アッフルガルド

ikaru_sakae

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 誰も何も話さなかった。いつもはつまんない冗談ばっかり言ってるアルウルも―― いつもだったらメンバー全員のアイテムストックとか戦闘の方針とか、ゲームの細かいところまでチェックしたがるカトルレナも―― いつもアルウルにからんでバカアホ言ってるあたしも―― あとついでにルルコルルも――
 気の遠くなるほど長い長い吊り橋みたいな場所をなんとかなんとか渡りきり――
 あたしたちはまた、わりとちゃんとした足場のあるところにたどり着いた。ここから先もあいかわらず、古びた線路の道が続いてる。
 ここにきてもまだ、みんなやっぱり無言だった。
 誰も何も言わない。というか、言えない。
 足取りは重く、ダンジョンの中はさっきよりさらに温度が下がってる。吐く息が白い。足もとから冷気がくる。かなり際どい崖ギリギリを線路が通ってる箇所もあって、そういうところはけっこうわりと緊張しながら通った。線路が分岐して別れてるところでは、カトルレナが攻略マップを出してきて無言で道を確認し――

「見て! なにかいる、あそこ!」
 カトルレナが短く叫んだ。
 ドドドッという重い地響き。なにかでっかい影が通路のむこうからもう全力で突進してきてる。
 あたしは反射的にワンドを高くかまえ、『ファイアブレス』のスペルを詠唱。赤の炎がほとばしる。その押し寄せてくるごっつい何かが、瞬時に炎のベールに包まれた。続けてあたしはもう一発、こんどはさらに上位の魔法を発動を――


「イヴォドゥ・ゴアっていう名前になってるね。たしかこれ『イーガの砦』で出てたサンドゴーレムの、もう2ランクぐらい強いヤツだ」

 カトルレナが戦闘レコードを見ながらひとりごとみたいにしゃべった。
「けど、そんなのここのステージの登場モンスターリストにはぜんぜん入ってない。これもたぶんバグかな。じっさいのイヴォドゥ・ゴアって、さっきのあれよりは、もっとずっと上のレベルのモンスターだったと思うし」
 カトルレナはモンスターアーカイブのページをひらいてまだブツブツ言ってる。
「そう言えば、その前に出てきた目玉のヤツも、イビルアイ・ロードって名まえのわりにはめちゃくちゃよわかったな。」ダガーをブンブン適当に振ってアルウルが言う。「ロードってつくやつは、たいていもうちょっとは手こずるんだけど。ぜんぜんつまんなかったな。素振りの練習にもならねーって言うか」

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