アッフルガルド

ikaru_sakae

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「とくに問題というほどのこともないのですが――」カラスがクチバシの先で神経質そうに左の翼を掻いた。「いささか数値が綺麗すぎると言いますか。すべてのパラメーターやアルゴリズムが、あまりにも模範的すぎると言えば良いのでしょうか」
「では、引き続きモニターが必要ね。危険の兆候を感じれば、すぐに第四戦闘態勢に」
「はい。その点はぬかりなく」
 
「おい、なんかすげえの来ちまったな?」

 こっちに戻ってきたアルウルが、回復ポーションを使いながら小声で言った。
「やばいぞあいつ。あの旅人。なんだあれ?」
「さっきの二人もやばかったよっ。ありえない速さ。ありえない打撃力」
「おいカナカナ、おまえ、いったいどんな募集したんだよ? なんか妙なバケモノプレイヤーばっかり集めてきやがって」
「し、知らないわよ! だって募集は普通にやったもん!」

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 モアブ砂漠。
 砂漠ってきくと単純にいちめんの砂丘とか砂ばっかりの場所を想像しちゃうけど。
 ここはけっこう岩が多い。けっこうというか、「非常に多い」と「岩ばかりである」の中間ぐらいだ。村を出てからわりとかなり歩いてきた―― でっかい赤い岩山にはさまれた渓谷がクネクネ曲がりながらずっとひたすらに続いてる。谷の底の道には乾いた砂が厚く積もってて、なにげにかなり歩きにくい。けっこう足、疲れる。たまーに出現するでっかい岩サソリやサンドバイパーっていうヘビ型モンスター。そういうのをとにかくサクサクやっつけて、ときどき何とかっていう長い名前の砂虫の群れを蹴散らしながら。 
 
 先頭を行くのはアルウル。こいつが片っ端からひとりでモンスターをムダにぜんぶ倒していく。たまーに敵の数が多いと二番目を歩くカトルレナがちょっとだけ手伝う。でもそれで確実に終わり。三番目を歩いてるルルコルルっていうヒトはまだ一回もロングソードを振ってない。そしてそのさらにうしろのあたしは、もうほんと暇で暇で。
 岩山の上の空は最初は明るかったけど、今はもうだいぶ暗い。かわりに星が、やけに明るく綺麗にまたたき始めた。

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