。そうやって言葉にしてみると、なんかちょっと、ホッとしたというか。ああ、あたしもまだ消えたりしてなくてちゃんと生きてるんだな。っていう、変に素朴な感想が浮かんだ。
「カナカナはさぁ、おまえいっつもそれだなぁ」
「それって何?」
「『まあでも、楽でいいじゃない』。何百回そのセリフきいたか」
「む。そんなにいつも言ってないでしょ」
「楽すること以外、おまえなーんも考えてないだろ?」
「そんなことない。あんたにそんなこと言われる筋合いはないわ」
「うぉ??」
 あたしの蹴りをまともにくらってアルウルがよろめく。そっちは足場のない奈落――
「あ、ごめん!」
 あたしはとっさに手をのばす。
アルウルがそれを何とかつかむ。ひっぱる。踏みとどまる。
「う~、やばかったやばかったー」
「お、おまえな~、場所とか考えて行動しろよ! おれ今死ぬところだったぜ??」
「ごめ~ん! もうやりませ~ん。。」

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 まあでも、そして、ようやくついに―――
 『エレベータ跡』っていう場所まできた。

 かなり大きな広場みたいな場所で、線路が全部で二十本くらいに枝分かれしている。それぞれの線路が、さいごはまっすぐむこうの壁に行き当たり―― そして壁にはでっかいボロボロに錆びた鉄扉が横一列にザザッとならんでる。線路と同じ数の、全部で二十くらいの扉。線路はさいご、そこに引きこまれて終わってる。
 なるほど、これがエレベーター、か。ここってたぶんヒトだけじゃなく、鉱石つんだトロッコごと昇降させる装置なんだろう。でもこれ、『エレベーター跡』っていうだけあって、今はほんとには機能してないっぽい。壊れて扉がとれちゃってる箇所とか、半びらきのままで固まって放置されてるヤツもけっこうある。

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