アッフルガルド

ikaru_sakae

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「なにあれ?? あれって歌姫? ちょっとあれって速すぎない? ぜんぜん動きが見えないんだけど??」
 あたしは叫んだ。いったい何なの? ムチャクチャなスピードだあの歌姫のヒト。あんなのありえない! ときどき視界に残る残像を見るかぎり、なんだかたぶん、なにか爪っぽい武器を両手につけてるような―― 
 え、でもおかしいよ! 言ってたことと違いすぎる! なにが「前面にさえたたなければ大丈夫と思いまーす」だ?? めちゃくちゃ前面で近接戦やってる! さっき見たスキル値的には、ぜんぜんそういうタイプに見えなかったのに。

「ヨルド様、」
 これまでずっと無言で通してきた化けガラスのヨルドが、はじめて声を出した。
「どうしたのダグ?」
 ネコリスのシェイプをしたヨルドがふりかえる。このヒトも今の今まで、なにげにあたしの肩の上で退屈そうにあくびをしながら成りゆきを見てただけ。
「あの女性キャラクタの動きは、たしかに少し奇妙です。ゲーム中の技術的制約を、いくつか無視した不可解な動きがありました」
「つまり不正ということ? ではあれは敵?」
「はい。まだ断定はできませんが、その可能性が」
 
「うおッ??」

 アルウル、姿勢がぐらついた。
 派手な効果音。飛び散る銀色の視覚効果。
 アルウルのHPゲージが一気に黄色ゾーンまで低下した。
 あれはずるい! 
 ヘスキアとの攻防で手いっぱいのアルウルを、ガントが背後から斬撃。
 アルウル不利の二対一の展開だ。しかもガント、なんかさっきと武器が違う。シミターみたいなでっかい曲剣でアルウルを背中を切りまくってる。しかもあれ何? 一撃ごとに飛び散る視覚効果… あれって魔法エフェクト? ただの物理的な剣撃じゃないっぽい。
「なにあれあの剣? あんなの、あのヒト装備に持ってたっけ??」
 隣でカトルレナも、なんだかムズカシイ顏で戦闘を見つめてる。

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