アッフルガルド

ikaru_sakae

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「いいえ。おそらく最初の時点では、彼らは通常の人間のプレイヤーでした」
 ヨルドがほっぺたのネコヒゲをぴくぴくさせた。
「わたくしとダグが最初に厳しく数値をチェックしましたが、特別不審なところは見当たりませんでした。ですので、途中のある時点から、キャラクターの操作権限を横取りする形でサクルタスが介入してきたのでしょう。考えてみればたしかに上手いやり方です。まったく新たに仮想フォルムを構築するより、はるかにリソースが少なくてすみますから―― さ、でも今は足を止めずに移動を続けてください。この場はダグが支えます。その間に皆さんは神殿の入り口へ」

「わ、わかった」
 あたしは素直にうなずいた。
「カトルレナ! 行こう今のうちに!」
「わかった! 走るよアルウル!」
「おう! 何だかわかんねーけど、けっこう頼れる援軍だな。すげえ上位の防御魔法だぞあれ」アルウルは言いながら、さっきよりスピードを上げて砂煙をあげて走りはじめた。
「おい、そっちのルルコルルってヒト! あんたも走れ! 今のうちだ」
「はい。走ります」
「おーいカナカナ! おまえおそいぞ! もっと必死こいて走れ!」
「走ってる~! これでもけっこう必死なんだから~」

 うしろのほうで、何だかすごいスケールの音と光と地響きが絶賛展開中だ。天使と悪魔で、なにかすごい攻防をバシバシやってるっぽい。あんなの巻き込まれたら、普通のプレイヤーのあたしなんか一撃で終わりそう。まあでもとりあえずそっちは今は見ないことにする。あたしはとにかくひたすら前を向いて走りまくって――

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